波乱〈二〉
シリアスに入ったと思ったらまたホノボノになっていた・・・なお、もう少し続く模様・・・
8月17日 午前10時 横須賀
とあるマンションの一室で広瀬 勇士は眼を覚ました。おはようというには少し遅い時間だったが腹も減っていたことだし、何か食べようと身をおこそうとした時自分が何故かベットの片側に寄って寝ていることに気付く。もう片側の方に目をやるとそこには布団にくるまり丸くなって寝ている長い黒髪の少女がいた偽魂体のゆうだちである。そんな彼女をため息をはきながら揺さぶりおこそうとする。ちなみに二人ともちゃんと服を着ているのでそこは安心してもらいたい。
「おい、ゆうだち起きろ。お前また俺の布団に入りやがってお前の布団は隣の部屋だろうが」むにゃ~あと5分~みたいな寝言を言いながら起きる気配がまったくないのでそうそうに彼女を起こすのを諦めて台所に行こうとすると台所で人の気配があるのを感じ取る。「あっ、広瀬さんおはようございます。朝食の準備できていますよ」一瞬身構えるが出てきた人物を確認してすぐ警戒を解く。副長の秋山 春奈だった・・いや、ちょっと待て。なんでお前がここにいる?鍵占めていたはずだぞ、みたいな質問をするが、彼女はさも当たり前のように答える。「なんで、って私もゆうだちちゃんの分魂適正者ですよ。なにか問題でもありますか?」
男の部屋になんも躊躇いもなしに入るのは割と大きな問題だと思うぞ、うん・・それに君同期の中で人気がある事を知っているのかな?あぁ、知らないだろうなぁ・・そんなことを考えているのを尻目に彼女は「まぁそれに私と広瀬さんの仲じゃないですか、そうでしょ?お義兄さん、早くゆうだちちゃん起こして朝食をとりましょうよ。」そういいながら彼女はゆうだちを起こしにいった。
「ねぇ、勇士今日はどこにお出かけするの?」箸で魚の身を骨からつまみ取ろうとしているゆうだちが質問する。現在、俺はゆうだちと春奈さんと一緒に四人掛けのテーブルで朝食をとっているところだ、テレビのニュースでは昨日起きた海賊による護衛艦損傷事件についての続報が流れている。
「どこって・・出かけないという選択肢はダメなのか?ゆうだち」ダメ、そうあっさり俺からの質問を切り捨てる彼女、今は沢庵を齧っている。
「そうはいっても、特に考えていないから困るのだが」そもそも昨日も報告書を提出した後、半ば引きずられるように彼女に連れられて本や雑誌を買わされたわけだが・・
「特に予定がなければゆうだちちゃんの新しい私服でも買いに行きませんか?丁度横須賀アンダーグラウンドシティの第5地区に新しいモールが出来たことですし。」と味噌汁を啜りながら提案する春奈さん、完全に荷物持ちという運命が待っているが俺に拒否権はないらしくそのまま決定してしまう。
「仕方ないな、頼むからあまり買い過ぎないでくれよ。」保障はしかねますと答えるふたり、こりゃ明日は筋肉痛だなと思いながら茶碗にのこっていたご飯を口にかきこみ出る準備をし始めた。
同日 午前11時 月付近 突撃艦「若葉」
“こちらCIC、宇宙戦艦ハワイが砲撃を開始目標3つ直撃2つ健在です”
“続いてミサイル攻撃を開始・・、目標全て破壊を確認”
「わかりました。ではこれにて射撃訓練を終了します。全艦、“かぐや”へ帰還しましょうか」
“了解”
現在、私たちは日本の月面基地の食堂で日米の交流の名目の元、宇宙戦艦ハワイのハリソン艦長とアラン副長、他に私秋山 冬華を含めて6人で少し早めの昼食をとっていた。
「ふむ、まさか宇宙で日本食を食べることになるとは思わなかったな、いつか日本へ旅行に行ったときに食べたいとは思ってはいたのだが」緑茶を飲みながらそう話すハリソン艦長
「とはいっても、合成食品による料理ですけどね。本場は一味違いますよハリソン艦長」そう私も答える。
「そうか、ますます貴国に行ったときが楽しみになるな、秋山艦長」と彼も答える。ところで・・、と小声で私に向かって「私の副長と彼は一体何をしているのかね?私にはよくわからないのだが・・」と聞いてくる。あぁ・・と私も彼の疑問に思っている奴らに冷たい視線を浴びせる。その相手とはアラン副長とその向かいに座っている突撃艦「松葉」艦長の緑川 正人二等宙佐である。
「アラン、この突撃艦「緋」の娘はどうだい?まつばより3歳くらい年齢設定は低いけど中々可愛いだろ?」「Oh、確かに小さくて愛くるしいじゃないか、娘の小さい時を思い出すよ」そんな感じでなぜか意気投合している二人どうやら偽魂体の子たちの写真集(宇宙防衛隊編)を見て談笑しているようだこのヘンタイが、「ハリソン艦長はあっち方面に落ちてはいけませんよ。あれは魔の巣窟ですから・・」と答えておく、彼の頭の上に?が浮かんでそうだが仕方ない。そんなことを話しているとなぜか向こうの方が騒がしくなる。どうやら他の人まで集まってきたらしい、まぁそれはいいだろう、また、その集まった奴らの半分がアメリカ兵士ということもまだ耐えられる。だが、なんでそんなに集まって話している内容が突撃艦の娘の中で一番嫁にしたいかなんだ?突撃艦の娘の年齢設定は小さいので10歳からで大きい娘でも17歳までだぞ、お前ら全員本物のヘンタイか?
そんな話をそばで聞いてしまったせいか隣で座っていた偽魂体のわかばとまつばが恥ずかしさのあまり顔を赤くして震えている。他の娘たちも多分同じ感じだろうこれセクハラで訴えられるんじゃないかな?うん・・
「緑川二佐、バカをやるのもその辺にしておいてくださいね。まつばちゃんもはずかしがっていますよ」これ以上放っておくと収集がつかなくなりそうなので一応止めに入る。
「おう、わかった冬華ちゃん、ところで冬華ちゃんだったらどの娘を嫁にしたい?」
なんか色々とバカなことを口走っていた気がするがそんな事は意に介さず、私はそのまま彼の襟首を鷲掴みにして引きずっていく。「ミドリカワサン、以前私のことを名前で呼ぶなと教えておいたはずですがもしかしてお忘れですか?ならばもう一度教育が必要みたいですね。」異様に楽しそうに話す私を見て慌てたのか襟首を掴まれて引きずられている男は「OK、秋山二佐話し合おうじゃないか大丈夫きっとお互い納得できる結果が得られ・・・ぎゃーー」と悲鳴を上げていった。だが、残念なことにここは宇宙である彼の悲鳴は外に響くことはなかった・・。結局、連絡に来た上官に止められるまで彼女のキョウイクは続けられる事になる。




