最初の依頼の相手はあの人で…?
ここは地霊殿キッチン。中では一人の青年…昨日からここに滞在している紫苑が呆然としていた。そんな彼の前には…黒く焦げたベーコン的な何かが君臨していた。
(これくらいできるかと思ったが……………どうしよう)
ずっと一人暮らしだったが彼は料理のスキルなどまったくない。インスタント食品なども勿論のこと軍用の保存食なども備蓄がかなりあったので料理などしなくても生きていけたのだ。
だがここは異世界幻想郷、そんなインスタント食品など外の自分の部屋に置いてきたし棚の中にもお茶の葉っぱやお菓子などは在っても乾燥麺やカップ麺など勿論在るわけがない。
「こ、こうなったら…!」
彼は鍋に水を入れ火にかけたそして……
……
…
「で、こうなったと言うわけね」
「……すまん」
「ま、まぁたまにはいいんじゃないかな。アハハハハ……今日の昼空いてるからあたいが料理を教えてあげるよ」
「お燐……ありがとう…!」
「わぁ!ゆで卵だー!!」
結果その日の朝食は机いっぱいにゆで卵が並ぶ事となった。
他にもパンやサラダなどはあるがメインはあくまでゆで卵、苦笑しているお燐。ジト目を送ってくるさとり。一人キラキラとした目で食べまくっているお空。作成者紫苑は……身長的には一番高いのに一番小さくなっていた。
さとりもここに住むと決まったときから最初の敬語はどこへやら。しっかり普通の言葉で話すようになっていた。
「苦手なものは仕方が無いわよ…そうだシオン。食べながらで良いから聞いて頂戴、話したいことがあるの」
「お、おうわかった……わるいちょっと待ってくれ。お空んな勢いで食うと詰まるぞ?」
「うにゅ?」
口いっぱいにゆで卵を頬張った状態でお空が返事をした。手に持ちながら頬を膨らますその様子はハムスターの食事風景を思い起こさせる。
「うぎゅ!」
「お空!?」
「だぁ!言わんこっちゃねぇ!ほら水!」
「…フフフ、確かにたまにはこういうのも良いかもしれないね」
さとりはなんとなくこの普通の日常のような雰囲気が良いななどと悠長なことを考えていた。
「ングング…し、死ぬかとおもったぁ…」
「ったくお前は…!」
「…それじゃあそろそろ良いかしら?」
事態に収拾がついたのを見計らいさとりが話を始めた。
「シオン、貴方に話したいのは二つ仕事のことと時間のこと……前者より後者のほうが大事かもしれないわね」
「あぁ…確かに時間わかんなくて結構困ったことはあるな」
「それもそうだけどここの時間とかも教えておかないとお風呂とかがかぶったら大変よ?……ここでそれも良いかもと思わない辺りは評価してあげましょう」
紫苑はそれを聞いたとき一緒になったらラッキーと言う思考より先に4人に申し訳ないなという気持ちが先行していた。さとりはそれを読み取り評価したのだろう。普通男でこれだけ女の子に囲まれこういった話が出ればそれを期待してしまうのをさとりは一番よく理解している。
「大体7時くらいが夕食その前にお風呂に入ってしまうことが多いから夕食の後だったら好きに使ってくれて構わないわ…勿論貴女たちも覚えておいてね」
さとりはお空とお燐にも話しかける。
「??なんで?あたしよくお燐と入ってるよ?別にシオンとも入ったって」
「あたいたちは女の子同士だから良いの」
「???」
お空は何でダメなの??とかいっているがさとりはそれをお燐に任せ話を続ける
「それで二つ目仕事に関してなんだけど…ここ地霊殿はこの地底の管理をしているんだけどどうしても手が回しきれないところも出てきてしまうの」
「手の回しきれないところ?」
「私が判子を押したりサインするだけの事ならいいのだけど…たとえば現地まで行って状況を確認したり…とかね。今まではお燐やお空に行っててもらってたんだけどシオンにそれを頼みたいの」
「なるほどな…つまり何でも屋みたいなことをやれば良いって感じか?」
「そんな感じね…そんな物騒なことは無いわよ戦闘行為はないと思うからもう少し軽いものだけど…草むしりとかもあるから」
「あ?そうなのか」
紫苑は前の妖怪みたいに周囲に迷惑かけるのとの戦闘とかそういったものを考えていたがどうやら違ったようだ。
「だからそんなに難しく考えなくてもできると思うわ…安心しなさい料理が必要なのはないし万が一あっても貴方以外に頼むから…信用落としかねないもの」
「お前以外とえぐってくるな…」
「あら?弱点をつくのは普通じゃないかしら?」
「こいつ…!」
なんとなくこいしとさとりが姉妹と言うのが納得できた紫苑だった。もっとも無意識でえぐってくるかわかっていてえぐってくるかの違いはあるが
