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僕らの武器は補助教材

会社が倒産し、社員寮になっていたマンションをさっさと追い出された僕。

途方に暮れていたものの、一泊カプセルホテルに泊まっただけで、すぐに格安なアパートを見つけることが出来た。きっと、数年分の運を使い果たした気もしないでもないが、電車で長距離移動しなくては帰れない実家に帰る資金ももったいなく、というか3人の子供がいる兄夫婦や2人の子供を連れて出戻っている妹が同居している家には、例え田舎で敷地が広く部屋も余っているといっても帰る気には絶対になれない。


周囲の平均家賃の半分という格安のアパートは、昭和の感じが漂う、レトロともいえるくらいにボロボロだった。二階にある部屋に入ろうと階段を上れば、ギシギシッと音が響くくらいだ。でも、我侭はいっている場合ではない。

それなりにある貯金をやりくりして、なんとか新しい仕事を見つけないと。

仕事を見つけて給料が入ったら、出て行けばいいんだから!!


一つ、本当に問題なのは引越し荷物の大半、ダンボール3つを占める本たちだった。

床が抜けませんようにと祈りながらの荷解きとなった。

これでも、マンションを追い出される時に多くの本を古本屋で処分したんだ。

でも、見ないような本も「いつかは!」とか「並んでいると、何か良いよね」とか思っていた僕にとっては最早コレクションとなっていた為、まだダンボール3つも残してしまった。


少しずつ、本棚に本をしまっていく。

最初に開けたダンボールにつまっていたのは中学校の時の教科書だった。

これは流石に古本屋で売ることも出来ず、しかし捨てる気にもなれなかった。

く、クイズ番組とかでも使えるし!!

そう自分に言い聞かせてダンボールに詰めたのは記憶に新しい。




そこまでが、僕が覚えていることなんですけど。


真っ暗な空間の中、円座に座った僕を含めた5人の中で僕は答えた。


私はねぇ、布団を取り込もうと思って窓から顔を出したところまでは覚えていますよ?

 そう言ったのは、僕の隣の部屋だったという、優しそうなおばあちゃん。


寝てた。

 これは、一階の部屋に住んでいるという、ヤンチャそうな青年。


私も寝てた。

 化粧ばっちりの、今時大学生なお姉さん。


忘れ物を取りに戻ってきたところだった。

 中堅どころ風のサラリーマンのお兄さん。



「ゴメンね~

 ちょっとしたミスなんだよねぇ?」

暗い空間の中で、何故か輪郭さえもはっきりとして見えるおっさんが軽い謝罪をしながら現れた。

「僕は、君たちの世界の管理している神様ね。

 ちょっと、隣の世界の神とキャッチボールしてたら、ボール取り損ねちゃってさぁ。

 君達のアパートにぶつけっちゃったぁ。」

あはっ

首を傾げてみせるが、おっさんがやっても可愛くない。

「あぁ、人間的に言えば十メートルほど陥没して中にいた被害者全員死亡って感じかな?」

事態を飲み込めず、ただ聞いていることしか出来ない。

「そこでね、お詫びとしてさ~ボール投げた神が管理している世界ってのに、

 移ってもらってさ、あっ新しい身体もちゃんと用意したし、

 今持っている物の中から一つなら持っていっていいことになったし、

 それも神の力でもぉぉっと役に立つ物に進化させてあげれるし」


だから、許して?


まぁ、その後は、ヤンチャ君が神とやらに殴りかかろうとしたり、サラリーマンが声を荒げたりしたが、そこはまぁ置いといて・・・

今持っている物を確認しあうことになった。


「携帯とか、しか・・・」

「俺もだ・・・」

眠っていたという彼らは、寝落ちしてもっていたという携帯だけだった。

「私もね、布団を取り込もうとしていた時だったから・・・」

おばあちゃんが申しわけなさそうにしているが、それもしょうがないことだ。

「慌てていたから、カバンなどはタクシーに置いたまま走っていた。」

サラリーマンもスーツに入れていた携帯とハンカチくらいだという。


「僕はこれです。」

僕が丁度手に持っていたのは、教科書の入っていたダンボールの一番上にあった5冊の本。

「・・・これって、ちょー懐かしいやつっすね。」

「中学生の時のだよね。」

「本棚に入れようとしてたんです。

 捨てられなくて・・・」

ヤンチャ君と女子大生が懐かしそうに見ているのが恥ずかしく、絶対顔が赤くなっているはずだ。


僕が持っていたのは、中学生の授業で使っていた無駄に全ページフルカラーのぶ厚い補助教材。

歴史のタペストリー

国語便覧

技術家庭

理科

合唱全集


「うん、いいんじゃない?

 これをさ、魔道書にしちゃおう。

 使い方は自分達で考えて?そのほうが文句もないだろうし。

 向こうの世界に着いてから、神に話しかければ、要望どおりの効果にしてくれるから」

「携帯じゃあ駄目なの?」

「あっちって、君達でいう冒険モノの魔法とかの世界だから電気ないよ?」


「じゃあ、大人しくお願いを聞いてくれたから、僕からサービスしておくね。

 その本に日本語で名前を書いた人にしか使えないようにしておいたげる。

 それと、寂しくないように皆だけで相談できる秘密の部屋も作っておくよ。

 行きたいって念じれば行けるようにしておくね。

 国とかのバランスもあって、全員別々の大きな国に到着するようになっているから。

 活用してね~」



そうして僕らは、最初から最後まで勝手な感じに進めた神様によって、異世界に落とされた。



さぁ、どうなるんだろうか・・・




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