雪の舞い散る聖なる夜に
「おつかれさまっしたー・・・っと、、寒っ!」
バイト先のドアを空けると、途端に冷たい空気が身を襲う。
あまりの寒さに俺は思わずコートの前をあわせた。
「はぁ、、、雪、、まだ止んでないのか、、」
朝から降り続いている空からの贈り物。
街は空から落ちてくる白い結晶で覆われ、
白いケーキのような大通りを色とりどりのライトが飾り立てる。
12月24日。クリスマスイブ。
キリストの誕生日前日として、ささやかに祈られていた日は
今では恋人達の必須イベントと化している。
この街の恋人達も類に外れないらしい。
ある者達は手を握り締めて
ある者達は腕を組んで
ある者達は、、、その影を1つに合わせて
皆それぞれに聖なる夜を楽しんでいるみたいだ。
「、、、はぁ。。。」
そんな街を見ると、どうしても不景気なため息が漏れる。
今頃、本当なら俺はあの中、彼女――優希と一緒に歩いているはずだった。
「まぁ、いまさら言っても仕方ないんだけどな、、」
既に納得した(本心から納得することは出来ないが)ことだったが、
あの時のことを考えるとどうしても涙がにじんでくる。
それは1ヶ月前のことだった。
いつものようにまったりと過ごす時間。
普段はめったに我侭を言わない優希が、
珍しく次のお休みの日は絶対に遊園地に行きたいと言い出した。
俺が心から愛する優希のお願いだ。
もちろん俺には断る理由などこれっぽっちも存在しない。
そして次の休日。
俺達は約束どおりに遊園地でデートをした。
いつもどおりの空気。
楽しい一日だった。
時の頃は夕刻。
遊園地が夕日に染められる時刻。
「あ~今日は楽しかった♪ありがとねっ♪」
優希が元気よく(若干疲れた風ではあったが、、)振り向いてにっこりと微笑む。
「おう。俺も楽しかったよ。また来ような」
俺の一言に優希の微笑みに影がさす。
「えっと、、、」
「・・・・優希?」
「、、うん。本当に。本当に楽しかったよ」
段々と優希の顔が、
「でも、ごめんね。私、もうキミと付き合う資格ないんだ、、、」
その美しい顔が、
「だから、、、これで、おしまい。」
涙で崩れていく。
「ごめん。もう、、、、キミとは付き合えないんだ。。。」
「っ!!!どうしたんだっ!?優希っ!?」
突然告げられた別れの言葉。
あまりのことに何がなんだかわからない。
「これで、さよならだよ。ありがとう。ホントに、、、」
優希は身を翻して去っていってしまった。
「優希。。。どうして、、、」
何であのとき俺は優希のことを追いかけなかったのだろうか。
すぐに追いかければ間に合ったかもしれないのに。
あの優しい微笑みに触れることが出来たかもしれないのに。
けれども現実はあまりにも無残で
俺はただ立ち尽くすことしか出来なかった。
「ま、結局あの後、優希とは連絡取れなくなったんだけどな、、、」
コートの中に首を埋めながらつぶやく。
「雪、、、か、、」
去年、優希言った言葉。
雪を見て『雪は好き。私と同じ名前だから』と言って
少しだけ嬉しそうに微笑んだ表情。
「・・・っ!!」
頭の中に鮮明に浮かび上がる優希の姿。
俺の目から涙が溢れてくる。
止めようと思っても止めることができない。
すれ違うカップルが不思議そうに俺をちらちらと見ていく。
俺は涙を強引に拭くと、家路へと急いだ。
アパートの前まで来ると、俺の部屋の前に何か影がいた。
(、、、、泥棒?)
用心深く近寄ってみると、影に見えたのはどうやら人のようだった。
その不審者は人の部屋の前で座り込み、じぃっと何かを見つめている。
背をこちら側に向けているため、俺には気付いていないようだった。
「おいっ!人ん家の前でなにやってるんだ?!」
声をかけると、その不審者はびくっと肩を震わせて、あわてて立ち上がった。
しかし、よほど慌てていたのだろう。
踏ん張ろうとした足が滑って後ろへダイブ。
俺を下から寝転んで見上げる形になった。
不審者はじぃっと俺の顔を見つめると、はにゃぁっと顔をほころばせた。
(・・・・女の子?)
