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いきなり滅亡宣言!?【地母イリーシャの日;深夜】


 それは突然だった。


『全世界の、言語を介する知的生物のみなさんこんにちは。こちらは女神フィリアです。この伝心は、全言語(コンプリート)自動翻訳(トランスレーション)によって、この世界のすべての知恵ある生き物の精神へ強制送信されています。お就寝(やすみ)中のかたは申しわけありません。絶対に忘れない強烈な夢として記憶に残るようになっています』


 いきなり、空から声が降り注いできた。


 正確には、頭の中に強引に入り込んできたのだ。


『急なお話でみなさんをびっくりさせてしまうと思いますが、まずは要点からお伝えします。この世界は、あと一週間で滅亡します』


「はぁっ!?」


 わたしは叫び声とともに飛び起きていた。いきなりなにを言い出すんだこの女神は。


 いつものお布団と枕の感触がするのはたしかだが、暗くてなにも見えない。真夜中だ。


 しかし声は響きつづけていた。


『責任者出てこいという声が聞こえます。責任者はわたくしです。わたくしだ。文句は受けつけない。口からクソ垂れる前にマムをつけろ、わかったな。サーとかいったやつは殺す。わたくしは女神だ。女性への敬称はサーではない、マムだぞ』


 女神がバグった――おそまきながら、とんでもなくヤバい事態が起きていると理解できたわたしだが、創世神にして愛を司るフィリアの声はなお収まることがない。


『なぜ世界が滅びてしまうのか。みなさん疑問に思っていることでしょう。わたくしの力が弱まっているのです。この世界を維持するだけの神聖力(ディヴァイン・マイト)が足りません。わたくしの力となるものは、愛です。パワー・オヴ・ラヴです。ポテーレ・デ・ラ・アモーレです。マッフト・ダー・リーベです』


 世界を維持できないほど女神の力が弱まっている……?!


 それは、教会の大失態ではないか。信仰を広め、邪教を滅し、フィリアに祈りを捧げフィリアの加護を一手に受けてきた教会は、なんのために存在していたのだ。


 だから、フィリアは教会の神託を介すことなく、直接全世界へ向け語りかけているの……?


『残り一週間、みなさん悔いのないようにお過ごしください。ですが、この世界の残り短い時間を支えているのも、また()です、それをお忘れなきよう。愛のない行動は、それだけあなたの破滅を早めます。……それではみなさん、ごきげんよう』


 女神フィリアの声が途絶えた。深夜の静寂が戻ってくる。


 ばたばたと廊下を走る音が聞こえてきた。フィリアの演説中は、身動きひとつできないでいたのだろう。


「聖女さま! アルフィニアさま!! たいへんです!」


 叫び声とともに寝所のドアが乱暴にノックされ、こっちの応答を待つこともなく、聖堂勤めの女官であるリーチェが飛び込んできた。


「そんな大声出さなくたって、わたしにも聞こえてたわよ」

「あの、その、いまのお声は、いったい……」

「まず間違いなく女神フィリア自身ね。(かた)りだったとしても、そうとうに上級の邪神よ。全世界(グローバル)同時伝心(ブロードキャスト)ははったりじゃなさそう」

「そ、それでは、ほんとうに世界はあと一週間で……?!」


 青ざめて倒れそうになったリーチェの肩を、わたしはあわててつかむ。


「のびてるヒマはないわよ。仕度をおねがい。どうせ、いまのでみんな飛び起きたわ。対策会議開くわよ」

「は、はいっ!」


 とりあえず目の前に仕事があれば、異常な状況について考えないでいられる。

 リーチェはさっそくわたしの寝間着を脱がせて、聖女としての恰好を整えさせはじめた。


 しかし、正フィリア教会の聖女であるこのわたしの頭越しに、全世界へ滅亡宣告をぶちまけるとは、あのク……さきにマムをつけろだったか。


 フ●ッ●ンメム(巻き舌で)! クソ女神が報連相をしろ報連相を!!


 一週間どころか一日で滅ぶぞこの教会!


 あーもう、なんでわたしはこんなファ●キ●教会の聖女なのよー!?



久しぶりの連載です。よろしくおねがいします。

主人公の聖女がものすごい口の悪い子ですが、根は善い子なんでおつきあいいただけますと幸甚です。

世界滅亡回避チャレンジはじまるよー!

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