怪我の中の強行軍
「シオン君!なんでこんな無茶したんだい!!」
あたしの前にはシオン君が倒れている、他の誰でもなくあたしの道具のせいで。こんなことになるなんて思わなかった。
「早く起きておくれよ。頼むから…」
落ちたときの怪我であちこち怪我し血が出ている。どうしようどうしよう…
「…!」
あたしは何かを感じ周囲を見る…ここは妖怪の山そんなところで怪我をした人間がいたらこうなることはわかっていた
「グルルルル」
周囲にはたくさんの妖怪、シオン君を食べようと群がっていた。逃げようと思えば簡単だ。もう飛べないわけじゃない。だけどまだ本調子じゃない今シオン君を連れて行くのは無理そうだ。そして一人じゃそのままシオン君は妖怪たちの餌に…。
あたしはスペルカードを取り出して妖怪たちの前に立ちふさがった。
「…河童だからって舐めるなよー!!」
あたしは周囲の妖怪に弾幕を放った。一部を倒して…他の妖怪がこっちに向かってきた。
それからどれだけ戦っただろう?気がつくとあたしも怪我だらけになっていた。動けないまま守りながら戦ってたらこうなるよね
だけど、あたしが横を見るとまだシオン君が倒れていた。自分で言うのもなんだけど守れている…でもこのままじゃ
「クワァァア!!!」
首が二つある大型の妖怪が迫ってくる。もう弾幕も間に合わない。あの足で踏まれてシオン君は終わってしまう。せめて盾になろうと前に出たとき背中から声がした。
「動くなよにとり」
あたしが振り返るより早く。背中からダァン!という爆発音と同時に風を切る何かがあたしの真横を通り抜けその鳥に命中した。
その鳥は…急所に穴を開けて倒れこんだ。
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「わり、待たせたな…ってカッコつけたけどこりゃかなりきついな」
紫苑は苦笑したのち顔をしかめる。右手にガンを握っているが左手はダラリとしたままだ
「し、紫苑君!?無事だったのかい!?…よかったぁ」
にとりは起き上がったのを見るとへなへなと座り込んでしまった。
「っておいおい。今休憩されたら中々やばいんだが…左手も折れてるみたいだしよ。利き腕じゃないのがせめてもの救いだな」
「あれ?左効きじゃなかったの?短刀が左手で抜く位置にあるからそうなんだと思ってたけど」
「空いてるほうは相手投げたり細かい動作いるだろ?だからナイフはあえて利き腕じゃないほうで持ってんだよ」
「あぁなるほどね…」
「で、そろそろ移動…しないか?流石にちょっときついぞ」
紫苑とて超人というわけではない。今も抑えてはいるものの体は怪我だらけで正直生きているのも不思議なダメージを受けるはずだったのだ。
「あ、ごめん。えっと…どうすれば…」
「とりあえず…この妖怪だらけの場所から安全な場所に移りたいんだが…どこが近い…?」
「え、えっとここからだと…天狗の里は入れてもらえるか怪しいから…守矢神社なのかな…でもまだ少し登らないと…」
「幸い血は…あんま出てないしな。そうそう早くくたばりはしねぇよ…」
立ち上がると紫苑が少し顔をしかめる。やはりと言うべきか肋骨も折れているようだ
「ってまったまった!もうあたしが飛べるから連れて行くよ!というかそんな状態で上ったら死んでしまうよ!」
「でもどうするん…だ?このままじゃまた来るまで待つしかないだろ」
「と、飛べるよ!結構時間経ってるんだから治ってる…はず」
「……下手に魔力とか流れ込むと爆弾が爆発するかもしれねぇぞ?」
「ひゅい!?」
冗談っぽく紫苑がニヤッとした笑顔を浮かべたがやはり痛みがありその瞬間顔をしかめる。
「ま、てことだ…治るまでは歩いてあがろうぜ」
「うぅ、ホントごめんよぉ」
「なに謝ってんだよ。にとりのおかげで今こうして生きてんだしよ。その代わり、ガンやあの腕輪の修正任せて良いか?ガンの整備なんてお前くらいしか出来なさそうだし」
「勿論!まかせてくれよ!」
やっとにとりが前の様子を取り戻したところで少しずつ足を進めた。
紫苑はその最中傷が広がると言う恐れもあるというのにかなりしゃべっていた。理由としてはにとりを安心させるためと言うのもあるがもうひとつの理由として黙ることで意識を失いかねないと言う危惧があったのだ。表向きには言ってはいないが多くの戦場を経験している紫苑には自分が重症なのも自覚がある。だからこその行動なのだろう。真実外傷はそこまで無いが衝撃などで内面はかなりのダメージを負っている。
「シオン君、どうしたんだい?なんかさっきより汗がすごいけど…大丈夫?」
「…ああ、大丈夫だ……それよりその守矢神社ってのはどこにあるんだ?」
「もうすぐ見えるはずなんだけど…」
「そう…か」
「ホントに大丈夫なのかい?」
にとりはかなりオロオロとした様子で紫苑を気遣う。紫苑は安心させるためそれに笑顔で大丈夫だ。とそう答える
(つっても…もう視界霞みはじめてるしそうながくはもたねぇよな…こんな怪我初めて……?初めてだよな…?)