不審者はにっこりと笑ってから立ち上がり、
ぱんぱんと汚れをはたいてから向き合って、再びにっこりと笑った。
相手はどうやら女の子らしい。
年は、、大体10代の中盤から後半くらいか。
「・・・お前はここで何をしてたんだ?」
いくら女の子であっても、面識のない不審者相手に心を許すわけもなく、幾分か強めに問う。
女の子はにっこりと笑って先ほど自分が居た辺りを指差した。
そこには、怪しげな箱や紙袋、、、、などはなく、
朝、俺が出かけるときに気まぐれで作っていった小さな雪だるまがあった。
「雪だるまを見てたのか・・・?」
「(こくん)」
女の子は再び雪だるまの前に座り込んでじーっと雪だるまを見つめている。
いつからかは判らないが、俺が帰って来るまでこんな風にずっと雪だるまを見ていたのだろう。
よく補導されなかったものだ。
「しかし、、もう10時だぞ?帰らなくていいのか?」
「(こくん)」
雪だるまを見つめながら一回頷く。
「お父さんやお母さんは?心配してるんじゃないのか?」
「(ふるふる)」
やっぱり雪だるまを見つめながら顔を振る。
「・・・もしかして、帰りたくないのか?」
「(うにゅう?)」
ようやくこっちを向いて首を傾げる。
・・・どうにも反応がわからない。
しかし、どうやら雪だるまに執着があることだけは確かのようだ。
「それじゃぁ、その雪だるまやるから、もって帰っていいぞ?」
「(ふるふるふるふる)」
別に欲しいわけじゃないらしい。
・・・なんだか疲れた。
「ったく、、、じゃぁなんなんだよ・・・はぁ・・」
自然とため息がでてしまう。
(くぃくぃ)
何かに引っ張られる感覚。
そちらへ目をやると、女の子が俺のコートの裾を掴んでいた。
「どうしたんだ?」
怪訝な顔を向けると、女の子は再びにっこり。
・・・・どうやら懐かれてしまったらしい。
もうコレは観念するしかなかった。
「・・・・はぁ、仕方ない。いつまでも外に居たら風邪引くぞ。中に入るか?」
そういったとたん女の子の顔はぱぁっと笑顔になって、俺に抱きついてきた。
「え、う、うわぁっ!」
俺は突然のことにその体を受け止めきれず、そのまま後ろへと転んでしまう。
女の子は俺の胸の辺りに顔をすりつけながら幸せな表情をしていた。
相手はどうやら女の子らしい。
年は、、大体10代の中盤から後半くらいか。
「・・・お前はここで何をしてたんだ?」
いくら女の子であっても、面識のない不審者相手に心を許すわけもなく、
幾分か強めに問う。
女の子はにっこりと笑って先ほど自分が居た辺りを指差した。
そこには、怪しげな箱や紙袋、、、、などはなく、
朝、俺が出かけるときに気まぐれで作っていった小さな雪だるまがあった。
「雪だるまを見てたのか・・・?」
「(こくん)」
女の子は再び雪だるまの前に座り込んでじーっと雪だるまを見つめている。
いつからかは判らないが、俺が帰って来るまでこんな風にずっと雪だるまを見ていたのだろう。
よく補導されなかったものだ。
「しかし、、もう10時だぞ?帰らなくていいのか?」
「(こくん)」
雪だるまを見つめながら一回頷く。
「お父さんやお母さんは?心配してるんじゃないのか?」
「(ふるふる)」
やっぱり雪だるまを見つめながら顔を振る。
「・・・もしかして、帰りたくないのか?」
「(うにゅう?)」
ようやくこっちを向いて首を傾げる。
・・・どうにも反応がわからない。
しかし、どうやら雪だるまに執着があることだけは確かのようだ。
「それじゃぁ、その雪だるまやるから、もって帰っていいぞ?」
「(ふるふるふるふる)」
別に欲しいわけじゃないらしい。
・・・なんだか疲れた。
「ったく、、、じゃぁなんなんだよ・・・はぁ・・」
自然とため息がでてしまう。
(くぃくぃ)
何かに引っ張られる感覚。
そちらへ目をやると、女の子が俺のコートの裾を掴んでいた。
「どうしたんだ?」
怪訝な顔を向けると、女の子は再びにっこり。
・・・・どうやら懐かれてしまったらしい。
もうコレは観念するしかなかった。
「・・・・はぁ、仕方ない。いつまでも外に居たら風邪引くぞ。中に入るか?」
