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菌糸

ショートショート習作です。

実体験が元ですw

感想、批評よろしくお願いします。

「こりゃひでえや……」

眼前に広がるおぞましい光景に対してAがそうこぼした。

眼前に広がるおぞましい光景……。

やたらと鮮やかな白いカビらしきものに覆われた一枚の畳だ。

「はぁ……鬱だ」

俺がそう言うと、同意するかのように後ろからBとCのため息が聞こえた。

これが生まれた原因を知るには、二週間前の火曜に遡らなければならない。

俺とA、それからBとCは同じ高校の柔道部に所属している。

その日俺たちは先輩に誘われて柔道場でタバコを吸っていた。

悪いことだと分かっていたが、そこは少し大人ぶりたい高校生。誘われるままに、タバコを手にとっていた。

そして俺が誤って火のついたタバコを畳に落としてしまったのだ。

すぐに消したが畳には確かにコゲ跡が残ってしまった。

タバコを吸っていた事がバレるのはマズイので、校舎裏の林に隠したのだ。

隠したのだが……。

今は運悪く梅雨。雨にうたれ、湿度90パーセント以上の空気に包まれた畳は、カビたちの楽園に変わった。

「まぁ、ぼやいてても仕方ないし早く運んじまおうぜ」

Bがそう言い、俺たちもそれに賛成した。

畳全域に広がったカビを出来るだけ触らないよう角の方を持ち、高校のゴミ集積所に運ぶ。

今日は半年に一度の大型ゴミの収集日で色んな部活が処理に困る大きいゴミを捨てにくる。その中にこいつを紛れこませるのだ。

「カビ気持ち悪すぎ……。 悪い事をした報いかね。 これが」

Cがぼやく。

「まったくだぜ。 俺しばらくは真面目に過ごすわ」

とA。

「こんなもん運ばなけりゃならなくなるならタバコなんか吸いたかないよな」

俺もそう言って、畳を持つ手に力をいれ直した。

その後俺たちは無事、畳をゴミの中に紛れこませて部活に向かった。

これで、一件落着、と一安心。マクラを高くして眠れるな。




数日後、Aが病気で学校を欠席した。

詳しい事はわからない。俺とB、Cで見舞いに行こうかとも考えたが、部活を休むと顧問が怖いので、行かなかった。

その数日後にBが、またその翌日にはCが病気で休んだ。

柔道部内にインフルエンザかなんかが流行ってんのか?

しかし、最近なんだが息がしにくいな……。




「先生! 急患です!」

ナースが医師の部屋に駆け込んできた。

「落ち着いて。 症状は?」

「は、はい。 患者は市内の高校生で、 なんだか急に呼吸困難になって倒れたそうです。 救急隊員が言うには、ノドに白いカビみたいなものがたくさん生えてるって……」


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