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三人目、二話

『ご理解いただけましたか? 』


「あ? うん。で、俺に何しろと? 」


 まるで道化のようだな。特に楽しくもないのにどうしてそんなにはしゃいでいるような声が出せるんだ、こいつは。


『こいつじゃなくてコウですよ。そんなに睨まないでください。照れちゃいますよ』


 あー、起きたばっかりだけど、やっぱり眠いな。もう少し寝たい。何か言ってるみたいだが、子供の悪ノリだと思った方がいいな。


『あのー、頭がはっきりしてきたところで申し訳ないけど、話聞いてる? 』


「悪いが、まだ脳は寝てる。用件がないならもう少し寝かせてくれないか……? ふぁあああああああああ」


 眠いのな。とりあえず。これで居眠り運転をしたことがないなんて、何かに守られてるとしか思えないな。


『用件ならあります。私が珍しく怒っていないうちに言いたいから、顔を殴ってでも無理矢理に起きてもらえませんか? てか、起きろ』


 いきなり怖くなってないか? この子供。もう十分怒っている気もするけど、これ以上怒らせるのも面倒だ。起きるか。


『起きたようですね』


「いちいち心を読むように言うのやめてくれ。落ち着いて何かを思うこともできない」


『心なんて読んでない。蔵本 祥真さん。貴方は顔に思っていることを出しすぎです。だいたい、そのせいであんな事件に貴方まで巻き込まれてるんでしょうに! 』


 あ、そうだったな。俺、犯罪者だ。そういえば、あのときも言われたな。嫌だろうが、お前なら逆に足がつかないだろ? って。知らない人だったし、確かに足はつかないんだろうな。


『だから、考えてることが顔にもろ出てるって。もういい? 指令を話すから』


 ああ、いいぞ。


 試しに顔だけで同意を示してみる。本当に伝わるかはわからないが、どこにカメラがあってもいいように顔をキョロキョロとさせてそれをコウに見せた。


『話さなくていいとは誰もいってないけど。ま、良いならいいよ』


「あ、やっぱり伝わるのか」


『あー、指令言うよ』


 どうぞ。


 話さなくても思ってることが伝わるなんて結構楽しい。久しぶりに楽しいことを見つけた気分だ。


『床に伏せて黙ってくれないかな? 顔がうるさくて集中できないので』


 また怒らせたかな。ガサッていう音はしたし、また原稿でも読むつもりらしいけど、長引かせても怒らせるだけだしな。仕方がないから俺は指示に従うことにした。その指令っていうのがなんなのかわからなきゃどうすれば良いのかわからねぇし。


 あ、そういえば、あいつらを許せないのは俺もだぞ。という顔でもカメラに向けとくか。


 できるだけ満面の笑みをキョロキョロしながら振り撒いて、その顔のまま俺は伏せた。


 ひんやりしてて気持ちがいいな。

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