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2人で夕食作り 【前編】

4月23日。

昨日までと同じように昼休み、部室棟の非常階段へ向かう。階段を上る足取りは、もう昨日のような緊張感はなく、どこか安心感すらあった。

栗山さんがこちらに気付くと僕は軽く手を振った。


昨日と同じように並んで座り、互いの弁当箱を開ける。

だが、今日はお互いに中身が少し違う。僕は小松菜のお浸しに加え、ジャガイモのガレットとトマトのマリネを作ってみた。栗山さんも、鶏の照り焼きに小さな卵焼きを添えている。


「わあ、今日のお弁当も美味しそうですね」

「うん、ちょっと冒険してみた」

「石崎くんの料理って、毎回見た目もとても綺麗です」


僕は少し照れくさくなったが、昨日の褒め言葉を思い出し、自然と笑顔になる。


今日もお互いに少しずつおかずを交換しながら食べ進めると、弁当箱の中は昨日よりも鮮やかで、味も多様になっていた。トマトの酸味と鶏肉の甘辛さが口の中で混ざり合い、なんだか新しい料理を食べているようだ。


「石崎くん、あなたの作る料理、どんどん上手くなってますね」

「いや、まだまだだよ。むしろ栗山さんの方が……」

「ふふ、やっぱり誰かに食べてもらうとなるとお互いに腕が鳴ります」


僕たちは笑いながら、自然に会話と食事を楽しんだ。

この時間は、ただの昼休みではなくなっていた――弁当を通して互いを知り、距離が縮まる小さな特別な時間になっていたのだ。




4月24日。

「石崎くん、ちょっとお願いがあるんです」


昼休み、いつもの非常階段にて栗山さんが切り出した。

「え、何?」

「……あなたの作った出来立ての料理、食べてみたいんです」


僕は少し驚いた。今まで弁当は“隠すもの”だったし、誰かに作った料理を直接見せるなんて想像した事も無かった。

「え、僕の……?」

「はい、だって石崎くんの料理、お弁当でもこんなに美味しいんです。だから、出来立てならもっと凄いんじゃないかって思ったんです!」

栗山さんは僕から目を逸らすと少し照れながら言葉を続けた。

「それに、私の出来たての料理も食べてほしいです……」


その素直なお願いに、僕は自然と笑みを返した。

「じゃあ……今度の週末、作る? 二人で」

「えっ、はい……! 楽しみです」


こうして、僕たちは週末に二人で夕食を作る約束を交わした。



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