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思い通りにならぬ恋  作者: 遊々
番外編
33/33

ある男の失恋

 最近、友人に恋人ができた。

 友人の恋人は俺の好きだった人。


 俺の好きだった人である川田裕は、俺の友人である藤堂秋人とつい最近めでたく付き合うこととなった。俺と秋人は喧嘩未満言い合い以上な険悪な会話をして以来、互いに少し距離を置いていたのだが二人が付き合うに至って秋人の俺への誤解が解けたらしく、また元に戻った。

 その際恋人同士になれた報告をされて一応二人に祝福の言葉を送ったが、笑みを浮かべる顔とは裏腹に胸中は苦いもので溢れていた。


 川田ちゃんが秋人をずっと好きだったのは知っていた。そして俺はそんな彼女が好きだった。秋人に会いに来た時に見せる柔らかい表情が、照れた時に真っ赤な林檎みたいになる顔が、ピンと背筋を伸ばした凛々しい姿が。本当に、好きだった。


 彼女の友人と呼べるくらいには仲良く慣れたと思う。たまにだけど、今も俺に会いに喫茶店に来てくれる。あくまで好きな人に会いに来るあの顔じゃなくて、友人に会いに来る顔で来るけど。だけどそれは友人関係である俺たちの関係性では当たり前なことで。それが、無性に悔しかった。


 最初から彼女は友人が好きで。

 話によれば友人もどうやら彼女に一目惚れだったようで。


 だから最初から、叶うはずのない恋だったんだ。


 俺と彼女が恋人と呼べる関係になれないであろうことは分かっていた。彼女は友人しか見ていなかったから。俺を兄みたいに思っていることは知っていたから。一応アプローチをしてはみたけど、あまり手応えはなかった。俺のアプローチに照れはするけど、友人の時とは全然違う顔だったし。

 だけどそれでも望まずには、夢を見ずにはいられなかったんだ。


 俺の初恋だったから。


 今まで付き合った人は沢山いたけど、好きになった人はいなかった。

 恋という感情がよく分からなかったし、俺はそんなに他人に執着しない方だったから。だから、初めて執着した彼女に惹かれずにはいられなかった。

 男性みたいな恰好をしていて、男性だと勘違いした最初の出会い。あれがなくて、俺が最初から彼女を女性と認識して出会っていたら、そしたらもしかしたら俺と彼女は付き合えていたんじゃないかと考えてしまう。

 いや、例えそういう出会いをしていても彼女とは恋人にはなれなかっただろう。そもそも彼女と友人が運命的な出会いをしていなければ、俺と彼女は出会っていなかったんだから。


 こんなことを考えても虚しいだけだって分かってる。分かってはいるけど、考えずにはいられないんだ。


 恋ってこんなに思い通りにならないものなんだな。

 失恋ってこんなに苦しくて悲しいものなんだな。

 好きになると、こんなに夢中になるものなんだな。


 最近ココアがとても苦く感じる。

 昔は飲めなかったけど今はもう簡単に飲干せるほうになった、彼女の好きな飲み物。甘くて飲めなかったはずなのに、今は苦くて飲めない。ココア自体は甘いのだけれど、これは俺に問題があるのだろう。

 あんなに苦労して飲めるようになったのに、別の要因で飲めなくなるなんて思わなかった。ココアは二度俺を苦しめる。


 失恋しても、ココアが俺にとって特別な飲み物であることに変わりはない。

 俺が彼女に夢中になっていた証であり、恋をしていた証なのだから。


 だから、ココアがまた飲干せるように気持ちに整理をつけよう。

 ありがとう、初恋の人。夢中になれることを教えてくれた人。

 これからも兄のような友人で居続けようじゃないか。


 今は失恋したばかりで気持ちの整理がつかないけど、いつか。

 いつか二人の幸せを純粋に応援できるようになりますように。



なんかポエミーになった気がする。

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