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 夏休み明け、最初の授業。

 俺は御子柴君と花栗さんに夏の集まりに参加できなかったことを謝った。

 ふたりとも中止になった事情を知ると驚き恐縮して気を遣ってくれる。

 まぁ、ね。同級生の親が亡くなったなんて重すぎるから。

 その後、俺が今まで通りであると分かると夏前と同じよう普通に接してくれた。


 

「夏の間に集まれなかったのは残念だったな」


「そうですね。代わりと言ってはなんですが、試験後のお休みに集まるのはどうでしょう?」


「あ、いいですね」



 昼休みの会話。仮設友達4人で集まっていた。

 ・・・もう仮設ではないかな?

 試験明けは弓道の関東州大会も終わっているので九条さんの都合も合う。

 何となく俺を元気付けるためという空気を感じなくもない。

 でも折角、林間学校で仲良くなってきた同士だ。より親睦を深めておきたい。



「じゃ、改めてその日に集まろうか」


「はい、予定しておきます」


「俺も大丈夫だ」


「私もです」



 すんなり決まった。

 まぁこういうのは勢いだ。決められる時に決めれば良い。

 皆、嬉しそうな顔をしている。

 うん、こういうの良いね。

 自然と仲間内の優先度が自分の行動の中で高くなる感じ。

 もう俺もぼっちじゃないんだなとな思えた。



 ◇



 前期試験も終わった。

 例により成績順位が張り出される。

 俺は放課後に順位を見に行った。


 前期試験 順位

 1位 九条 さくら 480点

 2位 京極 武   463点

 ・・・


 よし! 2位は維持できた!

 九条さんの独走は安定。

 ほんと基本スペック高ぇよなぁ、俺の半分くらいしか勉強してねぇと思うんだが。

 追いつけんにしろ置いてかれないようにしねぇと。

 前期は途中でドロップアウトしそうになったからな・・・。

 後期でも躓かないように気を付けよう。



「京極! やっぱりさすがだな!」


「部活前か?」


「おう。前もこのタイミングで会ったから居るかなって思って!」



 にこやかに歯を見せて微笑む御子柴君。

 毎度、爽やかイケメンだ。

 遠巻きに見てる女子がほうっ顔を赤らめてるあたり顔面偏差値は高い。

 でも友達付き合いが続くにつれ俺の中での残念度も増えている。

 何でだろう、猪突のせいか?



「俺もここに載りたいけど・・・クラスが落ちるかどうかの瀬戸際なんだよ!」



 ああ、そうだ。半年に1度、クラス替えがある。

 自分が成績上位だから意識してなかった。

 きっと花栗さんも同じ状況なのかもしれない。

 かじりついてトップクラスに在籍している彼は境界線にいるのか。



「でも御子柴、お前も頑張ったんだろ?」


「そりゃ、京極と同じクラスにいるためにな!」


「だったら大丈夫だろ」



 動機が不純?でも、努力は報われてほしい。

 俺自身が頑張ってるのも、そうでありたいからだ。

 友達ならその辺も応援したい。

 ・・・あれ? よく考えたらこいつを応援しない方が良いのか?



