表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ゼロの紋章  作者: 魚介類
第2章 記憶の底
148/244

第68話 アバター2



 まるで宇宙空間のような部屋がある。

 無重力地帯であり、そこでプカプカと浮いているレイズへ、まるで無重力ではなく重力があるかのような動きで骸骨は飛び上がる。


 骸骨はその頭を形成している頭蓋骨をニヤニヤとした形へと変貌させながらも、右手を突き出して、骨だけの指をレイズへと向ける。


 当のレイズは虚な瞳で笑う。

 骸骨から差し出された手を前に、彼は両手を左右へ広げて、まるで自分から胸を突き出すような動きを見せた。




『レイズ!!しっかりしろ!!!』

「…僕は…えへへへ…」



 レイズへ骸骨の指が迫る。



「やっとだよ…やっと…これで僕がプレジデントだ…!」


 骸骨は歓喜が込められた声色でそう呟くが、そんな彼の腕が閃光で掻き消される。



「っ!?」



「そこまでです。アバター」



 骸骨は閃光が放たれた先を見つめる。

 


「邪魔するなよ!!!誰だよー!お前ー!!」



 骸骨がプンプンとした様子で叫ぶ先、そこにはメイド服を纏っている緑髪の美女がいた。

 黒を基調としたメイド服には細部に白いフリルが装飾されている。短いフリフリのスカートから覗く足は、右足が太ももの半分まで覆う長さの黒タイツだが、左足は膝までの短さである黒タイツだ。

 緑髪はポニーテールにして結われている。




『お前…スーツか!?』

「はい、ツカサ様、神龍とトポロジカルリンクしました」


 スーツの姿は、コントロール室の手前にあった部屋で、ガラスの筒の中に入っていた人形の姿そのものであった。衣装と髪型は変わっているが、その神が造形したかのうような整った容姿には見覚えがある。



『トポ…何ちゃらリンク?』

「クラウドからデータを復元したと言えば、ツカサ様の理解を得られますでしょうか」

『お、おう…何となく…でも、その姿は何だ?』


「はい、パワードスーツが破損してしまったため、レイズ様のコードを用いて私の人格データを神竜へ移植しました。一か八かでしたが、こうしてマスターの窮地を救うことが叶ったようですね」



 スーツは無表情で骸骨を見つめる。



「…フルハッチオープン!」



 スーツがそう叫ぶと、彼女の両腕はガシャガシャと音を鳴らしながら変形し、拡張されていく。

 ガトリングガン、バズーカ砲、ミサイルランチャー、ビームキャノン、レールガン、何か怪しげな光を放つ筒、バチバチと雷鳴が轟くレール解放型のキャノンなどなど、様々な武器が寄せ集めになった腕へとカタチを変えていた。



「お覚悟を」

「げげげげ!!」



 スーツが骸骨へ告げると、当の骸骨は慌てるように足と手をバタバタと慌てて動かし始める。


 そんな骸骨へ構うことなく、様々な銃火器を一斉掃射するスーツ

 彼女へツカサの慌てたような声が響く。



『お…おい!レイズはどーすんだ!?』

「あっ」



 ツカサの言葉はもう遅い、すでにレイズを巻き込みそうな勢いでスーツから銃火器の数々が放たれていた。


 大小様々な数多のミサイル

 鞭のようにしなりながら迫るビーム

 秒間10,000発の無数の弾丸

 プラズマを纏った鉄鋼榴弾

 


 そのどれもが、1発でレイズに原型を留めないほどの破壊をもたらす威力はあるだろう。



 

