自殺サイト
私は、葬儀社に勤めている30代の男である。
先日ネットで「どの死に方が、美しく死ねるか?」というのを見た。
首吊りや、ガス、電気ショックなど、自殺の方法と共に、その亡くなった後の姿の事が書いてあった。
色々な自殺方法の中で一番、死んだ後の姿が美しいのは「電気ショック」だそうだが、確実性で言えば「首吊り」がNo.1だそうだ。
私は仕事柄、色々な自殺体を見ているが、確かに水死体や、飛び降りなどは、酷いもので、これを処理をするのは、懐かしい表現をすれば、正に3K…キツイ、汚い、危険が懐かしい表現…それが死体の場合は「臭い、汚い、危険」である。
・臭い…水死や、飛び降り、飛び込みだけでなく、どの死に方にしても、発見が遅ければ、腐敗は免れない。 季節や、死んだ場所にもよるので、その程度には差があるが、あの臭いは時に尋常ではないものがある。
・汚い…どんな美男・美女でも、汚物にまみれたり、内臓や眼球が飛び出した姿は、決して「綺麗」などと、口が裂けても言えるものではない。
・危険…病院で亡くなった場合(伝染性の病気以外)は、病院のベッドから、ストレッチャーという搬送用の台に、故人を移す時には看護師はもちろん、私たち葬儀屋も基本は素手で移す。 しかし、自殺者は警察へ迎えに行く事が大半であるが、検死の担当者も、私たちも必ず手袋をする。何故なら指紋が着かないようにする為と、変な菌に感染をしないように防止する為である。
何れしろ、何をもって「美しい姿」と表現するのか、私には判りかねる。
確か以前にニュースだったか、なんだったか、遠い記憶なのでハッキリしないが、まだ20代前半の女性が「歳を取って、醜い姿で死ぬよりも、若い今の姿のまま死にたい」と自殺願望をほのめかす場面をテレビで観たが、警察の検死をするあのステンレスの台に、服を切られ裸で横たわっている姿が、どんな死に方をしたら「美しい」などとは決して言えるものではない。
あの冷たそうなステンレスの台に、どんなに形が整ったまま亡くなったとしても、年齢に関係なく、あられもない姿を男女問わず、検死の担当者だけでなく、私たち葬儀社の人間まで含めれば、何十人の人に見られ、私たち葬儀社の人間にすれば、遺族や親族に会わせる為に、おそらく本人は着たくはないような安い浴衣を着せ、はたまた、水死や、飛び降りや、飛び込みの死体なんかは、人間の原形も留めてはいないから、納体袋という袋に適当に入れられる始末だ。
この前などは、水死体を警察から引渡しされる時に、警官がか2~3人で持っても、水で膨れて余計に重くなり、遺族の前で落としていた。
ある意味…物だ。
ところで何故、私が長々とこんな事を書いているかというと、自殺者が嫌いだからだ。
『何故、自殺をするのか?』
理由は人それぞれ様々あると思う。 警視庁によれば、昨年一年間の自殺者数は、約28,000人だそうだ。
数年前には30,000人を大きくオーバーしていたが、近年は少しづつ減りつつある。
しかし、絶対に0(ゼロ)にはならないだろう。
それを時代のせいにするか、または違うものや、事のせいにするかは、人それぞれだが、私は自殺が良い事である、とは口が裂けても言えない。
『死にたい!』と思った事がある人は多いかもしれない。 かく言う私も、そう思った事がある。
しかし、実行はしていない。 勇気がなかったと言えば、それまでだが、それより他に楽しみを見つけてしまった。
とはいえ、今、正に、実行しようと思っている人や、これから人生に於いて、辛い事や、悲しい事などが起き『自殺しよう!』と思う人が居たら、この話から、思い止まり、新たな道へ進んでくれれば嬉しい限りだ。
最初に書いた某サイトによれば、確実に、そして簡単に自殺するには『首吊り』が良いと書いてあった。
そう! 勇気があれば、死ぬのは簡単な事である。
しかし、その勇気を違う方面に向けて見てはどうか? 簡単に死ねるんだから、いつでも良いだろ? 一年でも、一ヶ月でも、一週間でも、せめて一日でも良いから、死ぬのを伸ばして、周り見てくれ。
あなたがいる直ぐ近くにも、あなたの知らない人や物、少し離れたところにも、楽しい人、美しい音楽、面白いゲーム、笑えるマンガ、美味い料理、まだ試した事がない事…どうせ死ぬなら、その勇気があるなら、一歩踏み出して、飛び降りるんじゃなくて、ほんの数分、数秒で良いから、行った事のないところへ行ってみて。
聞いた事ない音楽、聞いてみて。
やった事ないゲーム、やってみて。
読んだ事ないマンガ、読んでみて。
食べた事ない料理も、食べてみようぜ。
人と会うのが 、イヤだったり、家から出るのがイヤな人は、パソコンをネットに繋いで、見てみなよ! ワンクリックで世界中ドコにでも行ける。
凄い事だよ。 どうせ死ぬなら、パソコン1台壊すつもりで、ウイルスだらけのネットサーフィンしちゃいなよ。 凄いものが見られるかもしれないぜ…それってスゲぇチャレンジャー。
そうだよ、まだまだヤれる事いっぱいあるぜ、死んじゃう前に、やってみようよ。
少しで良いだ! ほんの少しだけ、死んだら、やれない事…やってからでも遅くはない。
まずは誰かに話してごらん。
~あとがき~
今までに、自殺された方の葬儀も、担当して来ましたが、自殺する方は若い人達ばかりではありません。
旦那さんの不治の病を気にして、共に飛び降り自殺を図った老夫婦や、うつ病の奥さんが自殺した後、数ヶ月で、自分の首を吊ったご主人、奥さんに逃げられて、自ら腹を刺したご主人等々、まだまだ例を上げればきりがないくらいです。
それでも、自分が死にたいからと、赤の他人を巻き添えにするよりはマシだと勝手に思う事がありますが、その他人を巻き添えにする奴にしても、結局は自ら死を選び、実行している訳です。
まぁ他人を犠牲にする奴は、自らが死ねずに警察の厄介になるケースが多いんですが…。
いずれのケースも、悩みを打ち明けられず、または発散できずに起こる事が多いようです。
ですので、皆さんの周りに、悩んでいる方が居たら、迷惑が皆さんにも及ぶかもしれません。
迷惑を被る前に、是非、悩みを聞いてあげてください。
きっと、お互いに明るい未来が訪れる事でしょう。