「「「「ごちそうさまでした」」」」
そうこうしているうちに食事は終わり皆仕事についていく。紫苑も例外ではなく地図と依頼書を手に地霊殿から出た。
「さてと……ホントに普通の仕事だな。なになに……紛失物の捜索って…わざわざ管理の仕事なのか?」
外の世界にも同じように警察が紛失物が調査などもあったと無理やり納得し紫苑は道を進んでいった。大体数十分くらいだろうか?紫苑がはじめてきた時に近い場所にたどり着いた。そこで依頼人と待ち合わせていたが……
「…依頼人ってお前か蠍女」
「あらぁあのときの人間じゃない。たべられにきたのぉ?」
「ちげぇよ。お前が呼んだんだろうが。これだこれ」
紫苑が紙をヒラヒラすると蠍女が首を傾げてからびっくりした顔になって
「え!?あそこの人になったのぉ?」
「その通りだ…まさかそれでお前に会うとは思いもしなかったけどな」
「わたしもよぉ…それじゃあ今度から人間さんがくるんだぁ。今までは妖精さんとか猫の女の子だったけど~」
「その人間さんってのやめろ。紫苑だ紫苑。あんたは?」
「わたし~?わたしはクーよ~よろしくね~」
クーと名乗ったその妖怪は蠍の尻尾をユーラユーラと揺らしている。その尻尾に合わせてものすごく話し方もおっとりとした感じだ。紫苑は流石に襲われたこともあるというのもありかなり警戒していたがそんなの気にもしていない様子でクーは落し物の説明を始めた。
落としたのは小さなペンダント。前に友人の蜘蛛のヤマメと言う子から貰ったものらしい。
「ペンダントね…とりあえず落としたときの行動順路を回るしかねぇだろ…俺と会う前の行動を教えてくれ」
「?どうして~?紫苑とあった後かもしれないよ~?」
「少なくとも俺が戦ったときはペンダントをしてなかったからな…確実にその前だ」
「なるほど~じゃあえぇっと…そうそう、天井の岩場で休憩してた~」
指をさした先には岩がせり出しており軽く動くこと程度ならできるくらいの広さはありそうだ。
「んじゃそこじゃないのか?…って発見じゃねぇか」
「でも探したのよぉあそこも」
「でも他に行ってないなら確定だろうが…しゃあねぇ一緒にもう一回見てみるか。ロープあるか?引っ掛けてくれればあそこまで上ってくぞ」
「そんなことしなくても…こうすればいいのよ~」
そういうとシュルンと紫苑の胴に尻尾を巻きつける。紫苑は勿論最初はあせったが彼女が襲う気はないとの事だったのでそのまま上まで上らせてもらった。上は結構ごつごつとしており食事の後と思われる骨も散乱していた。紫苑はそれに黙祷しようとしゃがみこんだ時その骨の腕にきらりと光る何かを見つけた。それを引っ張り出すとそれは…小さなペンダントだった。
「………ほらよ」
「なーに?……これよ~!これこれ。食べたときに落としちゃったのかしら~?」
「そうなんじゃねぇのか?…ま、もう用事すんだしそろそろ帰らせてもらうぜ」
「ここで餓死させちゃえば…」
「安心しろ降りるのは自力でいける」
「ちぇ~…それじゃあ捕まって頂戴。お礼と言ってなんだけど下ろしてあげるから」
「あぁ……それじゃあ頼んだ」
行きと同じように蠍の尻尾のようなところで巻き取られそのまま壁を降りてく。快適とは言いがたいがかなり楽に降りることができた。
「っと、サンキューなたすかった」
「いいのよ~これくらい。また遊びにいらっしゃいねぇそのときはご飯でも出してあげるから~」
「……人間はごめんだぞ?」
「え?そうなの~?」
「そうなんだよ…じゃあなクーまた困ったことあったらいつでも呼べよ…羽の髪飾りの謝礼だ。できる限り協力してやるさ」
「は~い。じゃあね~紫苑君~」
手の変わりに蠍の尻尾をユラユラと振られながら紫苑は送り出された。既に襲われた人と襲った妖怪と言う関係ではなく友人の一人になっている。それはこの世界の住人のなせる業なのかそれとも偶然なのか。それは謎である。
「最初の依頼…成功っと」
渡されたペンで紙にサインを書く。これを渡してとりあえずの仕事は完了…ま、まだ時間有るし少し探検でもしてみるか。そんな暢気なことを考えながら紫苑は帰路についたのだった。
これは余談だが昼夜と教わりながらやったおかげもありほんの少しはマシになったらしい…ほんの少しだが。ゆで卵祭りはなくなったがなぜお空は悲しそうな顔をしていたのか…それは皆なんとなくだが理解していた。
残りの武装
銃一丁 弾(14/15 15/15) 手榴弾1/1 コンバットナイフ
依頼状況
食事当番 失敗
ペンダント探し 成功
成功状況 成功/依頼数
2/3
早速おくれるっていうね…申し訳ありませんorz
今回もよんでいただきありがとうございました!。