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 7月14日、フリーマントルに寄港した。

 今日は仕事がないのでレオンと高橋さん、後藤さんと共に街に繰り出す。

 気温は12度。真冬なので上着がないと寒い。

 

 久しぶりの地上は変な感覚だった。

 全く揺れていないことに違和感があり、地面が揺れている感じがする。

 一緒にいた3人も同じで何だかふらふらと歩く。

 最初から酔っ払っているようでちょっと面白かった。

 ・・・よく考えたら俺とレオンはアルコールはまだ摂取できないんだな。



【向こうのレストランで何か食べよう】


【食べ物なら安いわ。京極くんにはここで奢ってもらおう】


【はは、お手柔らかに】



 勝ち点に差が無かった俺は無難な結果になった。

 ならば自分は、と高橋さんとレオンが青くなる。



【・・・なぁ久美、僕はどこで奢らされるんだ?】


【あっちにブティックがあった。あそこなんてどう?】


【・・・】



 ま、物価が似通っているとはいえ、食べ物からすると倍以上だ。

 このへんは賭けに乗った高橋さんの自業自得。



【俺はどうなるんだ】



 不安な表情でレオンが訴える。

 後藤さんはちょっと悪戯顔をしながら奥の店を指す。

 そこは宝石店だった。



【ジーザス!!】



 レオンは叫んでいた。

 ・・・どこまで本気なんだろうな、後藤さん。



 ◇



 午後、天気が悪くなった。

 ブティックでウキウキだった後藤さんはここで買い物を切り上げて船へ戻ることにした。

 財布(カードの中身)が軽くなってしまった高橋さんは魂が抜けたような表情をしていた。

 後回しになっていた宝石店に寄ることが無くなりレオンはほっとしていた。

 レオンよ・・・明日もあるんじゃね?


 船に戻ったらすぐに冷たい雨が降り出した。

 雨季なので寄港中の雨はよくあるらしい。

 船の補給は滞りなく進んでいるようだ。


 レオンは後藤さんから逃げるように部屋に戻っていった。

 手持ち無沙汰になった俺はロビーでうろついた。

 また高橋さんと後藤さんに会った。



「おふたりも休憩ですか?」


「うん、僕たちも今日はやることがないからね」


「折角の陸なのに雨なんてね~。お酒飲みに行くと京極君をひとりにしちゃうし」


「俺はほっといてもらって大丈夫ですよ?」


「またまた。寂しいの知ってるんだから!」


「そうそう、僕たち仲間じゃないか。独りになんてさせないよ」


「・・・ありがとうございます」



 俺は少し照れてお礼を言った。

 やっぱり気にかけて貰えるというのは嬉しい。

 出発前にひと悶着あっただけに、人付き合いに二の足を踏む感覚があった。

 レオンをはじめ、気安く接してくれる人がいるというだけで孤独を感じなくて済む。

 有り難い話だった。



「そういえば、聞きたかったんですけど」


「うん、なに?」


「おふたりはお付き合いされてるんですか?」


「うん、付き合ってるよ~」


「見たとおりだね」



 少し照れながらも、身体を寄せ合ってアピールしてくれる。

 中学生や高校生と比べて余裕のある雰囲気。

 ああ、やっぱり大人になると違うね。

 四十路たる俺の感覚はこっちのほうが近い。



「俺、いろいろ聞いてみたいことがあって・・・」


「あ、なになに? 中学生の甘酸っぱい初恋とか?」


「えっと・・・」



 ちょっとドギマギ感を醸し出す。

 ごめんなさい、盛ってます。



「うんうん、青春だね~」


「僕らの話ならいくらでも話すよ」



 そう。

 今回、ふたりに聞きたいことはアレだ。

 貞操感とかそういうものを確認してみたかったのだ。



「俺、あんまり知らなくて。1番ってどういう感じですか?」


「きゃっ! そこから!? ああ~、初々しい~」


「ほら久美、あんまりからかっちゃ駄目だよ」



 高橋さんは良識派、後藤さんは恋バナ好き女子って感じだな。

 ちょうどこの辺の話を聞きやすい。



「えっとね、1番同士だとね、凄いんだよ~」



 きゃっと手のひらを頬にあてて恥じらう後藤さん。

 高橋さんはうんうん頷いている。

 ・・・これってあれか。致すときの話だな。



「え・・・、ど、どうなるんですか・・・」



 踏み込んでみる。

 ああね、若いから興味津々なんだよ!



