地底の主。そして…?
そこから歩くこと数十分洞窟ばかりだった景色は変わり提灯や家が立ち並ぶ少し昔っぽい風景が見えてきた
「へぇ、こんなところがあったのか」
紫苑は周りを少しきょろきょろと見回してみる。
(ホント俺はどこに来たんだろうな。羽が生えてたり頭に角がある奴ばっかりで一見普通に見える奴もよく見ると違ってるし)
そんな人たちの町を見回していると何かのお祭りがあるのだろうか?所々に垂れ幕やら屋台の準備。それに櫓の元みたいなのが立ってる。
「なぁ、なんか祭りでもあるのか?」
「んー?そうだよ。一月後にあるんだ。楽しみ!あ!シオンも一緒に行く?さとり様やお燐やこいし様もくるかもしれないし!」
横にいるお空に聞いてみる、お空は元気だった。かれこれ数十分歩きながらずっとこんなペースで話を続けている。
「あ?別に良いが…まだここにいられるって決まったわけじゃないだろ?」
「えー!行こうよー!!」
「はぁ…わかったわかった…んじゃいこうな」
「うん約束!」
ニパッと笑顔になる。紫苑もほんの少しだけど笑顔で返した。
「んで?ここからどれくらいかかるんだ?」
「えっと…後少しだけど…疲れた?」
「俺は平気だが…お前こそ大丈夫か?」
「私は平気…あ!お団子!」
お団子?そっちを見ると確かにお団子屋と暖簾がぶら下がってる店がそこにはあった…確かに美味しそうである。
横を見るとキラキラした目で団子屋さんをお空が見ている…紫苑は苦笑し財布の中身を確認する。そこには団子を買う程度の金なら入っている。
「寄ってくか?時間があるならだけどよ」
「いいの!?行こう行こう!」
二人は店に入り席に座ると「あぁやっと外せる」といってお空はブーツや腕の筒を外す下からは普通の手や足が出てきた
「?どうしたの?」
「あぁいや…生えてたわけじゃなかったんだなそれ」
「生えてるわけ無いじゃん!あたしをなんだとおもってるのさー」
「ハハハ、悪い悪い」
「ぶぅ……あ、これも外れるんだよ」
といって胸の目のようなのも外す…ブローチみたいな感じのようだ。
「そうだったのか…」
「これがないと仕事できないから仕事の時にはつけてるんだけど・・・暑いんだよね~」
「わかったからんな風にグデェっともたれてくるのやめろ中々恥ずかしいから」
「??そうなの?」
「ま、まぁそりゃな…」
「そうなんだー……うりゃー!」
「ちょ、わかっててくっつくなー!」
「仲良いんだなお二人さん。なんにする?」
気がついたら寝癖とかではなく文字通り青い角が一本生えたおじさんがそばに立っていた。紫苑は見られたのかと少し赤くなりながらも何があるかを見ていた。
「あたしみたらし!」
「うぅむ…んじゃ俺もそれで」
あいよ!といって頭に角が生えたおじさんは奥に帰っていった…でもこれが面倒ごとの始まりだった。
「で?どうするんだよお二人さん」
そこの親父さんが食事が終わった二人を見ている。なんとなく頬がぴくぴくしているのが見て取れる
「あぁ…その…どうすんだよお空」
あの後二人はおいしい団子を食べた。だがこんな世界だ、紫苑の金は使えずお空は財布を部屋に忘れてきたらしい
「うーん……あ!ごちそうさま!」
「ちげぇよ!!それを言えって意味じゃねぇよ!!いやまぁそれも大事だけどな!!」
困惑しながらも何とかしようと
「あぁ…皿洗いとか……?」
と提案をするが
「そんなに道具はないからいらないよ」
と言われギロリと目が光る…さっきの蠍女のほうが人間ではないが明らかに迫力はこっちのほうが上だ
「とってもおいしかったよ!」
紫苑の横ではお空が笑顔でんなこといっている…
(あぁ、俺もこいつみたいになれたら楽なのによ…)
二人(というか紫苑)があたふたしているとアッハッハッと笑いが聞こえる振り向くとそこには額に立派な一本角が生えた金髪のお姉さんが立っていた。
「しょうがないね、ここはあたしが払っておくよ。二人とも貸しだよ」
「あぁ、ありがとなえぇっと」
「星熊勇儀だよ。下手にさん付けとかはやめておくれよあんまり好きじゃないから」
