039
クリスマス会と年末年始は例によりダイジェストで。
◇
予定通り24日にクリスマス会を開催。
午前中の買い出しをしていると橘先輩を驚かそうとの話が出る。
発案:九条さん、企画:花栗さん、協賛:御子柴君。
去年はクラッカーでやられたので、今年はクラックヴィジョンを使おう、と。
クラックヴィジョンは未来仕様のクラッカー。
飛び出てくるのは音と映像だ。
予め映像を指定できるものもあって、俺の映像を仕込むことに。
既存のピエロが出てくるびっくり箱的な映像で良いと言ったんだけど
「武さんの映像が橘先輩に1番効果がある!」
と口を揃えて説得された。
内容も指定され、両手を広げてにこやかな俺が抱きついてくるという映像になった。
飾り付けを終え料理やケーキも揃い、会場に橘先輩が現れる。
通常のクラッカーを前座として三方から気を引いた後にクラックヴィジョン発動。
驚くかと期待していたら、まさかの嬌声をあげて満面の笑みで映像に抱きついた橘先輩。
偽物と分かると赤くなって青くなってキレた。
「私の純情を弄んだ!」「責任を取れ!」
涙目の橘先輩を宥めるのに10分かかった。
ほぼ俺のせいにされた・・・けしかけた3人は知らん顔。ケーキ食ってんじゃねぇ!
納得いかん。
パーティーが盛り上がってきたところでゲームをすることに。
最初はトランプでババ抜きとなった。
特殊ルールを入れたいというので引く時は誰から取っても良い、ということに。
勝ったらビリの人へ何かさせることができるというルールも追加。
やってみるとポーカーフェイスが苦手な九条さんがビリという結果に。
だって、ババを取ろうとすると笑みを浮かべ、逆だと悲しそうにするんだもん。
初戦は俺が1番になった。
可哀想に思ったので「俺に給仕をして」と食べ物飲み物を取ってくるよう要求。
喜んで持ってきてくれて、ケーキを「あ~ん」をしてきた。
「それはさくらにとってのご褒美だ」と橘先輩に止められていた。
2戦目。
九条さんが不利すぎると思って、敢えてジョーカーを取ってみた。
そしたら皆が俺から取らずに全力で上がりやがった。
何で結託してんだよ、お前ら。
結果、花栗さんが1番で俺がビリ。
「私にケーキをあ~んして」と仰せに。
羨望の眼差しを向ける他3名。
仕方ないのでケーキに乗ってる砂糖菓子のサンタを丸ごとあーんした。
さすがに怒られた。
今度は「王様ゲームをしたい」と花栗さん。
さっきのババ抜きのゲーム部分を省略しただけじゃん!
俺以外が満場一致で決定。
多数決なのね、嫌な予感するから反対したんだけど。
全員でくじを引いて、当たりの王様が番号指定で言うことを聞かせるという形式。
念のため「キスとか尊厳に影響するものはやめよう」と釘を刺してから開始。
1回目、王様:橘先輩。
「2番が3番に膝枕をすること」
九条さんがとても嬉しそうに俺の膝に頭を乗せた。可愛い。
2回目、王様:九条さん。
「4番が1番にハグをすること」
御子柴君が抱きしめてきた。顔を赤らめていた。男なのに良い匂いがした・・・。
3回目、王様:橘先輩。
「1番が3番に膝枕をすること」・・・膝枕好きだな橘先輩。
俺が花栗さんの膝に頭を乗せた。にこやかに、やたら頭を撫でられた。
子ども扱いをされているようで少し屈辱感。
4回目、王様:花栗さん。
「4番が1番の頭を撫でること」
わんこみたいにワクテカする橘先輩のポニーテールを弄んだ。
もっともっと、と5分くらいおかわりが続いて九条さんが引き剥がした。
5回目、王様:御子柴君。
「2番が4番の好きなところを言うこと」
俺が花栗さんに「三つ編みが可愛い」と言った。花栗さんは耳まで赤くして俯いた。
気付いたら九条さんと橘先輩が三つ編みを始めていた。
6回目、王様:九条さん。
「2番が1番をハグすること」・・・九条さんもハグが好きだな。
橘先輩に抱きしめられた。顔を胸に押し付けて匂いを嗅ぎだしたので引き剥がした。
このあたりで俺が不正を疑う。
毎回、俺が指定されるのは何故だ、と。
問い詰めると皆結託し、俺が見えないところで自分の番号を王様に教えていた様子。
・・・まぁ、ね。そんなことだろうと思った。
俺が王様を引けなかったのは純粋に運が悪かっただけ。
でもまぁ・・・クリスマスだしな、とそれ以上の追求はしない。
プレゼントだ、と全員の頭を撫でておいた。
もっと撫でろと纏わりつかれた。わんこかお前ら。
◇
年末、年越しそばの会。
飛び入り参加の花栗さん。
「ふたりと一緒できるだけで、そばが10杯は食べられる!」と。
お代わりは家に帰ってから食べなさい。
去年の店はきついので、花栗さんおすすめの店にすることに。
曰く「そばが飛んで来る店」。
は?
