②話 サーフェス:Surface
この船は月の裏側に位置する衛星、サーフェスと呼ばれる調査船。
その呼び名は名目上で、戦艦と呼ぶのに相応しい設備が搭載されている。
私はこの船の艦長を務める、ドッグDウォーク。艦長歴は161年になる。
「ヨー!Ⅾウォーク艦長っ、明日はデプス接近日ですね。」
いつもの船の朝、業務開始は口達者なポッパーの発言から始まる。
よく喋るせいか口がでかい。彼は操縦士兼この船の副艦長でもある。元戦闘機乗りで操縦の腕前はA級。
Ⅾ「奴らの口車に乗るなよ。特にフロッグ、分かっているな。」
無口なフロッグは静かに頷く。
砲撃担当の彼は発明を溺愛する、繊細な射撃の達人。
繊細さとは似つかわしくないでかい身体だ。仲間には優しいが敵とみなすものには残酷な選択をいち早く行動できる。
我らは人間と同じくヒューマン型だが、魚類、両生類、哺乳類の進化系ではない。地球で言う他の海洋生物、軟体類、甲殻類から別進化をした。シルエットは人間そのものだが。
そして彼らは故郷から遠く離れたここで、監視という業務を続けている。唯一の娯楽は業務、人間の行動を垣間見、いささか楽しんでいる。
その業務の一環、ガンマ線を使った通信装置で人間の脳、前頭前野へ直接電波を送信し、人間の意識を操っている。
完全に操っているわけではなく、少し意識を誘導する。
目的である人類の絶滅を防ぐ為に。
この行動は人間の歴史に影響を与えてきた。
エジプト文明、産業革命、近代では核ミサイルの阻止3回、これら全ては、彼らの操作に関連している。
日本では、須磨一ノ谷の馬駆け、関ケ原など、坂本龍馬の暗殺はミスによるものだが、人類の歴史に多く絡んでいる。
そして我らが地球から採取したい物とは、資源ではなく、人類の「芸術」である。
最先端の技術、便利と引き換えに、芸術という感性を置きざりにしてきた。もうその能力を取り戻すことはできない。
創り出すことが出来なければ、他から手に入れるしかない。
至高の娯楽、芸術を。
次は③話 デプス:Depth
もうひとつの衛星。




