表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
140/221

チョコレートマカロンとダークドラゴンの報復

 今日は休日を利用して私はとあるスイーツをリベンジする。その名はマカロン。

 実は昨日作ったのだけど、ひび割れとかが多くて見た目が不格好だった。

 それでも味は美味しかったから問題はないし、新しい風魔法であるトルネードも覚えたから満足していいのかもしれない。

 レイヤもプニーも美味しいって言ってくれたんだけど、やっぱり悔しい気持ちが少し残るのでもう一度挑戦しようと思ったわけである。

 元々マカロンは難易度が高いので失敗するのは珍しくないのだとザーネさんも言っていた。だからまた失敗する可能性もあるのだろうけど、そのときは仕方ないと諦めてまた次の機会にリベンジをしよう。


 作るのはチョコレートマカロン。材料は卵白、粉糖、ココア、アーモンドパウダー、チョコレート、レスペクトのミルク。

 レスペクトのミルクこと生クリームを鍋で温めてからチョコレートを割って入れ、ヘラで溶けるまでしっかり混ぜる。

 今回はビターチョコレート。アドからどっさり貰ったチョコレートがまだまだ残ってるので足りなくなる心配は全然ない。

 溶けたチョコレートをボウルに移し、一旦冷ましてから防乾燥シートをかけて冷蔵庫にいれておく。


 砂糖を粉糖にするため、アーモンドをアーモンドパウダーにするためプニーのブレンダーの力を借りて両方ともきめ細かくしてもらい、ココアと共にふるいにかける。

 別のボウルには卵白を入れて泡立てる。砂糖を複数回に分けて入れて、つんと角が立つくらいに泡立てたらメレンゲの完成。

 ここからがちょっと難しいんだけど、メレンゲのボウルに粉類を加えて切るように混ぜる。混ぜ合わさったらボウルの底に押し付けるように混ぜて、中心に集めたらまた押し付けて混ぜる。

 この混ぜ方で仕上がりが変わるので気を抜けない。

 絞り袋に詰めて耐熱ペーパーシートを敷いた天板に丸く絞っていく。

 生地の表面が乾くまで置き、乾いたら予熱で温めた石窯オーブンで焼く。ひとまずこれでほとんどの工程は終わりなので焼き上がったらチョコレートクリームを挟むだけ。


「あとは焼き上がりを待つだけだよ」

『昨日のマカロンだよね? ね?』

「うん。同じものでごめんね?」

『僕嬉しーよ! よ! イルの作ったものどれも好き! き! 昨日と同じのも好き! き!』

「プニー……優しいね、ありがとうっ」


 全く気にしてないと言うように身体をびよんびよんと伸ばすプニーに感動してしまった私は嬉しさのあまり沢山プニーを撫で回した。

 なんて優しくいい子なのだろう。こんな可愛いスライムはどこにもいないはず。


 存分に撫でて撫でて撫でまくるとプニーも喜んでくれたので満足し、焼き上がるまで洗い物でもしようとシンク前に立ったそのとき、ぞわっと突然悪寒が走った。


「っ!」


 形容しがたい恐怖。その正体が何かわからないけど嫌な予感がする。ただの気のせいならいいのになんでこんなに汗がドバッと出てくるんだろう。

 恐怖のあまり心臓が早鐘を打つ。早くここから逃げろと言わんばかりに。

 もしかして……フェーデが来たとか!?

 悪寒の正体に心当たりがなくもないので一気に困惑する。焦り始める私の頭に金属音が鳴った。テレパシーを繋ぐ合図である。


(イル、すぐに外に出ろ)

(レ、レスペクトっ!? 何っ? どうしたのっ!?)

(潰されたくなかったら早く出ろ!)


 何っ? 何なの!? レスペクトが声を荒らげるなんて滅多にない上に凄く不穏なんだけど!?