勇儀は笑顔でそんなことを言った。
「あ、勇儀!こんにちは」
「おお、お空じゃないか。元気そうだね…さっきから気になってるんだけどこの男は?」
「えっと…シオン!外来人?っていうのみたい!」
「へぇ…ここに来るのはめずらしいね…ってことはこれから地霊殿に行くって感じだね?」
「ああ、まぁそんなところだ…どうなるかわかんねぇけどよ…あぁ自己紹介…はいらねぇなお空が言ってくれたし」
こんな町の主などどんな化け物が出てくるかわかったものじゃないといった雰囲気を全身から出しながらハハハと紫苑は苦笑交じりの笑顔を浮かべる。
そんな様子を見てアッハッハッ!と勇儀は豪快に笑って
「安心しなそんな取って食われやしないだろうさ」
と紫苑の肩をバシバシ叩いた。この青年が既に取って食われそうになったことなど彼女は知りもしない
「はぁそうだと良いんだがな…んじゃ俺達そろそろいくよ。ありがとな勇儀。今度なんか礼するよ」
「じゃあね勇儀!お祭り楽しみにしてるねー!」
「任せておきな、とびきりの祭りにしてやるよ」
彼らはそれで別れた…いよいよ地霊殿に足を踏み入れる。ここの主さとり様という人?に会うために。
「ただいまー!…あれ?お燐まだ帰ってきてないのかな…」
「お燐?」
「うん、私の親友なんだ!」
「へぇ、一回あってみたいな」
「きっと仲良く慣れるよ!」
中は赤と黒のタイルの床、天井にはステンドグラス…名前で予想よりかなり西洋風というより普通の豪邸とった感じだ。もっと魔王の城みたいなのを予想してた紫苑は少し面を食らった
「うーん、しょうがないか…シオンさとり様の所いこ。はぐれないようにね」
「お、おう」
そのままお空につれられるまま奥へと進んでいく。そしてひとつのドアの前に着いたときにお空がちょっと待っててねといって中に入っていく…いよいよなのだろうか?。
最悪ここから脱出するためにポーチを確認する…ここに来る前と何も変わっていない。
(手榴弾一発でも増えてれば気が楽だったんだがな)
そんなことを考えて苦笑する。しばらくしてお空が出てきた
「中に入れてだって。あ、あたしはここで待ってるようにって言われたから。じゃあねシオン後でね」
「あぁ……おう、そうだなハハハ…はぁ」
「?」
「なんでもねぇよ」
無理して普通の顔に戻しドアを開く。そして奥に座る小さい少女と目があう……勿論紫苑は予想などできておらず
「あぁ…さとり様ってのはどこだ?」
「私です。貴方の創造してる魔王様みたいなのではないですよ…あぁ大丈夫ですよそんな変なことはしないですから逃げる算段立てなくても。後逃げるなら窓破っても無駄ですよ。鬼に捕まって終わりだと思います、それと…」
「待て待て待て!なんで考えてることわかんだよ」
考えることが全て先読みされ言葉を発する前に会話が成立する。普通では考えられないようなことだった。だが紫苑は別にそれに対して恐怖を感じることは無かった。彼にとってこの世界は既にそういったことも含めありえないことが起こる世界だとそういう認識になっていたからだ。
「外来人っていうのは本当みたいね…はじめましてシオン。私は古明地さとりここの主です。そうこんな幼い女の子がここの主、ご期待に添えなくてごめんなさいね」
フフフとさとりは笑う…ピンクの髪をしたピンクの目をした中学生程度かもう少し幼いくらいの少女。普通に見れば可愛らしい女の子って感じだけど胸元にある黄色い目のような何かが人ではないことを教えている
「あぁえっと…それでここはどこなんです?」
「敬語なんて要らないわよ。どうせ心見えちゃうんだもの意味を成さないから、話しやすいように話して頂戴」
「そりゃ楽でいいな…はぁもうなんかどうでもよくなってきた。んで?何がどうなってこうなってんだ?」
「それじゃあ少しだけ説明しましょうか…」
少しだけ微笑んで目の前の少女はポツポツと語り始めた。
「ま、そんなところよ」
「……頭痛くなってきた」
「フフフ、そりゃそうよね」
