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ゼロの紋章  作者: 魚介類
第2章 記憶の底
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第64話 認証装置



 レイズの目の前には体育館ぐらいの広さはあろう部屋があった。部屋は円形の作りとなっており、壁から中心に向けて階段状に段差がある作りとなっている。


 部屋の壁に近い位置が1番高い位置であり、部屋の中央が1番低い位置だ。レイズの位置から部屋の中央まで行くには、階段を降りて進むような造りになっている。

 そして、部屋の中央には…



「…人がいる?」



 真っ赤な液体に満たされたのガラスの筒の中には、翠髪の美女が眠るように浮かんでいた。

 その美女の容姿はまるで神が造形したと思えるような美しさである。


 


「…え?」


 その容姿を見たレイズはハッとして、そのまま勢いよく階段を降りていく。



「大丈夫ですか!?」




 レイズは慌てて部屋の中央と向かっていく。

 駆けるというよりも飛び込んでいくと言ったほうが相応しいだろう。


 彼がガラスの筒へたどり着くと同時に、その体をガラスへと打ち付ける。

 しかし、ガラスの筒は微動だにせず、割れる様子もまったくない。




「起きてください!!」



 レイズはそのまま、渾身の力でガラスの表面を何度も叩く。



「今、ここから出しますから!!!」



 デルタビースト程度なら一撃で倒せるほどの力でガラスを叩いているレイズだが、そのガラスには亀裂の一つも入らないでいた。



『…マスター、どうか落ち着いてください』

「落ち着く!?」


『はい、これは人間ではありません』

「何だと!?」


 スーツの言葉にレイズは激昂する。そんなレイズへスーツは説明を続ける。



「スーツ!!!そんな言い方はひどいよ!」


『落ち着いてください。これは純度100%のブルーライト鉱石で造られた人形です』

「…人形!?」

『どうかマスター、冷静に…実際は人間ではないとわかるはずです』


「…」


 レイズはスーツに言われて真っ赤な液体に浸かっている女性を眺める。



「…確かに、どこか人形にも見える」

『はい』



 それに、レイズは目の前の女性がスーツの言葉通り精巧に造られた人形であることを直感する。

 息吹を感じないのだ。



「これは人間じゃないの?」

『正確には生命体でもありません。戦闘用として造られた人形です』

「戦闘用…?」

『はい、そこを見てください』



 スーツの言葉に従って、レイズはガラスの筒を乗せている台座を見つめる。

 そこには文字が書かれていた。



「…神竜…モデル…クェーサ?」


 レイズは台座に書かれている文字を声に出すと、スーツが反応した。



『この施設を守るために製造された最上位モデルです。今は、スタンバイ状態になっているようです』

「最上位モデル?」

『はい、エーリア・グロリアスやアラドラメラクといった古龍と呼ばれるシリーズのハイエンドモデルです』


「は、ハイ、エ?」

『最上位タイプです』


「えっと、エーリアよりも強いってこと?」

『はい、マスター、今の戦力で敵に回せば勝ち目がないでしょう』


「…」

『マスター、それよりも急いでください。2人の容体は刻一刻と悪くなっております』


「…っ!!」



 レイズは急いで周辺を見渡す。

 ここへ来た目的は古代遺跡の防衛レベルを下げるためであり、緊急を要する事態でもあった。



「どこに?どこにあるの!?」



 レイズは防衛レベルを下げるための何かがあるはずだと周囲を見渡すと、そんな彼へスーツが告げる。



『落ち着いてください。マスター、防衛レベルのコントロール室は向こう側の部屋です』



 スーツの言葉に従って、人形の入っているガラスの筒の奥を見つめる。

 すると、レイズ達が入ってきた入り口の反対側に、別の扉があった。


 レイズはその扉へ足を進めていき、階段状になっている段差を昇り、その扉の前で立つ。


 