「うん。ありがとう、京極。やっぱり良いやつだな!」


「はは、クラス替えが発表されないと安心はできねぇぞ?」


「げ・・・そうだけど。でもありがとな! よし、部活行ってくる!」


「おう、行ってこい」



 走り去る御子柴君。

 まぁなんだ。観賞用イケメンとして側にいるのも悪くないか。

 よく考えたら男友達ってあいつだけだし。

 彼がクラスを維持できると良いなと思った。



 ◇



 休み中は全く活動出来なかったリア研に来た。

 先輩に連絡が出来なかったから・・・心配してるだろうな。

 ホログラムチャットに常駐してなかったらどうしよう。

 俺は恐る恐るリア研の端末から「世界語マスターへの道」に接続した。

 ルーム名が並ぶ中に・・・あった。

 「京極くん待ち」

 今更ながら、名指し恥ずかしい。

 今度、待ち受けコメントを暗号的な何かに変えてもらおう。



『あ、来た! 久しぶり京極君!』


「先輩久しぶり。ごめん、夏の間、来られなくて」


『もう、心配したよ。去年はあれだけ休みの間にもやったのに、この夏は連絡も無かったから』


「うん。ちょっと実家で問題があってさ」



 俺はかいつまんで状況を説明した。

 さすがの先輩も絶句してしまった。

 やっぱり親の死って威力大きいな。



『・・・そうだったんだ。ご愁傷様です』


「うん。もう落ち着いたからいつも通りで大丈夫だよ」


『そっか。それじゃ夏の間に出来なかったぶん、頑張ろうか』



 いつも通りの世界語のスピーキングとリスニングの練習。

 そのいつも通りが先輩の気遣いだということが分かる。

 この人、残念行動するけど聡いんだよなぁ。

 俺はそれに救われているので感謝しかない。


 約1時間。久しぶりの個別指導が終わる。

 ふと思い出したように先輩が話を振ってきた。



『京極君、あれからAR値のこと、進展あった?』


「いや、ねぇぞ。2年になってから勉強やら、やる事に追われてて余裕がなかったから」


『そう。私の方でもたまに調べてるけど、やっぱりAR値を増やすという情報は無いんだ。ごめんね』


「なんだよ、先輩が謝る事じゃねぇよ」



 わざわざ俺のために調べてくれているのか。

 もう卒業して部活動のエビデンス作りのための具現化研究をする必要も無いのに。



「・・・先輩、ありがとな」


『どうしたの、急に』


「言いたくなっただけ」


『あはは。それじゃ、また次回ね』


「うん、また」



 俺はホログラムチャットを終了した。

 そうだよなぁ・・・。

 先送りにしてるけどAR値問題は1番のネックだ。

 もう中学生活も折り返し地点。

 折角、ここまで勉学を頑張っているのだ、このまま用務員コースになりたく無い。

 後期には具現化研究の再開をしようと心に決めた。



 ◇



 そして皆の休みを合わせた最初の休日。

 空は青く晴れ渡り、陽光も秋分を間近に大人しくなっていた。

 秋晴れが気持ち良く、このままピクニックにでも行きたくなる。

 清々しい。



「早いな、京極」


「お前も早いじゃないか」



 今日は試験明け最初の休日。

 俺達は駅前で待ち合わせをした。



「なかなか格好良いな」


「そうか? へへ、お前に褒めてもらうと照れるな」



 御子柴君はグレーのデニムパンツに白と黒の横縞シャツ。

 黒いジャケットがサラサラ栗毛色の髪にマッチしてモデルのようだ。

 通りがかるお姉様方の視線を奪っているところからもレベルの高さが伺える。

 対して俺は少しダボついたチノパンに黒シャツのみ。

 髪もいつも通りボサボサさせている残念コーデだ。

 まともな私服を持っていない、オタク風学生だ。

 つーか・・・いつもは目立たないから良いんだけど、御子柴君と一緒だとヤバい。

 場違い感が半端ない。

 女性陣が来る前に帰りたくなってきた。



「ヤバい、恥ずい・・・」



 おれはボソリと呟いてしまった。

 御子柴君は俺の、少し恥ずかしさで赤くなったであろう顔を見て。

 にこりと嬉しそうな笑顔を浮かべていた。

 何これ、何かのプレイ?



「あの、お待たせしました」


「時間前だ。待ってないぞ」



 花栗さんがやってきた。

 白のロングスカートに黒のニットセーター。

 うん、オドオド系の雰囲気は無く清楚な感じ。

 御子柴君とセットならデートの彼氏彼女ルックだ。

 やはり俺の場違い感。



「皆さん、遅くなりました!」



 最後に九条さんがやってきた。

 デニムパンツにオレンジのシャツ。

 なんか見覚えがある組み合わせだけど、九条さんの銀髪だと違った印象だ。

 皆集まったな、と互いに確認していたところで、5人目の声がした。



「お待たー!!」


「え!?」


「橘先輩!?」



 そう・・・何故か現れたのは橘先輩。

 デニムパンツにオレンジのシャツ。

 って、九条さんのコーデともろ被り!

 そうだよ、これ、ちょうど1年前に橘先輩が着てたやつだ。

 え、九条さんが真似た?