「え~。聞いちゃう? そこ」



 頷いて促す。

 久美さんは高橋さんに視線で許可を求めている。

 高橋さんがOKっぽい合図を送る。

 え、中学生にはそんな刺激が強いの?



「周りで皆、話をしてて・・・気になってるんです」



 ちょっと恥じらいながら訴えてみる。

 こう、年下方向に詐欺るのって初めてかも。



「そのね。するときの感覚が共鳴するの。こう、パァァーって!」



 What?

 感覚的すぎて分からん。



「普通にするのと比べて、共鳴具合にもよるけども数倍以上になるんだ」


「そ、だから相性が大事ね! 啓介と私、相性ばっちり!」


「なるほど・・・」



 興味津々にうんうんと頷く。

 いや、実際に興味津々だろ、これ。

 どうなるのよ!? すんげえ試してみたい!

 そりゃ皆、1番に拘るよな。



「共鳴するのって、一方通行じゃ駄目なんですか?」


「駄目なの! ユニゾン効果だっけ、ほら、何か言い方があったじゃない?」


「レゾナンス効果。共鳴って意味そのまま」



 レゾナンス、共鳴ね。

 1番同士は共鳴する、と。・・・何が?

 結局、何がどう共鳴してすごいことになるんだ?



「何が、レゾナンス効果のもとになるんですか?」



 知らないことはおねーさんに聞いてみよう!(棒)



「それはご存知のとおり魔力。新人類が得た特権って言われてるよ」


「魔力、なんですね。それでAR値のことを皆、気にするんですね」


「そう! 大きければ大きいほど、レゾナンス効果が大きいの!」



 なるほど・・・。

 じゃ、ゼロの俺は誰とも共鳴しない・・・?

 え!? 駄目じゃん!!



「それで、共鳴したときのエクシズムって最高なの!」


「エクシズム・・・?」


「ほら・・・あんまり専門用語使うと引かれるよ?」


「ええー? 興味ありありだよね!?」



 俺は頷いておく。

 聞いたことがない単語だ。造語?



「何と何の合成語だっけ?」


「・・・それ、僕に言わせるの? エクスタシーと、オーガズムだよ・・・」


「・・・!?」



 さすがに高橋さんもトーンを落として言った。

 いや、これは・・・ねぇ・・・。

 真っ赤になるよ、普通に。恥ずかしいやつだ。

 つまり・・・。

 共鳴状態で達するとエクシズムってことね・・・。

 ・・・。

 ・・・。

 まぁ。この先、そういう機会があれば、ね。



「あはは、やっぱり初だねぇ~! 可愛い!」


「はは。でも、皆どこかで知っていく話だからねぇ」



 その機会をありがとうございます。

 この際なので、もう少し聞いておこう。



「えっと・・・その。2番の人とエクシズムって得られるんですか?」


「ん~、どうなんだろ。私は1番しかいないからなぁ。ね、啓介♪」


「あはは、そうだね。ごめん、僕らは試したこと無いんだ」



 ああ・・・なんだろう、この安心感。

 俺の倫理観に合致するというだけでとても嬉しい。

 ラリクエ倫理に振り回されっぱなしだからな!



「この辺はモノの知識や聞いた話になっちゃうけど。1度、共鳴しちゃうと魔力が相手と同じ属性を帯びちゃうんだって」


「属性?」


「う~ん・・・レゾナンス効果の研究で説明されてるんだっけ」


「難しいことはいいの! 相手色に染まっちゃうってこと!」



 Oh・・・文字通り「あなた色に染まっちゃう」ってやつ?

 俺の知らない常識がフィーバーしてんぞ!



「つまり、染まっちゃった魔力は戻らないと?」


「そうみたい。だから1番同士で共鳴させてから2番の人とするとか、色々あるみたいね」


「!?」



 え? なにそれ?

 3P推奨?

 やばい、ラリクエ倫理だ・・・。



「だって2番になっちゃうと共鳴できなくて普通のになるから・・・」


「な、なるほど・・・」



 つまり、致すのは問題ないけど、1番との格差が凄い、と。



「ちなみに・・・共鳴した魔力って、ずっと戻らないんですか?」


「長い時間を置けば戻るらしいよ? 試したことないから分からないけど」


「うん。あとは・・・AR値相応に共鳴するみたいだから、余ってたら別の人とも共鳴できるみたいだね」


「え?」



 えーと。



「・・・例えばAさん50、Bさん30だとしたら、Aさんは20余るから残りで別の人と共鳴できるってことですか?」


「うん、そうそう。だからAR値が高い人は多重婚しやすいって」


「あ・・・そういうことなんですね」



 どういうことだってばよ!!

