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傭兵幻想記  作者: アロン
11/27

祭りの夜

外からは祭囃子と人々の声が聞こえる。紫苑がちらりと外を見ると見たことが無い妖怪が何人もいた。おそらく地上の妖怪が祭りの噂を聞きつけ遊びに来たといった所だろう

(外の妖怪は地底への侵入ってダメなんじゃなかったか?)

そんな紫苑は先に地霊殿の入り口で浴衣を着て待ち人を待っていた


「…遅いな4人とも」


傭兵であり鍛え上げられた体や少し怖くも見える顔に黒主体の浴衣は奇妙に似合う。落ち着いた雰囲気と合いあまり怖いといった感じは消え大きいといった感じを相手に与える。


「うぅ…苦しい…」

「しょうがないでしょ。浴衣なんてそんなものだって」

「なんでお燐平気そうなの…」

「あ、あたいは…慣れてるから?」

「…お燐見栄張らなくていいのよ?」

「さとり様ー!?」

「アハハ~。そうそう結構苦労してたじゃん」

「こいし様まで…もう」

「…やっと来たか」


紫苑はやっと来た集団に目を見やる。さとりはピンクに青い模様の入った浴衣をお燐は緑に金魚が描かれた浴衣を着ている。お空は青に赤という外と変わらない普通の浴衣を着ている。だがそれは


「良かったじゃない。似合ってるって」

「…感謝するべきなのかしないべきなのか迷ったぞ今」

「フフフ、私の前でそんなことを思ったらダメよ?」


とても似合っていた。だが気恥ずかしく堂々といえなかったがさとりがそれをものの見事にいってくれた。紫苑は複雑な顔をしていたがさとりは悪戯っぽく笑っていた


「えへへー。褒められた」

「っまぁ言われて悪い気はしないわね」

「ったく…そういや外の妖怪も来るんだなはじめて知ったぞ…てか来ていいのか?あれ」

「本来はダメね。でももう守ってる人もそんなにいないんじゃないかしら?」

「あたしもよく外遊びに行くんだよね」

「あたいは…あんまり行かないな」

「私はよくいくよー」

「ま、まぁ…いいんだけどよ。それより早く行こうぜ。さっきからいい香りがしてくるから腹減ってんだよ」


外からは祭囃子と一緒に良い焼き物のにおい流れてくる。地霊殿を後にし皆は祭りへと出かけていった。




「あまーい!」

「お空って綿飴作るの上手いんだな。そんなでけぇのはじめてみたぞ」

「にゃはは。お空は綿飴好きだから」

「うん!大好き!」

「ハハハ、そうかよ…さとりはさとりで…変な趣味してんなお前」

「あら?いいじゃないかわいいわよ…お面」

「まぁかわいいけどよ…あとさらっと悪戯しかけんなバレてるぞこいし」

「ありゃ。ばれちゃったか」


顔くらい大きな綿飴を頬張るお空。お面を4枚くらいかっているさとりそして紫苑のカキ氷に辛いソースを入れようとしているこいし。苦笑しながらも歩く紫苑をお燐。そんな5人が歩いていると目の前にある店が見えてきた。それは