そういったとたん女の子の顔はぱぁっと笑顔になって、俺に抱きついてきた。
「え、う、うわぁっ!」
俺は突然のことにその体を受け止めきれず、そのまま後ろへと転んでしまう。
女の子は俺の胸の辺りに顔をすりつけながら幸せな表情をしていた。
ベットの中、俺の腕の中で優希が気だるい様子で―しかし、凄く満ち足りた様子で―身を預けていた。
優希はのそのそと俺の上にくると、抱きついて胸の辺りに顔を乗せて頬擦りをしてくる。
「ん~♪幸せ~♪ごろごろ~♪」
優希が良くやる行為の1つだ。
「優希。まるで猫みたいだな。。」
「キミは私に猫になってほしいのかにゃ?」
にゃはは~と笑いながら頬に猫パンチをしてくる。
痛くはない。でもなんだかくすぐったい。
優希は猫になりきってるようだ。
俺は苦笑しながらも指を出して応戦する。
猫優希と俺とのじゃれあいはしばらく続いた。
「それにね、こうしてると安心するんだよ♪」
確かにこうして優希とひっついているだけで安心する。
そして、胸の中に暖かいものが溢れてくる。
優希をみているだけで優しい気持ちになれる。
自然と手が優希の頭を撫でる。
「あ、、、それ気持ちいい、、、v」
そしていつしか幸せな気持ちのまま眠りについていた。
昔の記憶が思い出される。
優希ともこうしてよく抱き合っていた。
再び目に熱いものがこみ上げてくる。
(こんなに優希のこと引きずって、、俺はヘタレだな。)
再び女の子を見る。
まだ俺の胸に頬擦りをしている。
そんな姿に優希の姿がフラッシュバックする。
女の子と優希の容姿は全然違う。
背丈だって、年齢だって。
なのに、なぜか女の子と優希がダブって見えた。
俺の手は優希にしてあげてたのと同様、自然と女の子の髪を撫でていた。
「・・っ!!つめたっ!!」
あわてて手を引っ込める。
女の子の髪はまるで氷のように冷たくなっていた。
俺は急いで女の子を立たせると、女の子のほっぺを挟み込むようにして両手を当てる。
冷たい。
それこそ真冬の氷水みたいに。
そのとき俺は思い出す。
今日はずっと雪が降っていて太陽は出ていない。
日中もずっと寒かったはずだ。
そんな中、ずっと外で雪だるまを見ていたとしたら。
「っと、こんなに体を冷たくして、、ホントに風邪引いたら大変だっ!」
急いで部屋の鍵を開けて中へ女の子を招き入れる。
暖房を入れて、部屋を暖める。
「いま熱い風呂沸かすからちょっと待ってろ!」
女の子に毛布をかけてから風呂場へ。
風呂をセットしてから戻ってくると、
女の子は部屋の中にあった描きかけのキャンバスをじっと見ていた。
そのキャンバスには1人の美しい少女が途中まで描かれていた。
しかし、その絵は完成することなくその時間を止めていた。
女の子はゆっくりと俺を振り返って、にっこりと笑った。
「へぇ。ここがキミの家かぁ~。」
「な、なんだよっ、あんまりじろじろみるなって。。。」
今日は初めて優希を家に呼んだ。
優希は俺の部屋を物色するように見回す。
「結構綺麗にしてるじゃない♪散らかってたら私が片付けてあげようとおもってたのになぁ」
「昨日あわてて片付けたんだよっ!」
「ふふふ。可愛いところあるじゃな~い♪いいこいいこ♪」
少し背伸びをしながら俺の頭をなでなでする。
「ん?このおっきいのなに??」
指差した先には描きかけのキャンバスがあった。
俺はこれでも美大に通っている。
絵を描くのはもともと好きで、スケッチに出かけた時に出逢ったのが優希だった。
そこで優希の笑顔に心を奪われ、今に至る。
優希がキャンバスにかけられていた布をはずした。
「これって、、、私?」
「あ、あぁ、、、」
「へぇ。ちゃんと可愛く描いてくれなきゃダメだよっ?」
優希は振り向いて、最初に俺が心を奪われた笑顔をくれた。
(くいっくいっ)
裾を引っ張られる感覚。
女の子が俺の裾を引っ張っていた。
気づくと、頬から暖かいものが伝っていた。
俺はあわてて拭うと、女の子に風呂を勧めた。
(ぎゅっ)
女の子は裾を掴んではなさない。
「えっと、、、お風呂入っておいで?」
「(こくん。ぎゅっ)」