 ラリクエスタッフの倫理観って・・・。



「でも、エクシズムなんて無くても人類は血を繋いできたからね。1番にこだわり過ぎないほうがいいよ」


「とてもよく分かりました・・・」


「うんうん。勉強だけじゃなくてね、こういうこともどんどん聞いてね!」



 後藤さん、素敵!

 ・・・そうかぁ。1番になると目に見えない絆ってのができちゃうんだな。

 もしかしてこれ「キズナ・システム」の根幹設定か・・・?

 あとで考えてみよう。



「えっと。もうちょっと聞いても?」


「うんうん! なあに?」


「・・・同性とも共鳴するんですか?」


「するよ~! エクシズムもばっちり!」


「あ・・・だから同性もありなんですね。俺、異性にばっかり興味いっちゃって」


「あ~、なるほどね。生物の本能的にはそうなっちゃうよね」



 ん? じゃ、そうでないケースがある?



「さっきみたいに小難しい話は置いといて。いわゆる信頼関係を積み重ねると共鳴しやすくなるんだよ」


「なるほど? すると、いつも一緒にいると共鳴しやすくなる?」


「そうそう。遊んだり勉強したり、身体をくっつけたりでも。時間の長さと距離の短さに比例するんだよ」


「そうやって自然に共鳴しちゃうと、相手から離れると違和感があったりするから」



 もはや目に見えない鎖だな・・・。

 これ、俺がAR値ゼロだから気にならなかっただけで。

 もしAR値があったなら、九条さんあたりと共鳴してたのか!?

 そうだとしたら、九条さんが一緒に居たがっていた理由がわかる。

 一向に共鳴しないから・・・俺の気が引けてないって思っていたのかも。

 え、これ恋愛的に嘘がつけなくなるんじゃね?



「だからね、皆、1番には格段のこだわりを持つ人が多いの」


「うん、そうだね。旧人類は不倫が多かったみたいだけど、新人類はレゾナンス効果で生涯一緒になることが当たり前だからね」


「はぇー・・・」



 ・・・まさか旧人類の価値観のほうが否定されるとは。

 こうして考えると、旧人類って新人類から見ると駄目そうな感じだな。

 LGBTなんて言葉がある時点で差別があるわけだし。



「その・・・ほかにも良いですか?」


「うん! この際だから聞いちゃって?」


「共鳴って、お互いにそういう気持ちになったらいっぺんに共鳴するんですか?」


「あ、いい質問だね!」



 良い質問なのか、これ。



「例えば一番共鳴しやすいって言われる、身体を重ねる方法で共鳴させたとしても、1度で多くて1%くらいみたい。だから何度も繰り返して愛情や信頼を重ねる必要があるんだよ」


「言い方悪いけど・・・ヤリ捨てだとエクシズムなんて得られないってことだね」


「なるほど・・・」



 共鳴具合はある程度、調整できるってことか。

 一気に変わらないなら、そんな怖くはない・・・かな?

 しかしこれ、マンネリどころか泥沼にハマる感じになるってことだな。



「それでグループで付き合ったりするんですね」


「そうそう! 仲良し3人とか4人とか。お互いに共鳴し合うとお互いに好きになれるから」


「選べない人たちはそういうことも多いよ」


「・・・」



 なんかもう、ラリクエ倫理が理解できなかった理由が分かったよ。

 だからライバル同士、一緒に居てもそんな喧嘩とかしないんだな。

 俺が壊しちゃった4人組も、ずっと一緒だったらそうなったのかも。

 AR値をあまり公表しないのも、AR値=恋愛レベルみたいなもんだからか・・・。

 ・・・ん? もしかして香さんと九条さんも共鳴してたり?



「その・・・共鳴しやすさとか、相性ってあります?」


「あー、うん。あるよ? いわゆる染まりやすさだね。相性って言葉で言われることが多いかな」


「私と啓介の相性がばっちりっていうのも、共鳴が早かったからなんだよ♪」


「なるほど・・・」


「相性が良いとエクシズムも早いの! だからするのも楽しくなっちゃう!」



 それは、うん。

 こうも推されるとこっちが恥ずかしくなってくる。



「色々、勉強になりました。ありがとうございました」


「ふふ、いいのいいの! あ~、こんな話しちゃうと・・・ね、啓介♪」


「ああもう、わかったわかった」



 ・・・うん、ごちそうさまでした。

 大変勉強になりました。まる。




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