「射的か…」

「あ、シオン得意分野じゃん!やったら?」

「そうだな…せっかくだしやってみるか」

「「すいません。一回分……ん?」」


紫苑が近寄りやろうとすると金髪の女性が紫色の空間から生えていた。うそではなく文字通り生えていたのだ。


「……もうおどろかねぇぞ。紫色の空間から人が生えてるくらいで驚いてたまるか」

「あら?それはそれは…発言的に外来人…なのかしら?」


その女性はクスクスとわらう。白と紫を基調としたその女性は扇で口元を隠し笑っている。第一印象は生えている人第二印象は胡散臭いであるような人である


「貴方も来ていたんですね。たのしんでますか八雲紫」

「ええ、楽しませてもらってますわ。彼は?」

「紫苑だ。苗字は聞くなよ俺もしらねぇから」

「そう紫苑ね…ここで被ったのも何かの縁。どうかしら、私と勝負してみない?10発でより多くの商品を落とせた方の勝利。負けたらそうね…何か驕るってことで」

「へぇ…おもしろいじゃねぇか」


紫苑もにっと笑う。普通の弾幕ごっこならまだしも銃なら負ける気がしなかった。


「それじゃあ…いきましょうか?」

「ああ、よろしくな紫」


ニコッと笑う。それは仲良さそうに見えたがはっきりと火花が見えたことだろう



「俺は8個。んで紫も8個…引き分けか」

「あらあら語謙遜を。難しいの狙ったじゃない貴方」

「狙うならでかいのをっておもってな。ほらよ。欲しいのあるならいいぞ、こんなに有っても困るしな。」

「ホント!じゃあ…この人形貰う!」

「あ、あたいもいいかい?この玩具面白そうだったんだよね」


お空が選んだのは小さな熊の人形。お燐が選んだのはおそらくエアガンの類だ。一方店の人はというと急いで商品を並べなおしていた。


「ウフフ、良い暇つぶしにはなったわ紫苑。また今度会いましょう」

「っていっても俺は地底だし会う機会は…ふつうに有りそうだな」

「ウフフ、では御機嫌よう」


そのまま紫はまた紫色の空間に消えていった。最初から最後まで上手くつかめない人だった。


「あなたもすごい人に目をつけられたわね…」

「結局誰だったんだ?あの人」

「彼女は八雲紫。ここ幻想郷の結界を管理してる大妖怪よ」

「そんなすごい人だったのか…全然気がつかなかった」

「……??」

「?どうしたんだお燐」

「…さとり様、こいし様、お兄さん。お空どこ行ったかしってる?」


周囲を見回すとさっきまで人形で遊んでいたお空は忽然と姿を消していた。


「………なんでここの住人のあいつが迷子になるんだよ…」

「にゃはは…」

「あの子は…手分けして探しましょうか」

「りょうかーい!こいし様に任せなさい!」


手分けして探すこと数分。中々見つからないまま時間は過ぎていく。


「あいつどこに行ったんだよ…っと!!」

「こんなところで突っ立ってると邪魔だぞ!!…ヒック!」


ぶつかったのはパッと見地上の妖怪で4m近い鱗の生えた大男…といっても完全に出来上がってるといった感じだった。そいつはぶつかってきたのを棚に上げなにやら怒り心頭といった感じだった


「悪い悪い、今急いでんだじゃあな」

「それですむと思ってんのかぁ!!」

「めんどくせぇ…!」


向こうは喧嘩する気満々と行った様子。そして回りも祭りというムードゆえそれを増徴させる。喧嘩だ喧嘩だ!そんな声が響くと続々と見物客がやってくる。


「おらー!!」

「……」


紫苑は真っ直ぐ飛ばしてきた腕をしっかりと掴み


「へ?」

「どいてろ!!」


そのまま背負い投げの要領でぶん投げる。ぐべぇ!!という声を残し大男はその場でぴくぴくしていた


「うおー!あいつ強いな!」

「よーし次は俺が」

「投げられるだけだからやめといたほうが…」

「何言ってやがるまだ勝負はついてねぇぞ!」

「ったく…なんだってんだこりゃよ」


さっき投げた男が起き上がりまわりもどんどんヒートアップしていく。これ全部相手にするのは疲れるぞ。そう思っていたとき人ごみの外からここには似つかわしくない綺麗な声がした。