しかし、まだはなさない。
「えっと、、、俺は一緒には入らないよ?」
「(ぎゅっ)」
、、、、困った。
どうやってもはなしてくれないみたいだった。
だが、このままで入らないようではこの子が風邪を引いてしまう。
「、、、仕方ないなぁ」
・・・・・疲れた。
何があったかはあえて言うまい。
ただ、『お風呂場は戦場だった』。。。
女の子は着替えがなかったため、俺の服を着せておいた。
「やっぱりでかいなぁ、、大丈夫か?」
女の子は体が小さいため、俺のシャツ一枚で太ももの辺りまで覆えてしまっている。
袖もぶかぶかで、服に着られているという感じだ。
「、、、vvv」
女の子は気に入ったのか、上機嫌だった。
そのとき、くぅ~と可愛らしい音がなった。
「・・・・・っ」
真っ赤になってぶかぶかの袖で顔を隠す。
「おなか空いたのか。なんかあったかな、、」
冷蔵庫をあさるも所詮男の1人暮らし。
そんな食べ物を常備してるわけではない。
「お。そういえば、バイト先からもらってきたケーキがあるわ。食べるか?」
「(こくんっ!こくんっ!)」
ケーキを適当に切り分けて女の子にだしてやる。
女の子はケーキをものめずらしそうにじぃっと見ている。
「もしかして、食べたことないのか?」
「…(こくん)」
「食べてみな?味は保障するぞ。」
それでも女の子は手をつけようとせずにじっと見つめている。
「・・・もしかして、食べ方わからないのか?」
「、、、、、、(こくん)」
なんだか子犬を拾ってきたような気分だ。
なぜだろうか。
今は凄く優しい気分で溢れている。
「ほら」
フォークで一口大に切ったケーキを女の子の口の前に持っていってやる。
「口をあけて食べてみな。」
「(あ~ん)」
おずおずと開いた口にそっとケーキを入れてやる。
女の子はゆっくりと噛んで味わう。
途端、女の子の顔に喜びと幸せが混ざった笑顔が浮かんだ。
また口をあけて俺に催促する。
「わかったわかった。ほら」
その口の中に再び入れてやる。
口の中に入れてやる度に女の子の顔が喜びに染まる。
食べさせている途中、ふとこの子の名前を聞いていないことに気付いた。
「そういえば、名前・・」
「?」
「まだお前の名前聞いてなかったなと」
女の子はじっと考える素振りを見せた後、ゆっくり頭を振った。
「ん~・・・でも名前がないと呼び辛いな、、」
女の子は何かを期待するようにじぃっと見つめてくる。
なにか良い名前がないか思案する。
ふと窓の外を見ると、まだ雪が降り続いていた。
「雪、、、か。ユキっていうのはどうだ?」
女の子は目を輝かせて抱きついてきた。
どうやら気に入ってくれたみたいだった。
この名前は特に優希を意識して付けたわけじゃない。
ただ単に、窓の外の雪が綺麗だっただけだ。
そう。ただ雪が綺麗で…。
結局、1ホール全てがユキの口の中に消えていった。
食べ終わると、ユキは満足したのかうつらうつらし始めた。
「眠い?もう寝るか?」
頭を撫でながらそう尋ねると、ユキはゆっくりと頷いた。
一旦ユキをその場に残し、布団を敷いてやる。
ユキの頭と膝の下に手を入れて抱え上げ――一般的にはお姫様抱っこという――て
布団に寝かせてやった。
電気を消して自分のベッドに潜り込む。
体がだるい。
思っていたより大分疲れているみたいだ。
すぐに眠気がやってくる。
俺の意識はそのまま夢の中へ沈んでいった。
ごそごそとベッドに潜り込んでくる何かに目が覚めた。
ボーっとしている頭のまま見ていると、ユキが俺のベッドに潜り込んできたようだった。
ユキは俺が見ているのに気付くと、にこっと笑って抱きついてきた。
非常にまずい状況であるとわかっている。
しかし、ユキ相手に不埒な行為を働こうとは全然考えもしなかった。
ユキにはそう思わせるなにかがあった。
俺の手は自然とユキの頭を撫でる。
ユキも気持ち良さそうに目をつぶって抱きついてくる。
腕から伝わってくるユキの温もりが心地いい。
俺達はそのまま眠りについた。
明け方。
うっすらと空が開ける頃。
何か嫌な予感に目が覚めた。
この予感はなんなのだろうか?
