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二人目、一話

私は目を覚ました。薄暗くて、狭くて、肌寒いところで目を覚ました。


『おはようございます。木之内(きのうち) (あい)さん』


上から声が聞こえてきた。まだ目がなれてないし、起きたばっかりで頭もボーッとする。それでも一つだけわかる。


「あんた誰? 」


半分寝ぼけたような表情と声で聞いた。すぐに返事は返ってきた。


『寝起きは弱い方ですか。まあ、関係ありませんよね。私は……コウと名乗っているものです。それよりも、もう少しは危機感をもってほしいのですが』


その声は幼い少女の声だった。よくわからないけれど、とりあえず目を擦って周りを見てみた。


「あれ……? ここどこ? 何これ、木? 」


木の感覚が手に触れた。窓もなく、狭い箱のような場所な気がした。


『ピンポン! そこは木製の箱です。他に質問、ありますか? 』


変に機嫌がいい声が聞こえた。私が彼女に質問するならば、一つくらいしかないでしょうね。


「私はここから出られるの? 」


『あら、意外と冷静なんですね、この状況で。尊敬できますわ~』


コウ……だったかしら? 私を煽っているつもりなのかな? 考えが子供っぽい。


「いいから、質問に答えてくれる? ここ寒いから」


『出られますよ。課題にクリア出来れば、ですが』


悪戯っぽい笑い声を含んだ声でコウが答えた。どうせまだ子供のくせに、私をこんなところに閉じ込めるなんてね。


天井にはスピーカーと……空気穴らしき穴がある。その穴から微妙に光が入ってきているからこの空間は真っ暗じゃないんだと思う。少しずつだけど目がなれてきた。出入り口が……無い? いったいこの空間にどうやって私を入れたの?


「……課題って? 」


『その言葉が聞きたかった! じゃあ、課題を読ませていただけます』


……テンションが高いのね。本当に子供。


「その前に、私をどうやってこんなところに入れたのよ。それを教えなさい」


『上から目線ですねー。まあ、簡単ですよ。出入り口がないから聞いたんですよね? 出入り口があるんですよ。そこからあなたをそこに入れました』


出入り口があるの? まだ暗くて見えていないだけかもしれないわね。あとで見てみましょう。


「わかったわ。課題を読んでもらえる? 」


『はいはい。指令、今から十分以内に死んでください』


「……は? 」


え? 死んでくださいって言ったの、このコウって人。


『やっぱり、そういう反応するよね。あ、因みに、この課題をクリアしなければここから出られませんから』


「待って、それどういうことかわかっていっているの? あなた」


『わかりませんね。私は命令された指令を読んでいるだけなので』


やっぱりこのコウっていう子は小さい子なのね。誰かの命令でやってるっていうことは、何か弱みか何かを握られているのかしら。もしかしたら、誘拐されて帰る家がないと言われているのかも知れないわ。


「ねえ、取引しない? 」


『……取引ですか。どのような内容ですか? 』


のった。これなら、あんな指令に従わなくてもここから出られるわね。


「あなたにその命令をしている人はあなたを脅しているのでしょう? その人を私がどうにかしてあげる。あなたは家に帰れるのよ。だから、私をここから出しなさい。あなたには罪はないっていうことにしてあげる。悪いのは全部、あなたに命令をしている人なのよ」


『……以上ですか? 』


「ええ、良い話でしょう」


私は自信を持ってこの話をした。思ったよりもテンションが低い気もしたけど、まあ、平気でしょう。


『本当におばさんは話が長いのね』


「……おばさんですって? 」


確かにこのコウっていう人は十二、三才でしょうから、二十五の私はおばさんに見えるかもしれない。それでも一般的に考えたらまだ若いわよ。それをおばさんですって?


『おばあさんの方が良かったですか? 』


「今すぐに訂正しなさい! あなたにも罪があるようにするわよ! 」


『どうぞ。取引に応じる気は無いので』


やけに冷めた声だった。さっきのテンションはどこに飛んでいってしまったのかしら。


「何故? 良い話じゃないの。あなたは罪にも問われずに家に帰ることができるのよ? 」


『私は自分の意思でここにいるので。あと、私は誘拐されたとかそういうのではなく、生まれたころからここにいますので、あなたの提案に応じるメリットはありません。おばあさん』

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