「あれ?シオン??」


少し離れたところにはお空が立っていた。


「おお、お空。今ちょうど」

「行くぞー!!」

「ってこんな空気じゃ何もできねぇな…逃げるぞお空!」

「え?あ。うん??」

「こらー!逃げんじゃねー!」


騒動をよそにお空の手を引き紫苑はその場を逃げ出した。


「あ、そうだ。シオンと行きたい所があったんだ!」

「今言うことかそれ!?」

「逃げるな軟弱者ー!!」

「こっちこっち!いこ!」

「うおっ!?…だぁ!!もう。わかったよ!」


しばらくは追いかけられたがしばらく走っているうちにその声も聞こえなくなり祭囃子も遠く消え明かりという明かりも無い場所に着いた。

二人がたどり着いたのはただの岩場。何の変哲も無いただの岩場だった。


「ハァハァ…ったくここがなんなんだよ…」

「えっとね。見ててよ…それ!」


お空が手から弾幕を放つとそれは空中で爆発。そして


「うわ…なんだこれ…すっげぇ」

「でしょ?あたしここ大好きなんだ!地上のお星様みたいでしょ!」


その光を吸い取ったのかあちこちの石が煌きまるで星空の中に自分達が浮かんでいるような…そんな錯覚すらも覚えてしまう。お空と紫苑はそのまま近くの石に腰をかける。しばらく二人でその星空を見ていたときお空が上を見上げながら言った。


「ここね。お願い事すると願い事がかなうんだって。あたしも叶ったんだよ」

「へぇ、どんな夢だったんだよ」

「えっと…えへへ。人間のお友達が欲しいって願ったらね。その数日後にシオンが来たんだ」

「へぇ…なら願い事叶うのかもな…そうだな。俺もひとつあやかるか」

「シオンもお願い事あるの?」

「まぁな。お願い事ってよりは夢とかそっちの系統だけどさ……このまま皆一緒にいられるようにって」

「え?…シオン外に帰らないの?」


お空は少しびっくりしたような顔で言っていた。お空はきっと帰ると思っていたのだろう。


「ああ。外に別にこだわりはないからさ」

「え。でも家族とか…」

「いないよ…俺生まれたときに捨てられたみたいでさ。しかも記憶が12歳くらいからあいまいなんだよ…だから自分の正しい年齢もよくわかんねぇんだ」

「あ…ごめん」

「良いっての。覚えてもいないし…それに俺にとっては…ここの皆が家族みたいなもんだと思ってんだ」

「え…ホントに?」

「ああ…迷惑かな?俺にはたぶん生まれて初めて持った感情だと思うんだけどよ」


お空は顔を上げてこっちをみた。その顔はほんの少しだけ泣き顔だった。だから紫苑は軽く頭を撫でながら会話を続ける。


「何泣いてんだよお前は」

「…シオンいつか外に帰っちゃうんじゃないかっておもってたから…良かった…折角できた友達…家族がいなくなっちゃうのは嫌だもん…絶対だよ?ずっとここにいてね?」

「…おう、勿論。よろしくなお空」

「クシュン!」

「「え?」」

「………えっと…邪魔したわねごめんなさい」

「あぁもうさとり様ぁ…」

「お姉ちゃん。折角面白い展開になってたのに~も~」


後ろからは続々と見たことある面子が出てくる。こいしは変な風に誤解しているようだが後ちゃんと理解してくれているようだ


「夫は早いわよ?」

「ちげぇよ!?」

「夫って何?」

「後で教えてあげるから今は黙っててお空」


…約一名確実に理解できるのに面白いからという理由で湾曲させている輩もいるがお燐だけはまともなようだ。


「にゃはは家族か。ま、それもいいね!」

「…中々言ってる側は恥ずかしいんだぞ」

「そりゃそうだろうね。ま、元々あたいやさとり様はそのつもりだったし別に今更だけど」

「あら?お燐も心読めるようになったのかしら?私は言ってないはずだけど」

「さとり様はわかりやすいですから。それにさとり様が許したって言うのを聞いてあたいたちもそうだったなって」

「よく覚えているのね」


お燐とさとりは元々そのつもりだったようであまり驚いてはいない。

こいしはというと


「恥ずかしがるなら言わなきゃいいのにー♪」

「うっせー」


いつもどおり紫苑を弄っていた

遠くからどーんという音が聞こえた。そっちをみると…弾幕で作った花火が打ちあがっていた。祭りが終わりに近づいた証である。


「結局あんま回れなかったか」

「とか言ってる割には満足してるじゃない」

「あ?…まぁな」


紫苑は花火を見つめながらまた来年もこうしてここで見たいと思ったのだった。



残りの武装

銃一丁 弾(14/15 15/15) 手榴弾1/1 コンバットナイフ


依頼状況

なし


成功状況 成功/依頼数

19/20




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