表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/5

 1章ー3 街まで<1>

 転生をした翌日。俺たちはまずは近くの街を目指すことにして、街まで続く道を探して森の中を歩いていた。

 しばらく歩いていると二方向へ分かれ道が現れた。


「エイルさまどちらにしますか?」

「その、私はこういうことに運がないのでユウトさんが決めてください。それと敬語は禁止ですよ」

「そうでし……そうだったな」


 そういえば忘れていた。昨夜の談笑のとき俺は彼女に敬語を禁止されたんだった。

 理由としてこの世界では俺と彼女はできることに差異がない、つまり立場がほとんど対等だからということ。もしほかの人と会ったときに、「さま」と敬称していたら怪しまれる可能性があることだった。

 よってお互いの呼び方は、「エイル」「ユウトさん」となった。女神さまを呼び捨てなんて罰が当たらないか心配だが、彼女自身が望んでいるのだし大丈夫だろう。

俺が彼女のことを呼び捨てなら、俺のことも呼び捨てにと言ったのだが、敬語で話すことも含めてそこは譲れないとのことだった。

さてどちらへ行くのが正解だろうか。俺自身も前世では運がなかった部類だからこういうもので当たるきはしない。いや、そういえばこの世界にはステータスの一つに運気ラックなるものが存在していた。となると前世での運は関係ないかもしれない。

間違っていたら戻ってきたらいいだけではあるが、一発で当たるに越したことはない。

ふと顔を上げてみると右に見える道の木の上に、昨日見かけたリスのような生物がいた。その目はこちらを見つめてきている。


「あ、あれは刃リスですね。どうしたのでしょうか?」


 俺がその生物、刃リスを見ていると目線を追ってか、エイルもその姿を見止めて可愛らしく首をかしげる。リスというのはあっていたが刃リスという名前か。その口から覗ける鋭い牙が由来だろう。

 二人でじっと見ているとしびれを切らしたのか、刃リスは右の道を木々を伝っていってしまう。


「わからないけど、追ってみよう」

「そうですね。なにか知っているかもしれません」


 俺にはその目がこっちへ来いと言っているように見えた。賛同してくれたエイルとともにその姿を小走り気味に追う。

 少し行くとまた刃リスを見つけた。道の先を見てみると何やらこれまでの道より開けた空間が確認できる。どうやら追ってきたのは正解だったようだ。


「刃リスさんありがとうございます!」


 エイルも開けた空間を視認する。そして木の上にいるリスへ向かって満面の笑みで礼をした。その笑顔にはふいにドキッとしてしまう。


「キュイキュイ」


 あいつも笑顔にやられたのか、エイルの感謝に応えるように鳴くと、もと来た道を戻っていった。


「よし進んでみるか」


 道を進んでいくと小さめではあるが円形の広場に出た。見渡してみると一角に一つの馬車があった。聞き耳を立ててみると話し声が聞こえる。


「近づいてみませんか?」

「ああ、近くの街までの道もわかるかもしれないしな」


 近づいていくと話しているのは二人だけなことがわかった。声から察するに女の子と男性のようだ。

 エイルと目線で会話して俺が話しかけることになる。そういえば人見知りだったか。その割には俺には会ったばかりなのに普通に話してくれている。後で理由を聞いてみよう。


「すみません。少しお伺いしたいことがあるのですがよろしいでしょうか」

「どうしました?」


 俺が話しかけると話し声が止んだ。そして少ししてから荷台の暖簾から少女が顔をのぞかせて言った。


「俺たちちょっと道に迷ってしまって、近くの街へ行きたいんですが道を教えていただきたくて」

「それは構いませんが俺たちですか? あなたお一人だけしか見当たりませんが」

「え?」


 後ろへ振り向いてみるとエイルの姿がなくなっていた。どこへ消えたんだ? 俺が目を離したのはほんの数秒程度だし、足音も聞こえなかったはず。幸い心配するに及ばない場所に彼女はいた。


「ゴトッ」


 馬車の後方からどこかにぶつけた音がした。警戒しながら近づいてみるとそこにはエイルの姿があった。


「どうしてこんなところに?」

「あ、あの少しですねかくれんぼでもしようかと……」


どうやら俺が思っていたよりも人見知りは重症なのかもしれない。尚更なぜ俺はすぐに打ち解けてくれたのか気になってくる。


「そちらの方がお兄さんのお仲間さんですか?」

「ええそうです」

「何かあったか?」


 俺の後を追ってくるように少女がやってきた。彼女の後ろには身長の高めな男性が立っている。先ほどまで彼女と話していた人だろう。印象は商売人といったところか。


「すみません。俺の仲間が少しぶつかってしまったみたいで」

「そうか。どれどれ」


 俺の指さした場所を異常がないか確認するように身をかがめて近づく。エイルはというと、男性の背の高さに気圧されたことも相まってさささと俺の後ろへ隠れる。


「ほんとに少し当たっただけみたいだな。見たところ目立った跡はないようだし」

「外傷はないとはいえぶつかってしまいすみませんでした」


 俺は男性へ向かって頭を下げる。少し後ろではエイルも頭を下げている気配がする。


「そんな気にすんなって。頭を上げてくれ。多少ぶつかるぐらいよくあることだ」

 ニッと笑顔を浮かべて気前よく許してくれた。内心胸をなでおろす。


「お父さんはね見た目は少し怖いかもしれないけど、本当はとっても優しいんだよ」

「初対面の人にそんなことを言うんじゃない。ははは、怖がらせてしまったのならすまないな」

「いえ、そんなことは」


 確か高身長なことに少し圧倒されたが特別怖がったということはなかった。後ろの彼女は違うかもしれないが。


「そういやさっき街へ行きたいって話していたか?」

「はい。道に迷ってしまって」


 さっき少女にした説明と同じことを言う。


「だったら俺たちと一緒に来るか? これから街に向かう予定だから」


 おもはぬ提案を持ちかけられる。願ったり叶ったりの状況だ。


「そうですね。えーと」

「ダギルだ。こっちは娘のミイナ」

「よろしくお願いしますね!」

「ダギルさんたちさえよろしければお言葉に甘えさせていただきます」

「よし。そうと決まれば早速出発するか!」


 そうして刃リスに連れられた先にいた明るい親子とともに、馬車で街へ向かうことになった。


お久しぶりです。

先週まではテスト期間で多少投稿できていたのですが、テスト期間はすぎ部活が再開したので投稿頻度は低くなってしまいますがご了承ください。運動部なのに小説書いてる人ってわりと少ないのでは?とおもう今日この頃であります(笑)

よかったらブックマーク等よろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