 しかし…



「…じゃじゃーん!!!」



 骸骨がピエロのような道化師の姿へと変貌すると、彼は口を大きく開ける。



「ずぅおぉおおおおおおおおおおお!!!」



 そして、ピエロは大きく息を吸い込むと、スーツの放った攻撃の数々を吸い込み始めた。

 光による攻撃すらも吸い込んでいるようだ。



「…げっぷ!ううんーー!!良い火薬してますねぇ!」


 ピエロはゲップと共に唸り声を響かせつつ、スーツへ向けて親指を立てた。




「…アバター」


 スーツは無表情だが、彼女の声色には戦慄があった。




『おいおい…あいつはジェントルって奴の仲間か』



 ツカサはピエロのような白い影を見つめながら呟いた。



「さーてさて!神龍モデルで、僕に勝てるかなー?勝てるかな〜?」


 ピエロは頭の後ろで両腕を組みながら、左右にステップを踏む。




『実際…どうだ?』

「…奴をこのタイプで倒すのは難しいです」



 ツカサがピエロの言葉が確かかどうかスーツへ尋ねると、彼女は無表情にも頷く。



「…しかし、マスターを助け出すことならば可能です」

『なるほどな…レイズが覚醒すりゃ、オメガビーストだ』

「はい、アバターとはいえ、呼吸するように簡単に倒せるでしょう」



「僕を相手に!こいつを奪還できるかなー???」


「やるだけです」



 スーツはそう言い放つと、スカートの中からクナイを取り出す。

 指に挟む混んで取り出したクナイを忍者のようにピエロへと放つ。



「遅いよ!遅い!」


 ピエロが音速を超えて飛翔するクナイを、指を高速で振り回しながら叩き落とそうとする。



「んんんん!?」


 しかし、クナイはまるで意志を持っているような動きを見せた。スイスイと軌道を変えて、ピエロの指を避けて、彼の体へと突き刺さる。



「わー!すごい!これ!並列演算で動かしてるんだ!?」


 ピエロの体に無数のクナイが続々と放たれる。彼はそのクナイを弾き落とそうとするが、まるで舞う鳥のようにピエロの指を避けながら、クナイはアバターの白い影へ突き刺さっていく。


 やがて、まるでハリネズミのような姿に見えるほど、無数のクナイが突き刺さるピエロ



「あははははははは!!!見て見てー!」


 ピエロは全身にクナイが突き刺さってもなお、笑い声を響かせながら、まるで自分の姿を愉快なものだと見せるようにクルクルと周り始める。



「…起爆します」

「へぇ?」


 スーツがそう告げると、ピエロに突き刺さったままのクナイが光を放ち始める。

 どれだけ素早いピエロであろうとも、避けることの叶わない爆発だ。



「…」


 真っ黒い爆炎が舞い上がる。

 爆発は小さなものではあるが、その爆炎の火力は高く、鉄を一瞬で蒸発させてしまうほどのものであろう。

 バチバチと雷鳴を轟かせながら燃え上がるピエロを他所に、スーツはレイズの元へ素早く駆ける。



「マスター、今、お救いします」

「…」



 レイズへ手を突き出すスーツ

 そんな彼女の腕が閃光で掻き消される。



「っ!?」


 閃光が放たれた先には、雷鳴を轟かせて燃え上がる黒いものがあった。



「さっきのお返しだよ〜!!」



 燃え続ける黒い何かからはピエロの声が響いていた。




『おいおい…あれで生きてんのか』

「倒せるとは思っていませんでしたが、時間稼ぎすらも難しいようですね」



 スーツが見つめる先で、パッと黒い炎が消えると、そこには無傷のピエロの姿があった。




「ふふーん!」


 自慢げに胸を張りながらピエロは笑う。



「ねぇねぇ!何して遊ぶ!!」



『ふざけたやつだ』

「遊びませんよ」


「ええ〜!遊ばないの〜!?じゃぁ…すぐ殺しちゃうよ?」


「っ!?」



 スーツの目の前からピエロの姿が見える。

 ハッとしたスーツは周囲を見渡すが…



「…対象を…ロスト…」

『どうなってやがる』



 まるで瞬間移動で見えたように姿を眩ますピエロ




「…レーダーにも補足できません…しかし…」

『逃げるわけはないよな』

「はい…」



 スーツは周囲を見渡す。

 姿はないが、ツカサも同様だろう。



 逃げるはずがないが、パッと気配の消えたピエロ

 その姿を捉えようと、2人は宇宙空間のような部屋を見渡す。



「…」


 スーツはスッとレイズを見つめと、ボンヤリとした瞳でスーツを見つめている彼と目が合った。



「…ごめん…ね…疑って…」

「っ!?」


 スーツへレイズのそんな声が響く。

 すると、彼女の動きが僅かに止まる。


『馬鹿!!何してんだ!?』

「っ!?」



「じゃじゃーん!!」


 そんなスーツの背後からはピエロが姿を現した。

 アバターは腕を振り上げると、その先にある手刀でスーツの残った腕をも切り飛ばす。



「あははははははは!!騙された〜!!」


 レイズの声でそう叫ぶピエロ

 まるで、スーツの動きを鈍らせたレイズの声が自分のものであったと主張するようだ。



『汚ねぇやつだ…虫唾が走る』

「…バグを突いてきますね」



「あははははははは!!バグ!?バグだってさー!!あははははははは!!人形のくせに生意気なやつだねぇ!!人間みたいな感情を持ちやがって!!」




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