 なんか並ぶと仲良し姉妹みたいだな。


 見た目の話より、誰これ反応をする御子柴君と花栗さん。



「・・・もしかして、卒業式で答辞を読んだ先輩、ですか?」


「あ、そうそう! よく覚えててくれたね、うれしー!! ね、名前、教えて!」


「は、花栗です・・・」


「花栗さんね? よろしく!」


「は、はい・・・」



 疑問符が橘先輩の勢いに流されまくりの花栗さん。

 御子柴君も誰ですか状態のまま、唖然としている。

 そりゃそうだ、俺だって唖然としてんだもん。



「どうして橘先輩が・・・」



 ぼやきながら、俺は可能性のありそうな九条さんを見る。

 思い当たる節があるのか、両手を口に当て、ごめんなさいと呟いた。



「一昨日、橘先輩とお話した時に週末の予定をお話したのです。まさか、いらっしゃるなんて・・・」


「ん、格好良い後輩君! 君の名前を教えなさい!」


「み、御子柴です」


「御子柴君! よろしくね!」



 遠慮の破片もない橘先輩を見ているうち、以前、会いたい発言をしていたことを思い出した。



「なぁ橘先輩。もしかして、御子柴と花栗さんの顔を見に来た?」


「半分せいかーい!」


「もう半分は?」


「もう! 武君に会いに来たに決まってるじゃん! ついでに九条にも」



 九条さん、ついで!?

 何を当たり前のことを、と憮然とする橘先輩。

 いや当たり前じゃなくてさ・・・。

 なんかもう、この人をコントロールするのは諦めた方が良い気がして来た。

 御子柴君は手綱を握ってあげれば大人しくなる。

 俺からすれば可愛いわんこみたいな扱いだ。

 橘先輩は気紛れ猫・・・いや、虎だな。

 好きな物を見つけたら飛び掛かるポニテの虎だ。

 どっかに虎縞があるんじゃねぇか?



「どうしましょう?」



 九条さんがこっそり俺に振る。



「ん、来ちまったもんは仕方がねぇ・・・皆、この人が一緒でも良いか?」



 ええー、という雰囲気が御子柴と花栗さんに漂う。

 だよね、俺もそう思う。

 誰もすぐに肯定しないところが、暗に否定しているわけで。



「よし決定! 行こう行こう!」


「待て」


「え? 皆、納得したじゃん」


「してねぇからこんな空気なんだろ!」


「だってぇ、私も関係者じゃない?」


「関係者?」


「先輩、関係者って?」



 ふふん、と鼻で笑って皆を見渡す橘先輩。

 


「だってあなた達、四角関係なんでしょ?」


「は?」



 あれか。恋愛相関図を書いた時にできる図形。



「私が入ればお星様☆ ほら綺麗!」


「ええ!?」



 驚いたのは御子柴君。

 よく理解が追いついたな。

 俺は五角形が星にならなくて解答が導き出せなかったよ!



「あの、つまり・・・橘先輩は京極のことを・・・」


「そう! だから会いに来たって言ったじゃない!」


「!」



 御子柴君、完全解答。びっくり顔からちょっと怪訝な顔に。

 そりゃ恋敵(ライバル)が現れればそうもなる。

 お前、いつも猪突なのになんで今日は冴えてるんだよ。



「それに! 君達、親睦を深めるために集まったんでしょ?」


「そうだな」


「まだぎこちないだろうから、先輩がホストをしてあげる」


「ホスト?」


「そそ! ほら、先ずはもっとお互いに知らなくちゃ。カフェへGO!」


「おい、ちょっとちょっと・・・」



 強引に俺の背中を押して進み始める橘先輩。

 すっかり呑まれてしまった御子柴君と花栗さんは戸惑いながら着いてくる。

 九条さんは・・・俺の隣に居た!?



「橘先輩」


「ん? どした?」


「・・・どうしてわたしと同じ格好を」


「えー? 九条と私が同格だって、分かりやすいようにするため」



 なんかよく分からん理由だな。

 そもそも九条さんがこの格好をするのを橘先輩は知っていたのか。

 見た目、弓道姉妹にするためで良いんじゃないのか、もう。

 結局、なぁなぁで引きずられ、俺達は近くの有名カフェに入店することになった。




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