「…どうやって開けるの?」

『扉に手を置いてください』



 レイズはスーツに言われて扉を見つめる。


『どこでも大丈夫です』

「…うん」


 レイズはスーツの指示通り、扉へスッと手を当てる。



00(レイズ)コード受諾』


「わ!喋った!?」


 レイズは扉から無機質な女性の声が響くと、今だに新鮮な反応を見せていた。



『お帰りなさいませ、バース様』

「バース?」



 扉から声が響き終えると、その扉はレイズの目の前で1人でに開いた。

 聞き慣れない単語ばかりで混乱するレイズだが、彼には急ぎの目的があり、疑問に囚われている暇はないと考えていた。





「…ここは?」


 レイズの目の前には真っ黒な空間があった。

 部屋へ足を踏み入れると、彼の体が不意にふわりと浮き上がり、上下左右の間隔を失う。



「わー!!」

『落ち着いてください』


「こ、これ…何!?」


 

 レイズは浮かび上がるとバタバタと手足を暴れさせる。

 しかし、手足を動かせば動かすほど、彼の体はクルクルと回転しながらあらぬ方向へと動き回る。



『無重力のようです』

「無…無重力!?」


『水の中で泳ぐような感覚で動いてみてください』

「お、泳ぐ?」



 レイズはクロールをしてみると、狙った方向へ進むことができるようになってきた。



「わー!何だか要領が掴めてきたよ!」

『それでは、部屋の奥へと進んでください』


「奥?」



 部屋の中は真っ暗だ。

 床や壁、天井はなく、方向がまったく分からない。


 レイズは周囲をグルグルと見渡すと、入ってきた入り口が彼の目に止まる。



『そうです。入り口を起点としてください』

「あそこから反対側へ向かっていけば良いんだよね?」

『その通りです』



 レイズが部屋の中を泳ぐようにして進んでいくと、やがて彼の目の前には…



「卵?」

『はい、あれが防衛レベルをコントロールできる装置です』



 レイズの目の前には、真っ暗な空間でクッキリと浮かび上がるように目に映る金色の卵があった。




「…これが装置なの?」

『はい、マスター、表面に触れてください』


「こう?」



 レイズは金色の卵を指で突いてみる。

 すると、卵はカシャカシャと音を立てながら姿を変えていく。

 三角形、四角形、五角形、六角形となり、また卵の形へ戻り、再び三角形…とその体積を膨らませながら、カシャカシャと形が変わっていく。


 やがて、長方形へ形を変えると、その大きさは100インチのテレビぐらいにはなっていた。

 かつて卵だったものは、その姿になると、形と体積を変えるのをやめる。



「これ…?」

『はい、操作可能モードになりました』



 スーツの言葉通り、長方形のパネルのような姿になった卵であったものの表面には、いくつものボタンが並んでいた。




『そのスイッチで防衛レベルを調整できます』



 スーツの言葉にレイズは長方形のパネルを見つめる。

 さきのエレベーターのように操作ができそうな印象であった。


 

「どれを押せばいい?」

『右下のボタンを押してください』

「うん!」


 レイズはスーツに言われた右下のボタンを押す。

 すると



「認証?」



 レイズの目の前には、数字が0〜9まで並んでいるボタン

 そして、認証と書かれている文字が長方形のパネルに浮かんでいた。




『24641232と入力してください』

「え?…こう?」


 レイズはスーツから言われた数字をゆっくりと打ち込んでいく。

 すると、長方形のパネルには「認証成功」と文字が浮かんでいた。


 すぐにパネルの表示はボタンが並んでいるものへと切り替わる。



『次は、上三角と下三角のボタンが並んでいる箇所を見てください。その下三角のボタンを3回押してください』


 スーツの指示に従ってレイズは下三角のボタンへ手を伸ばそうとする。





「待って!!」


「っ!?」



 そんなレイズの背後から女性の声が響く。

 焦燥感のある声にびくりと肩を震わせながらレイズが背後を振り返ると…



「…何だ…あれ!?」



 レイズの視線の先には、皮も肉も臓器も血もない、ただの骨だけが人間のシルエットを象っている存在がいた。

 奇巌城の古代遺跡で見たビーストでも人でもないナニカであった。




「そのボタンを押してはだめ!!」



 その骸骨は慌てた様子でレイズへ叫ぶ。




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