紫苑は妙な違和感を感じた。こんな風に衝撃で内部にかなりのダメージを負っているのは初めてのはずなのだが…なにかが引っかかっている
「……」
「?シオン君?」
その違和感を覚えたまま。再び紫苑は倒れこんだ。
「ちょ、ちょっと紫苑くん!?」
そのまま彼が見たのは…にとりの顔でも地底の面々の顔でもなかった
彼が見たのは…黒い髪をした制服姿の。中学生程度の少女の姿だった。
(霞…お姉さん?)
自分でもわからない誰かの名前を思いその景色すらも真っ黒に染まっていった。
「く、苦しい…」
「制服なんてそんなものだよ。うん!似合う似合う!!」
姉さんがいつも着てるけど制服ってこんなきついものなのか。姉さんなんでこんなの着ていられるんだ。
俺はこの年中学生に上がっていた。姉さんは社会人…では無く高校生最後の一年を送っていた。あったばかりのときは10年くらい離れてると思ってたんだが…そこまでじゃ無かったんだな。
「あの時はあんなちっちゃかった○○君が今では中学生だもんねー。お母さんうれしいよ、うん」
「何でお母さんなんだよ!?どっちかっていうとお姉さんだろ!!」
「ハッハッハ!」
「まったく…………ありがとな」
姉さんが少しキョトンとした顔でこっちを見てきていた。そりゃそうだ俺も色々あったけど…効してお礼を言うなんて初めてなんだからよ。俺は自分でもわかるくらい顔が熱くなってるのを感じた。
「その…あのときに声かけてくれて…勉強とか楽しいこととか色々教えてくれて…俺を怖がらずにダメなことはダメって教えてくれて…ホントにありがとな。…霞姉さん」
俺は初めて名前で呼んだ。いつもは姉さんや人前で区別しなきゃいけないときも井原姉さん…つまり苗字で呼んでた。だけど俺はちゃんと名前で呼びたかった。やっと追いつけたんだから。霞姉さんはそれを聞いた後ニコッと笑って
「驚いたじゃんもー!かわいい奴だなお前ー!!」
「だぁ!!頭撫でんな!俺だってもう中学生なんだぞ!!」
「私から見たらいつまでも小さいままなんだよー」
前からそうだ。この人はなぜか人の頭をすぐに撫でる癖がある。どこの漫画の王子様か!って思うぜ
悲しい顔してるときや今みたいに何かのスイッチが入ったとき。それに嬉しかったりしたときにお礼みたいに撫でたりなどなど…ホントに癖になっている。そしていつもどおり俺がいつまでも子ども扱いするな!って言って霞姉さんが笑いながら続ける…そんないつもの光景。
だけど…わからない。このノイズみたいな靄はなんだ?それにこの何かが殴られてるようなこの音…すごく嫌で…からだを動かそうとして動けないことに気がついた。全身が痛くて苦しくて全く力が入らない。視界がノイズに包まれてそして何かが殴ぐられている様な音がやみノイズがなくなった。そこで見たのは…
全身を殴られてほぼ瀕死の……霞姉さんの姿だった。
「………っ!?」
紫苑はバッと起き上がった。全身にびっしょりと汗をかいておりとても嫌な夢を見ていた事が見てわかる
(…今の妙な夢は?…)
そこは見たことも無い部屋だった。
畳に木…和風の家で前に行った紫の家と近いが何かが違う。
紫苑は起き上がり横の部屋へ向かった。紫苑の体は包帯などが巻かれているがそれ以外は健康そのものだった
そして横の部屋への襖を開けるとそこには
「おお!シオンやっとおきたー!!」
こいしがいた
残りの武装
銃一丁 弾(13/15 15/15) 手榴弾1/1 コンバットナイフ
依頼状況
にとりの実験協力(まだ不明)
成功状況 成功/依頼数
19(20?)/21




