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傭兵幻想記  作者: アロン
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空のたび。そして……

外にきっぱり出された後紫苑は機械の簡単な説明を受けていた。操作自体は本当に単純なものであった為すぐに頭に入ったがやはり不安はぬぐい取れるものではなかった


「操作方法はわかったね紫苑君!」

「ああ…つまりこの腕輪を両手につけたままフライングシス……テム起動って言えばいいんだな?」

「そうそう!後は勝手に空を飛んでいるうちに覚えるだろうさ!」

「簡単に言ってくれるな…にとりは成功したのか?」

「………よーし!試してみよう!」

「今の間はなんだ!その引きつった笑みはなんだ!!」


にとりはそれ以上答えることはなく準備に入った。飛行の試験をするため一応併走して飛行するらしい


「…ったく。なんかおかしな事あったら依頼料金倍額取ってやるからな」

「ハッハッハッ!大丈夫だよ!……たぶん!」

「たぶんいうな!!」

「まぁ大丈夫さ。あ、一応ナイフの類は家に置いていってね。静電気とはいえ一応電気だから金属は極力持っていかないほうがいいし」

「ああ……はぁんじゃ行くぞ…フライングシステム起動」


ナイフを渡し、紫苑がそう宣言するとブブブブブブという羽虫が飛ぶときのような音がして紫苑の体が宙に浮き…


「おお!浮いたぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?!?!」


ものすごい速度で遥か上空へと飛び出していった


「ああ、かなり早いから気をつけるんだよー!!って既に遅かったか」


にとりはそのまま追いかけ空へと飛び立っていった





一方紫苑はものすごい速度で上昇していた。飛べばわかると言われたもののそんなすぐにわかるわけもなく。ただ上昇していくだけだ


「っ!…クソどこがわかるだ……止まれっての!」


止まれと思ったら腕輪がピピピ!となりそのまま止まることができた


「……?(とまった?…まさかとは思うが…)」


紫苑はそのまま前に少し進もうとしたらスゥッと進めた


「お。…おお」


紫苑が思い出していたのは人間の構造。人間は脳から電気を送りそれで指示を出している。右手を前に動かした場合は右手を前にと脳が電気を送っている。この機械はそれと同じように静電気の要領で浮かせ後はこの脳から出る電気を感じその性質を変える…と解釈した


「つまり思ったとおりに飛べんのかこれ」

「そうそう。いやぁ無事でよかったよ成層圏まで飛ばれたら流石にどうしょうも無いからね。ハッハッハッ!」

「お前って奴は…!」

「ごめんごめん。まぁ何とも無かったから良かったじゃないか」

「…まぁ空飛ぶなんて一回やってみたかったことだしチャラにしてやるよ」

「おお、優しいね。それにしても頭とか痛くないのかい?普通こんなに一気にあがったら頭痛くなったり耳痛くなりそうなものだけど」

「飛行機で慣れてるよ。戦闘機とかも乗ったことあるしな」

「ホントに!?っととと。それは後にしよう、今はそれよりもそれの試験をしないと。それじゃあ軽くあちこちを飛行でもしてみようか」

「ああ、なんとなく覚えたしな」


そういうとにとりはびっくりしたような顔をした。


「ひゅい!?もう覚えたの!?」

「?ああ…おかしなことか?」

「普通始めて空飛んだ人はそんな簡単になれないよ…それじゃあ軽く散歩でもしてみようか」

「あんま早く行き過ぎんなよ。俺もまだしっかりなれてるわけじゃねぇんだからな」

「あっはっは。わかってるわかってる」


しばらくはゆっくり飛びながらなんでもないような話を続けていた。なんでもないというより主ににとりの質問攻めだったが。


「いやー!やっぱり外の世界は進むのが早いんだね。前に聞いた話よりかなり色々増えてるよ」

「前?」

「あぁ、シオン君以外にも外来人は何人もいるからね。その人たちからも外の話を聞いたけどシオン君の世界の技術はその人たちから聞いた話からもかなり進んでるんだよ」

「そういうことか。ってそんな早いつもりは無かったんだがな…ってどうしたんだよ?」


にとりは興味津々といった感じで紫苑の腰と言うより銃を凝視していた


「…みたいのか?」


黙ってブンブンと首を縦に振っているにとり。紫苑は苦笑しながらホルスターから引き抜き空に向けて銃身を向け引き金を引く。ダーン!という破裂音が周囲に鳴り響く


「ひゅい!?……す、すっげぇ!!何々それ!前見たのと全然違うよ!!」

「ん?前に見た事あるのか?」

「うん。前に外来人の人が持ってたのと形は近いけど…音とか全然違うよ」


にとりが言うのもその通りで実際見た目は旧時代。と言っても紫苑から見ればなので実際は現代のものに近いが中身や構造。銃弾に至るまでは紫苑の時代のもので威力も勿論のこと連射速度や精度などもかなり高くなっており、また海辺は勿論。水中や砂の中でも不良が起こらずに使用することができる。性能だけ見れば文字通り近未来兵器といえるものだろう。


「ってことだから気をつけないと怪我じゃすまねぇぞ。まぁそれは知ってるよな」

「そりゃ勿論さ!……ね、ねぇ!しばらく貸してくれない!?」

「悪いがそれはダメだ。一応商売道具だから勘弁してくれ」

「えぇ…酷いやシオン君。折角空を飛ばせてあげたのに」

「実験でだろうが!……まぁ戻ってから軽く見る程度ならいいぞ。お前ならバラしても治せるだろうしそれで弾とか作れるようならこっちとしても大助かりだしよ」

「ホント!?やっぱり持つべきものは友人だよ!!」

「だぁ!!くっ付くな!まだバランスもとれねぇんだぞこっちは!」


それほどうれしかったのかまとわり付いてきたにとりを離そうとしている時に突然腕輪からビー!ビー!と警告音が鳴り響いた。二人が腕輪の表示を見ると


「…ノーエネルギー…?…!?にとり!離れろ!」

「う、うん…あ…」

「にとり??」


バチンと嫌な音がしたかとおもうとにとりの体がグタッとなる。じゃれているときは感じなかった重さは飛行ができていないことを意味していた。


「うぅ、漏電なんてきいてないよぉ」

「飛べるか?」

「…ごめん、無理っぽい」


そして音が鳴り止み二人の体はそのまま落下を始める。


「あわわ、どうしよう…このままじゃ」

「くそ…」


下をみる。たしかにかなり高い。普通ならば死は免れない。だが下は運良く木々が生い茂っている。昔ものすごい高度から落ちたが木がクッションになり生存した例があったらしい。そんなことを思い出していた。


「…かけるっきゃねぇよな…にとり!しっかり捕まってろ!!」


にとりを抱え込むようにしそのまま落下。木を切り裂きながら二人とも落下していく。ドン!という音がし…紫苑の意識は闇に飲まれていった。彼がその間際見たのはにとりが自分を心配している姿だった。

(……無事みたいだな、良かった)

それを最後に紫苑の意識は闇の中に沈んでいった。

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