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ゼロの紋章  作者: 魚介類
第2章 記憶の底
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第57話 飛行機



 レイズ達は「24」と書かれた建物の中にいる。

 空が自然と暗くなると、建物の中にはパッと明かりが自動で灯っていた。そのため、光の魔法を使わずとも、お店の中を散策することは簡単だ。


 そして、レイズは思い出していた。

 お店の奥の方にパンなどの食材が並んでいたが、手間に本や資料などが並んでいたことを。

 もしかすると本から手がかりが得られるかと考えたレイズにレジーナが同意し、マインが何となくでついてきていた。



「…わー!これ!面白いー!!」


 マインは本を読みながら笑い転げていた。

 そんな無邪気なマインを横目に、レイズとレジーナは真剣な表情で本を眺めている。


 紅葉が綺麗に咲く滝の辺りに、ポツリと趣のある建物が描かれている。精巧な絵であり、まるで現実を切り取ったかのようなほどだ。

 しかし、問題は、そこにびっしりと書かれている文字のほうだろうか。



「旅行…?」

「うん、古代人達の旅行の文化を本にしたものみたいだよー」

「エウロパ…温泉?」

「うん…もっと遠い場所にある街だね」


「…日帰り温泉特集ってことは1日で行って戻って来れるってことだよね」

「うん…えっと…移動手段…移動手段…」


 レジーナはブツブツと言いながら文字の書かれているところを物凄い速さで目を動かして読み進めていた。ここは彼女へ任せるのが得策だろうと、レイズは黙り込むことにした。



「あ!あったよー!」

「っ!?」


「ここ…空港ってところから…飛行機!!!すごい!飛行機なんて造ってるんだ!!」


 レジーナははしゃぎ回っていた。

 満面の笑顔の裏には好奇心が溢れ出そうになっていることが分かる。



「飛行機?」

「うん!ドワーフが一生懸命に開発しているんだけどね!!全然成功しないの!」

「…どんなものなんですか?」


「えっと!空を飛ぶ!!船!!」

「船が…空を…」


「すごいの!古代遺跡の船は、何万人も乗せてビューンって飛べるみたい!!」

「でも、僕の風魔法で空を飛んでも、どれぐらいかかるか分からない距離ですよ?」


「レイズっちの魔法よりも、すごーく!!すごーく!!速く飛べるんだよ!!」

「…何万人も一緒に乗せて…そんな速度で?」

「うん!!1時間もかからないみたいだよー!」

「っ!?」


 レイズは驚きを隠せない。

 その「飛行機」と呼ばれるものであれば、管理センターまで1時間もかからないようだ。

 つまり、1時間もあれば、世界を1周半はできるだろう速度と言える。


 どれだけの速度なのか、レイズには想像の絶するものであった。




「すごいよねー!!」

「…そんなものが存在するんですね」


 レイズは店のガラスの外から街並みを見つめる。確かに、これだけ広大な街の中で生活するのであれば、それぐらいの技術力は必要なのかもしれない。

 レジーナの突拍子もない話にも、どこか説得力のようなものをレイズは感じていた。



「…空港を案内板で探せば良いんですね?」

「ねね!」

「はい?」


「これ!」


 レジーナはお店の奥を指さす。そこには小型の案内板があった。



「近くの空港を調べてみようよ!」

「そうですね!」


 レジーナはもはや慣れた手付きで案内板のタッチパネルを操作する。

 文字を入力するパネルで「くうこう」と入力を終えると、案内板には「検索中」と表示されていた。



「あ!結構、近くにありそうだよー!」

「そうですね…歩いて…30分ぐらいですね」


「どうするー?」

「うーん、もう夜ですしね…」


「すー…すー…」



 レイズとレジーナが腕を組んで考えていると、マインの寝息が響いていた。



「今日は休んで、明日にしましょうか」

「そうだねー!」



ーーーーーー



 レイズ達の目の前には、白く広大な敷地が広がっていた。更地に見えるような広大な広場の中にポツリと3階建ての建物が見える。敷地が広すぎるせいで建物が小さく見えるのだが、ちょっとした城よりも十分に広い建物であった。敷地が広大すぎるため、遠目に見ると小さく見えてしまうようだ。




「わー!すごいー!!」

「こら!マインちゃん!!」

「ぶー!!」


 マインは自動で動く床の上で逆走してはしゃいでいた。何となく、本能的にレイズはそんなマインを持ち上げる。彼に掲げられて、マインは不服そうに頬を膨らませていた。



「ぶー!」



 自動で動く床はそこそこ長い廊下を延々と続いている。10分も乗っていると終点が見えてくる。



「よいしょーー!!」


 マインは両足でぴょんと飛ぶと、動く床の上から普通の床の上に降り立つ。そして、楽しそうに駆け出し始めた。



「わー!」

「楽しそうだねー!」


「はい…こーら!マインちゃん!走り過ぎると危ないよー!」



 レイズはマインの背中に声をかけると、マインは素直にピタリと止まるが、頬をリスのように膨らませて不満気にしていた。そんな彼女の頬を指で突くと、マインは口から息をスーッと吐き出す。