ふと、腕の中で寝ているはずのユキの姿が見えないことに気がついた。
慌てて辺りを見回すと、部屋の隅でユキがうずくまっていた。
こちらを背にしているため表情は見えないが、その肩は小刻みに震えているようだ。
瞬間、ユキの体がぐらりとよろめいた。
俺は慌ててユキの所へ駆け寄って支える。
「ユキ!どうした?!」
ユキの顔は真っ青になり、そのカラダは恐ろしく冷たくなっている。
俺はユキをベッドに寝かして、タオルを取りにいこうとした。
が、ユキが俺の手をしっかりと掴んで話さない。
「ユキ?」
「、、、、、(にこ…っ)、、、」
訳がわからない。
しかし、ユキに危機が訪れていることは間違いなさそうだ。
ユキは苦しそうに微笑んだ。
その微笑みは見ていて痛々しい。
一度も声を発することのなかった唇がゆっくりと動く。
・・・・あ・・・・り・・・・が・・・と・・・う・・・・
俺は何度もユキの名前を呼んだ。
ユキも苦しげに微笑んで答える。
ユキの顔から段々と苦痛が消える。
そしてユキの手から力が抜けた。
「・・・っ!!」
何も出来なかった。
優希との別れと同じように
ただ、
俺は流されるだけで
涙がこぼれないようにきつく目を閉じる。
全てが夢であったらいいのに。
そう願いながら。
目をあけると、そこにはユキの姿はなかった。
ユキが着ていた俺の服だけがびしょびしょに濡れてそこにあった。
窓からは明るい日が差している。
いつの間にか雪は止んでいたようだ。
「・・・夢、、、だったのか・・・?」
外に出て空を見上げる。
昨日とは打って変わって快晴のようだ。
日差しが心地よく暖かい。
立ち尽くす俺の足元で、雪だるまが溶けていた。
結局、あの夜のことは何一つわからなかった。
同じアパートの人に聞いても、俺の部屋の前にそんな子はずっと居なかったという。
夢だったのだろうか?
しかし、俺の中にはユキと一緒に居た一晩の記憶がある。
優希とどこか似たユキのことを想って、そっと祈りをささげる。
後日知った話だった。
ユキが消えたあの日、優希が手の届かない場所へ旅立ったらしい。
原因は知らない。
だが、俺と別れたのも自分が居なくなることを感じ取った為らしかった。
優希の母から受け取った彼女の日記には、
俺への想い、後悔、懺悔が毎日のように綴ってあった。
そして、最後のページ。
「貴方と会えて、幸せだったよ。
ありがとう。
そして、ごめんね」
その日、俺は夢を見た。
懐かしい優希の夢だ。
内容は覚えていない。
でも、とても幸せだったと思う。
これは聖なる夜の一夜の夢。
儚い想いが交差する夜。
月の光と星の瞬きが、儚い夢を織り成す。
Fin,,,
以前、mixiの中で投稿してた作品です。
書いたのは2005年、、、もう4年も前!w
そんな、淡い恋心と切ない愛情が感じていただければうれしいなぁと想います。




