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魔王なる病  作者: 森田 亮介
プロローグ
1/4

第1話 初めての魔法詠唱

600年前、魔王は感染病を広めた。

それは死と自由を与える感染病だったと言う。

人々はその感染病を恐怖と憎しみを込めてこう呼んだ。


――『魔感染』


魔感染は瞬く間に世界へと拡大感染した。

恐怖と絶望が世界を覆った。

だがしかし、希望の勇者が現れ、見事、魔王は倒された。

その後、人々の協力によって魔感染は治まったのだった。


それから、600年後の世界。

再び、魔王が現れ、魔感染が世界に猛威を振る。

 魔王よって人間が魔物に変異する感染病が広まった。 


 我々はそれを魔感染と呼んだ。


 魔感染は世界に広がり、人々の心に恐怖を植え付けた。


 人は魔感染に怯え、隣人を監視、密告、差別した。


 もはや、肉親ですら密告の対象だった。


 その事を憂うれいたバジール法国は魔人狩りを断行した。


 多くの兵士が犠牲になったが、その努力は報われ魔感染は治まり、魔王は勇者に倒された。


 


                    ~バジール法国聖典第一章~




 ‥それから600年後の世界。


 べリアフィル大陸の西側には、亜人種を中心に栄えたハルバ亜国ある。


 さらに、そこから、南下したところに、森に囲まれたガサ村があった。


 


 ガサ村は、勇者サンが産まれた村として、一時、観光名所になったが、時代と共に歴史に埋もれ、今では閑古鳥が鳴く村へと戻ってしまった。




 そんな寂れた村で父のツバキ・ヴェトと母のメメの間から、一人の子供が産まれた。


 2人は太陽の様な子供に育って欲しいと願い、名はヨウと名付けた。




 母のメメは魔法の心得があったので、ヨウに魔法使いの適正がある事を願い、子守歌代わりに魔法詠唱に必須の神語じんごを歌にして覚えさせてみた。




 「頑張って覚えてね!ママは魔導士の道‥諦めちゃったけど、ヨウには、私のようになって欲しくないの‥」




 無邪気なヨウはメメの歌にキャキャと喜んだ。


 メメは喜ぶヨウを見て、菩薩の様にニッコリと笑う。




 魔法を使うには、神語を詠唱する必要があるのだが、それだけでは不完全で、魔法の源である、神気を受け取る為の体質『器』が必要だった。


 それを神器じんきというのだが、ヨウに神器があるのが解ったのは6才のときだった。




 深夜、1人部屋で横になりながら、何となく、耳学問で覚えた神語をポツポツと詠唱してみたら、突然、胸が熱くなってきて、手が光り出した。


 


「わ、わ、え?え?嘘?」




 ヨウは、今起きた事を早く伝えたくって、急いで、メメとヴェトの寝室へと駈け込んだ。


 


 寝室から2人の声が聞こえる。


 


 まだ、寝てないようだ。なら、入っても大丈夫だろう!




「ママ、パパ、見て見て!」




 勢いよく扉を開けたら、メメとヴェトがベットの上で裸になっていた。


 それはもう、一瞬だった。一瞬で場が凍り付いた。


 


 三人は無言になってしまった。


 


 何をしているのかは解らなかった。


 ママは犬みたいな恰好してるし、パパはママのお尻を掴んだまま動かない。


 でも、何かマズい所を見てしまった気がした。


 だって、パパとママは僕と目が合ったまま、カチコチになって動かないんだ。


 


 ‥だから、僕はそっと部屋を出た。




 翌朝、パパとママはあれやこれやと言い訳していたが、そんな事はどうでもよかった。




 それより、伝えたい事がある。




「ママ、手が光った!ママから教えてもらった言葉を言ってみたら、手が光ったんだよ!あと、胸が熱くなった!」




「ホント!凄い!胸が熱くなったのは神器があった証拠よ!ヨウは魔法使いの資質があったのよ!ねえヴェト!」




「ああ、そうだな」




「あ~もうよかった」


 


 メメはヒョンヒョン跳ねて喜んだ。


 メメが喜んでいる姿を見て、ヴェトとヨウも嬉しくなった。


 今日の事は、生涯忘れないだろう。


 外を見ると、朝日がいつもより、眩しく見えた。




「ねえ、ヨウ。ママの前でもう一度、やって見せて!」




「うん」




 昨日やってみた通りに詠唱してみせたら、また、胸が熱くなって、手が光った。


 やっぱり、偶然じゃなかった。嬉しい。


 ヨウは得意になってメメを見上げると、メメは嬉しそうにヨウの頭を撫でてくれた。 




 だが、それは間違いだった。


 僕はのちに後悔した。


 


 魔法の勉強はここからが本番だった。


 魔導の道は膨大な学問の積み重ねである。


 一つ一つの魔法の理論と神話を学ぶのは勿論。


 