見た目は普通のそば屋。純和風で良い感じの店。
注文して待っていると店員が汁の入ったどんぶりのみ持ってくる。
何だこれ、と思っていたらそばがカウンターから宙を浮いてやってきた。
そのままするするとどんぶりの中に納まっていく。
え? 何がどうなってんの!?
実はこれ、透過性のある素材で作ったベルトコンベア等を利用したもの。
未来技術の透過技術がすごすぎて、本当に透明なのだ。
座席の上まで移動させ、そこから透明な筒っぽいもので落としているらしい。
手を伸ばしてみれば、なるほど何かあった。
だから座席に「あまり動かないでください」と書いてあったのか。
もちろん天ぷらも飛んできた。
俺がかき揚げ、九条さんが海老天、花栗さんが野菜天。
どんぶりに納まったらいただきます。
シュールすぎる・・・。
肝心のお味は良好。
店構えが真面目なだけにこのシュールさが受けるらしく満席だった。
天ぷらを交換しあったりして和気藹々と食べた。
「来年は年越しパスタを食べましょう!」「良いね、行こう!」
文化を破壊するのは良くないと思うので反対しておいた。
◇
年始、初詣。
去年と同じ橘先輩のうちの近くにある神社へ。
こちらは御子柴君が「俺も行く!」と参加することに。
お清めして願い事・・・をする前の作法を御子柴君がほぼすべてすっ飛ばす。
いきなりガラガラと始めたので注意すると
「え? そんな小難しい作法、要らないだろ」
ちょっと待て、お前。
願掛けに来て願掛けの神様を蔑ろにするとか、何しに来てんだよ。
神社たるものが何かを10分ほど説く。
「お、俺はとても無礼なことをしてしまった」
と改心して神様に謝っていた。素直でよろしい。
その光景を見ていた橘先輩「武君、おとうさんみたい」。
ごめん、おとうさんなんですよ・・・。
願掛けの内容を口にしようとした御子柴君が
「お願い事を他の人に言うと叶わなくなるんだよ」
とドヤ顔の橘先輩に諭され
「橘さん、さすがです!」
と感動していた。
・・・ね、こうして人は成長していく。
甘酒をお代わりしまくる橘先輩と御子柴君。
お前ら神社の人が困惑してるだろ、列を周回するんじゃねぇ。
5回目あたりで列から引っ張り出して止める。
ぶうぶうとやたら文句を垂れるふたり。
しつこいと思ったら顔がほんのり赤い。
何で酔ってんだよ・・・酒粕でも度数はほとんどないはずなのに。
嫌な予感がしたのでさっさと帰ろうとおみくじで締めることに。
橘先輩:吉。恋愛:一線を超えるな。
「どういうこと!?」と喚く。静かにして。
言葉通りだと言い聞かせると「まだ待たせられるのね」としょんぼりしていた。
御子柴君:末吉。恋愛:待て、将来吉
こちらも何か騒いでいたが全力でスルー。
俺は今のところノーマルなんだ、卒業でさよならするまで待ってくれ。
俺:凶。恋愛:茨の道です
・・・あれか、女難の相的なやつ。
分からんでもない。現在進行系の自信がある。
雪子一筋だったはずなのになぁ、どうしてこうなった。
それよりも凶なのが気になる。色々、先行きが不安だ・・・。
帰り道。
けらけらと笑い車に突っ込みそうになる御子柴君を支え。
眠いと座り込む橘先輩を背負い。
ふたりを何とか家まで送り届けたらどっと疲れた。
だから何でナチュラルに酔ってんだよ!!