そこで語られた話は非常識ってレベルを超えていた。
聞いたのはこの世界のこと。地名とかははぶいたが俺が今いるのは幻想郷という俺のいた世界とは異世界の世界。そこの地底にいるらしい。
この世界では現代でわすれさられたモノ…妖怪や神様といった者達や旧時代の機械があって色々な妖怪が能力といわれるものを持っている、たとえば紫苑の目の前にいるさとりの能力は心を読む程度の能力。つまり青年が考えているこの復習も筒抜けなのである。
「そのとおりよ、頭痛いって言ってた割にはしっかり入ってるわね」
「仕事柄覚えるのはなれてるからな」
「そうそれは助かるわ…それで。貴方はこれからどうするつもりなのかしら?」
「そうだな…適当にここで仕事見つけるさ。流石に飲まず食わずってわけにもいかねぇし…今祭りの事やってんなら男手必要としてる場所あるだろ」
「そう……がんばって頂戴ね」
話が終わり紫苑が後ろを向いて外に出ようとしたときに後ろからさとりに話しかけられた
「貴方変わってるわね、普通私と話すと気味悪がるか怖がるのに貴方はそんな素振りすら見せない…何も感じないの?」
「?」
そのまま振り返り二人の目があう。紫苑のほうをじっと見てくるその目はさっきと変わらないようにも見える…でも違う、悲しみの中で目の前の存在へほんの少しの希望を込めた…そんな目に紫苑は見えてしまった。その目を彼は知っている…なぜ知っているかはわからないが彼にはわかった。
「……そんな目すんじゃねぇよ」
頭をガリガリ掻きながら紫苑がボソッとつぶやいた。完全に無意識で気がつくとグシャグシャと乱暴に紫苑はさとりの頭をなでていた。だがこれで正しいと謎の自信が彼にはあった。
「え?ちょ。ちょっと!?」
「うりゃうりゃ!」
「ちょ、やめなさい怒るわよ!」
「ハハハ!」
怒られる前に手を離す。さとりはもう…と言いながら髪を触っている。
(ずいぶんグシャグシャになったなぁ)
「誰のせいよ!もう…髪がグシャグシャじゃない」
「変な顔するからだ!……大丈夫だから」
「え?」
「俺はお前を怖くも思ってねぇし気味悪くも思ってねぇ…俺から見りゃ別になんか変な目ぶら下げた普通の女の子だ」
紫苑はたしかにさっきまではさとりもお空も勇儀も異形の怪物だと思ってた、それは否定はできない。だけどここでは妖怪は普通にいる存在。それなら皆普通の女の子だ
少しだけ腰を落として視線を合わせる
「だからよ、んな心配すんな。俺は別にさとりを拒絶したりしねぇよ。心読めるお前ならこれが嘘か本心かわかるだろ?」
といってニッと笑いかける。さとりは貴方も結構大馬鹿だったみたいねとか言いながらもさっきまでより自然な笑顔で笑っていた。
「んじゃ俺はそろそろ行くぜ。仕事速いところ見つけないとやばいからよ」
「待ちなさいシオン…貴方…結構色々とできるみたいね」
「?」
「知っての通りここはあんまり人手が無くて回しきれないところも多くあるのよ…手伝ってくれないかしら?部屋と簡単な寝巻き、それに食事くらいなら用意するわよ?」
「…へぇ、良い話じゃないか。乗ったぜその話」
「そう、じゃあ交渉成立ね。しっかり働いて頂戴ね傭兵さん」
「やっぱ知ってたか…わかったわかった。任務はしっかりと全うしますよ」
「フフフ、頼りにしてるわ。部屋はあいてるところ勝手に使って頂戴、お空がが案内してくれるはずだから。仕事とかは追って連絡するわね」
「おう、頼むぜさとり様」
冗談交じりにそんなことを言って今度こそ後ろを向いてドアを開く。
色々あったけどこれからここで生活していくことになった。まさか撃ち殺されたかと思ったら地底で働くことになるとはなぁ。ホント人生ってどうなるかわかんねぇ。そんなことを考え少し苦笑にも似た笑いをしてそのまま外に出て行った。
残りの武装
銃一丁 弾(14/15 15/15) 手榴弾1/1 コンバットナイフ
今回はありがとうございました!。ということで紫苑は無事?地霊殿に居候することになりました。今後もよろしくお願いします