 火や水などの魔法属性によって神語が違う。


 また、魔法の威力が上がる程、上位の神を詠唱する必要がある。


 それ故、新たな神語を覚える必要が出てくる。


 


 つまり、端的に言うと、魔法とは、あらゆる部署の課長、部長、社長、はたまた、会長に対して丁寧な言葉で持ち上げて気持ち良くなってもらうことで、力を貸してもらう。これが、魔法である。


 


 先程、ヨウが覚えたのは初歩の魔法となる慈愛の神フローリアの治癒魔法だった。


 治癒魔法はどんな場面でも、必須な魔法である。


 冒険仲間から重宝され、町や村に帰れば医者とまではいかないが、それなりに需要があるので食うに困らない程度には稼げる。


 


 それ故、魔法使いは一番最初に治癒魔法を覚えさせられる。


 


 神器があると言う事は、それだけで人生の勝ち組になれる天からのギフトなのだ。


  


 だと言うのに、ヨウの目から段々と光が消えて行く。


 と言うのも、メメの教育は徐々に熱を帯びて苛烈になっていくからだ。


 それは、ヴェトから見ても、様子がおかしいのが解る程だった。


 ヨウが少しでも間違えると、容赦無く叩くようになった。




「何度言ったら解るの!詠唱の言い間違いは、死に直結するの!言い間違えたとき、後ろに魔獣がいたらどうするの?首を食いちぎられて死ぬのよ!さあ、もう、一度!」




あるときは‥。




「もっと速く、よどみなく間違えず詠唱しなさい。宮廷魔導士達は同時に3つの魔法を詠唱したと思われるほど速いの!あなたもそうならなきゃダメよ。あなたは魔法使いの上、宮廷魔導士になるの!」




 魔法使いには階級がある。




下級魔法使い


中級魔法使い


上級魔法使い


地覚級魔導士


鳳凰級魔導士


天明級魔導士


神星級魔導士




 宮廷魔導士は、地覚魔導士から最上級の神星魔導士の間の事を言う。


 宮廷魔導士になると、王宮勤めが許される。 


 魔導を志す者にとってのステータスだ。




 なので、ヨウはメメの期待に応える為に睡眠時間を削って頑張った。


 


 


 ただ、残念な事に、ヨウが頑張る程、メメの期待値が上がり、仕舞には家から出してもらえなくなり、部屋に閉じ込められ、メメとのマンツーマン指導が始まった。


 


 勿論、見るに見かねたヴェトは、メメを説得したが駄目だった。


 もはや、聞く耳を持てなくなっていた。




 「ヨウには才能があるのよ!私にはその才能を伸ばす義務がある。そうでしょう!はっきり言ってヴェト、あなたに魔法の才が無いから解らないの!いいこと?これは、私にしかできない事なのよ。今は、苦しくてもいつか、ヨウだってわかってくれるわ。いつか、ヨウが宮廷魔導士になれば、必ず、理解してくれる。それは、ヨウとって幸せな事なの。だから、邪魔しないで!」




 メメは本気でそう思い込んでいた。


 メメの目前には、ヨウはいない。


 ヨウに自分を重ね、自分の無念を晴らそうと躍起になっている自分がそこにいるだけだった。


 




 それから7年が経った。ヨウは13才になった。


 


 その頃には、メメの熱心な教育のお陰で中級魔法使いの実力まで身に付いた。


 


 だが、もはや、そんな事はどうでもよかった。


 魔法の資質がある事に苦痛を感じる様になっていたヨウに、我慢の限界がきたのだ。


 


 その日、ヨウは立ち上がった。


 メメに反旗を翻し、メメの言う事を聞かず、初めて家を飛び出した。




「ヨウ、何処行くの!戻りなさい!勉強まだ終わってないわよ!」




「うるせえ!俺は母さんの人形じゃない!」




「ヨウ!あなた、親に向かってなんて口きくの!」




 メメは、火の神フレイアの神語を詠唱して、ヨウに魔法を放った。


 それに対して、ヨウは水の神ワータの神語を詠唱して水壁を作った。


 炎は水と相性が悪い。


 炎の玉は水壁を貫通する事なく、消滅してしまった。




「信じらんねえ、自分の子供に魔法使うかよ?」




「あなたが、言う事聞かないからよ!さあ、戻って来なさい。私のいう事を聞きなさい!」




「母さんは中級だろ?俺だって中級だ!なら、もう、母さんから教わる事なんて無いだろ!そんなに宮廷魔導士になりたいなら、自分がなれよ!」




 メメは言葉に詰まってしまった。


 その隙にヨウは、走って逃げてしまった。


 


 その後ろ姿を見て、メメは、顔面蒼白になった。


 まるで、自分の半身がもげるような感覚だった。


 手足はワナワナと震える。


 


「ヨウの人生が狂っちゃう‥そんなの許さない。絶対、許さないから!」


 


 メメの足元で砂埃が舞って虚しく消えた。

ここまで、読んでいただきありがとうございます。

次回作も、是非、閲覧下さい。

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