将来、絶対にこいつらと酒を呑まねぇぞ!!
◇
年が明けの授業が開始される。
年度末に向けて勉強の追い込みをする奴は多い。
御子柴君と花栗さんも同様で、クラス維持のため躍起になっていた。
というか・・・泣きつかれた。
「頼む、かなりヤバいんだ! 教えてくれ!」
「お願い! 落ちちゃったら死んじゃう!」
必死の形相で俺に頼んでくるふたり。
うん・・・俺も5月頃はヤバかったからなぁ。
気持ちは分かるんだが・・・自分の勉強で手一杯なんだよ。
俺が困惑していると見兼ねたのか、
「皆で勉強というのはどうでしょう」
と救いの手を差し伸べる九条さん。
それ、たぶん俺、要らないよね?
と思いフェードアウトしようとしたら九条さんにがっちり腕を掴まれていた。
「みんな、です」
にこやかに離してくれない腕。
俺は逃亡を諦めた。
最近、九条さんが先回りすることが多くなってきた気がする。
・・・俺の行動パターン、単純?
そんなわけで自習室に集まって勉強をすることになった。
皆、部活は自主的に休みとなった。今日だけだけど。
何故か自分から巻き込まれた九条さんは自分の勉強。
御子柴君が苦手だという世界語。
花栗さんが苦手だという数学。
俺が得意なやつやん・・・。
詰まったら聞けと指示を出し、俺は科学の勉強を始めた。
「武。ここ、どういう意味だ?」
「ああ、これはよく勘違いするやつだ」
早速質問をしてくる御子柴君。
地頭は良いはずなんだけど、何故か深く考えず突っ走る。
だから引っ掛け問題的なやつに弱くてハマる。
世界語で癖のある表現について丁寧に説明してやる。
「なるほど・・・武の声だとよく頭に入る」
「どういう意味だよ」
「だって先生の声って眠くなるじゃん」
・・・記憶に残りやすい何かってあるとは思うんだけどさ。
御子柴君が落ち着いたようなので自分の勉強を再開。
「あの、武さん。この問題、式の立て方が分からなくて」
「ん~? これが分からねぇってことは・・・級数、分かってる?」
散々、自分で勉強をしているので、俺は理解の段階を意識している。
花栗さんにも同じように階段を踏ませれば良いだけだ。
そんなわけで基礎的な段階から順を追って確認していく。
なるほど分からん、という段階があったので、そこを重点的に説明した。
「・・・分かりました。類似問題を自分で解いてみます」
「うん、頑張って」
「頑張ったら・・・頭、撫でてください」
どういうことだってばよ。
御子柴君と九条さんがピクリ、と反応したぞ。
良いとも嫌とも言えずに俺はスルーすることにした。
しばらく落ち着いた時間が続く。
・・・ふと、九条さんを見た。
ちょっと顔が俯き気味だ。
気になって顔を覗いてみると・・・涙目!?
どうしたの!? と思ったら、電子ペンで机上を指す。
なになに・・・「さみしいです」?
いや・・・ね? 勉強だからね?
そもそも一緒に勉強しなくても良かったのでは・・・。
突っ込んでも仕方ないので、どうして欲しいのか筆談してみる。
- 何かを教えればいいの?
- 分からない問題がありません
そりゃね! 学年トップが何を教えてもらうのさ!
- わたしも頭を撫でてください
いやその話、有効なの・・・?
そもそもご褒美的要素だったような気が。
- 駄目ですか?
ちらっとこちらを見てくる九条さん。
・・・あざとい感じになってきた?
どうすれば俺が言うことを聞くか学習してんな・・・困った。
つーか、この場で要求しないでくれ・・・せめて後で・・・。
- 寮で
答えあぐね、結局、そう書いてしまった。
- がんばれそうです!
とても嬉しそうな表情を浮かべる九条さんを横目に、俺は溜息をついて自分の勉強に戻った。
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