 あわあわしたがら「わ、わかった!」と返事してすぐのことだった。

 身体に重く響くような地響きにも似た咆哮が外から聞こえてきた。思わず身体が震え上がる。

 大型の魔物の哮り立つその鳴き声に部屋にいたレイヤも何事かと慌てた表情で飛び出した。


「イル! 今のはっ!?」

「わ、わからないっ。ただレスペクトが早く外に出ろって!」

『早く出よ! よ!』


 一体何が起こっているのか。訳がわからないけど、レスペクトに言われた通りみんなで外に出てみると、一歩出た先には大きな影が出来ていた。

 曇っていてもこんなに暗くならないはずなのに。まるで何かに空を覆われたような……。

 そう思って頭上を見上げると、ひっ、と恐怖に声が漏れる。


「な、んだよ、あれはっ」


 レイヤもかなり驚いているようだ。それもそのはず、上空を羽ばたきながら唸り声を上げる黒いドラゴンがこちらを見下ろしていたのだ。

 その身体はレスペクトと比べ物にならないほど大きく、鋭い爪と牙を持ち、黄金色の右目だけがこちらに向けて鋭く光っていた。左目は古傷のようで開くことが出来ない隻眼のドラゴンだ。


「ド、ドラゴン……!」


 しかも体色からして竜種の中でも最強のダークドラゴン!


『……面倒な相手が来たな』


 小屋から出てこちらに歩み寄るレスペクトがぼそっと呟くが、あのレスペクトでさえ面倒と言わせるのだからこれは相当まずいのでは……?

 実物を見たことがないけどこのドラゴンは大型に分類されるとはっきり言える。大型ドラゴンはたまに冒険者達を募って討伐隊を組み、退治をするのだけどそれと同等の案件で間違いない。

 つまり、私達では荷が重い!!


「なんでダークドラゴンがここに……?」


 こんな見た目からして数々の死闘をくぐり抜けた猛者のようなドラゴンがなぜ町外れの私の家の上空に漂うのか。

 背筋もいまだにぞわぞわする。きっとあのドラゴンが闘争心を剥き出しにしているからだろう。いつ襲いかかっても不思議じゃないような緊迫した空気が流れる。


『お主が儂の同胞を虐めた奴じゃな?』

「!」

「話せる竜かっ」


 レイヤにもドラゴンの言葉が理解出来るということはプニーと同じ対話スキル持ちだ。会話が出来るのはありがたいけど、話し合いが出来るような雰囲気ではない。

 それにダークドラゴンの言うことに心当たりしかないのだ。


 リリーフ達と一緒に精霊花を摘んで横取りをしたミニダークドラゴンから奪われた物を取り返したことはまだ記憶に新しい。しかし、虐めたなんて語弊である。


「い、虐めたことはありません! 私は奪われた物を取り返しただけなんですから!」

『下等種族が取り返したじゃと? あれは儂らに必要な物じゃったのに生意気な! 死んで詫びよ!』


 あぁ、やっぱり話し合いですまない! なんでいっつもこんな強敵ばっかり来るの!? 全部運の数値のせい!?

 そんな泣き言を口にしたい気持ちをぐっと堪えてたらダークドラゴンは大きく口を開けてきた。何か撃ち込んでくるつもりだ。

 レイヤがいち早く剣を抜くので私も慌てて魔法で対抗しようとする。おそらくミニドラゴンの攻撃とは全く違う威力を発揮するだろう。

 勝てるかどうかなんてわからないけど、逃げるわけにはいかない。ここが町外れとはいえ、スタービレの住民がすぐそこで生活しているんだ。逃げたら町の人も巻き込まれかねない。


『お前達下がっていろ!』


 突然、レスペクトが盾になるかのように私達の前に立った。すぐに彼は強いプレッシャーをダークドラゴンへと放ち、羽ばたいていた彼を地に落とす。大きな身体ゆえにその音さえも地響きかと思うくらいの衝撃。

 精神的にも響くその重圧はやはりこちらにも多かれ少なかれ影響を受けるので動けない。

 だが、ダークドラゴンの方も同じだろう。いや、むしろ相手に向けられているから私達より受ける圧力が強いはず。だからダークドラゴンの大きく開いていた口を閉じさせることに成功した。

 ……しかし、レスペクトが放つプレッシャーは今までにないくらい力を込めてるような気がする。だってこちらへの余波もかなり強いのだ。まさかそこまでしなければならないほどの相手だというの?