「ぶー!ぶー!」

「ほーら!」


「わー!」


 レイズはマインを肩へと乗せる。視界が一気に高くなったことで、マインは不満気な声から楽しそうな声が出るようになっていた。きっと、レイズには見えないが、楽しそうな笑顔を浮かべてくれていることだろう。



「お店みたいなのがいっぱい並んでるねー!」

「はい…どれも白くて何が何だかわかりませんけど」


「空港!すごいねー!すごい!街が建物になったみたいー!」

「うん…古代遺跡ってすごいねー!」

「うん!!」



 レイズ達が空港の中を進むと「ロビー」と書かれている広場へと出る。

 右手にはカウンターがズラリと奥まで続いており、左手には椅子がズラリと並んでおり、案内板みたいなものが点在して置かれていた。



「こっちが待合席だから…こっちが搭乗口だね」


 レジーナはカウンターの奥へ「搭乗口」と言いながら指をさす。つまり、次の進路はカウンターの奥のようだ。

 レイズ達がカウンターの奥を進むと、四角い銀色の枠がズラリと並ぶ部屋へと出る。



「あの枠の向こう側へ進むと搭乗口があるみたいだよー」

「はい!」

「はーい!」


 レジーナに先導されてレイズ達は進んでいく。

 レジーナがゲートを通る。

 マインがゲートを通る。


 最後にレイズがゲートを通ろうとすると…



「っ!?」

「わわ!!」


「何の音!?」



 レイズがゲートを通ると、一瞬だけ甲高い音が響く。

 そして、ゲートの傍にある機械が光り始めた。



『パワードスーツの着用を確認しました』


「声?」

「誰かいるのー!?」



 レイズの周囲には赤い線が短い間隔で降りてくる。



「…嫌な予感がします」



 レイズは険しい顔でそう呟くと、レジーナとマインへ叫ぶ。



「走りましょう!!!」

「え?」

「良いから!!マインちゃんはまた乗って!」

「わぁーー!!」



 レイズは真っ赤な線を強引に通り過ぎると、身体中に熱さを感じる。大したダメージではないが、パワードスーツを着ていなければ大怪我をしていただろう。

 マインを再び肩へ乗せると、レジーナと一緒にレイズは搭乗口へと猛ダッシュする。




『…違法改造されたパワードスーツであることを確認…警察へ通報します』

『対象が逃走しました。警戒レベルを最大にします』


『お客様に申し上げます。現在、警戒レベルを最大にしております。繰り返します。現在、警戒レベルを最大にしております。搭乗口におられますお客様は係員の指示に従ってください。繰り返します。現在、警戒レベルを最大にしております。搭乗口におられますお客様は係員の指示に従ってください…』



「レイズっち何をしたのー!?」

「きっと!!この!!パワードスーツが危険だと思われているみたいです!」


「えーーー!!そっか!」

「レジーナさん!!」



「っ!?」



 レイズ達の目の前で搭乗口にシャッターのようなものが降りてくる。



「突き破りますね!!!マインちゃんを!」

「あ!わわ!!任せてー!!」


 レイズからマインを受け取ったレジーナ

 そして、レイズは、シャッターへ向かってライダーキックを放つ。



轟音が響くと同時に、搭乗口が爆ぜ、先へと進めるようになる。




「行きましょう!!」

「うん!!」



 レイズ達は搭乗口から細長い廊下を進み、奥の部屋へと入る。



「行き止まり?」

「わー!狭い部屋!!」



 レイズ達が入った部屋は縦に細長いようだ。

 そこにはびっしりと椅子が並んでおり、運搬される奴隷が座る部屋のようにも見えた。そして、丸い窓の外には広大な白い景色が覗ける。

 白い景色の外と一緒に、部屋から生えているであろう翼のようなものが見えた。



「わー!すごい!!」



 最初に、窓の外にある翼に気付いたのはマインだ。



「マインちゃん!!」


 椅子の間と間を進んで、丸い窓から外を眺めているマインをスッと持ち上げるレイズ

 そんな自分を抱きかかえているレイズへマインは言う。



「これ!すごいよー!このお部屋に翼があるのー!」

「え?…翼!?」


 マインの言葉を聞いたレジーナも加わる。



「…もしかして、もう飛行機の中?」

「そうなんですか?」


「…多分、そうだよ!急いで操縦席を探さないと!」

「今、思ったんですけど!!」


「どうしたのー!?」

「レジーナさんは操縦とかできるんですか!?」



「…あっ!」





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