「っ……アプレイ、ザル」


 一体あのダークドラゴンはどのくらい強敵なのか。プレッシャーに耐えながらも私はドラゴンに向けて鑑定魔法をかけてみた。

 目に映る文字は『ダークドラゴン Lv.89』という非情な数字だった。


『人に飼い慣らされた獣が、儂の邪魔をするでない!!』


 圧力に押されていたはずのダークドラゴンが再び咆哮を上げると重圧に逆らうよう地に伏せた身体を起こす。

 私達へ威嚇した相手は大きな尻尾を動かしてレスペクトを弾き飛ばした。しなる鞭のように勢いよく。

 寝床となる小屋へ吹き飛ばされたレスペクトは大きな音と共に小屋の中へと姿を消す。出入口が半壊となるほどの威力だったため私は彼の身を案じて叫んだ。


「レスペクト!!」


 早く駆けつけてヒールをかけなければ! そう思うもダークドラゴンに背を向けるのはあまりにも危険な行為。

 あのレスペクトでさえも相手出来ないのに一体どうしたら……。

 焦る私を嘲笑うかのようにまたドラゴンの口が開いた。相手の魔力が口へと集まっているような流れを感じたのでこのままだと魔法を発動されてしまう。


『ダークボール!』

「!」


 急いで防御壁魔法を使用するつもりだったが、肩に乗っていたプニーが大声を出した。


『シールド!!』


 プニーが私とレイヤを包むほどのドーム型のシールドを張ってくれた。その瞬間、ドラゴンの口から漆黒の球体が何十個もこちら目掛けて撃ち出し、全てシールドにぶつかっては小さな爆発を起こした。

 間一髪、シールドのおかげで防ぐことは出来たが、絶えずにダークボールとやらを撃ち続けるドラゴンにより、シールドは耐えきれずヒビが入る。


「くそっ! まずいぞ、これは!」

『割れちゃう! う!』

「だったら今度は私があの魔法を跳ね返すよ! プニー、シールドを解いてっ」

『ダメ! メ! 危ない! い!』

「このままじゃいつ割れるかわからないからタイミングが掴めなくなるの。お願い、プニー!」


 このままではシールドが割れるのをただ待つだけになってしまう。それだと魔法発動のタイミングも取れないので危ないことに変わりない。だから魔法を解いてくれた方がこっちもすぐに対応出来るのだ。

 プニーは不安げだったが、小さな声で『わかった……た……』と返事をしてくれた。


『シールド解除! じょ!』


 プニーがそう言葉にすると、ドーム状のシールドは一瞬にして消え去った。その間も絶え間なくダークボールの発動は続く。


「リフレクション!」


 すぐさま反射魔法を使用する。目の前には大きく薄い鏡のようなものが現れ、撃ち込まれる黒い球を全て鏡が飲み込んでいく。

 飲み込んだダークボールはその数だけ使用者であるダークドラゴンへと返される。


『小賢しいのぅ!』


 そっくりそのまま返される闇魔法にさすがのダークドラゴンも攻撃の手を止めざるを得なかった。

 そして返したダークボールを大きな翼で全て弾いて消滅させたので相手は無傷。あれを食らうとどうなるかわからないけどダークドラゴンには効かないのかな。

 いや、考えている暇はない。また向こうが攻撃を仕掛ける前にこちらから何か魔法を撃ち込まないと!


「あれ? レ、レイヤ!?」


 ふと、隣にいたレイヤがいないことに気づく。一体どこに!? そう思ったが、彼はドラゴンに向かって走り出していた。

 もしかして次の攻撃を放つ隙に一太刀を浴びせるつもりなの? いくらなんでも無茶が過ぎる。だってどう見ても外皮が硬そうなのに、傷を負わせることが出来るのかさえもわからないんだよっ。

 しかし呼び止める暇なんてないし、そんな隙を作ってはいけない。それならばと私はレイヤの援護に回ることを決めた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