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思い通りにならぬ恋  作者: 遊々
本編
27/33

26 私に与えられた罰

 洋介さんに友人たちを連れて突撃してから数か月が経ち、季節はいつの間にか秋へと変わっていた。

 相変わらず私は女装喫茶『LaLa』へ通っていたのだが、あの偵察デートの日から一つだけ変化があった。


 それは、秋人さんとあまり会えなくなったという変化。


 最初は気のせいだと思っていたのだが、明らかに秋人さんが私を避けているような気がする。というのも、今まで私は大体休日に喫茶店に訪れていて、秋人さんも大体休日はシフトが入っていた。だけど秋人さんはあの日以来、あまり休日にシフトを入れなくなっていた。本人曰く休日に予定が入ることが多くなったと言っていたのだが、明らかに違う理由があると思う。

 だって秋人さんは困ったような、どこか寂しそうな笑顔をして「ごめんね、これからはあんまり会えないかもしれない」と言っていたから。だから、最近は二人で出掛けることもなくなった。


 きっと、偵察していたことがバレていたのだと思う。そして私は嫌われたのだ。

 じゃなきゃ、こんな風に避ける意味が分からない。


 これは、好奇心に負けてしまった罰だ。

 いつまでも初恋にしがみついている罰だ。


 あの日のことを後悔しない日はない。人のデートを覗き見するような最低な女が、好かれる訳がないじゃないか。

 明らかに落胆している私を見て、洋介さんは私を誘ったことを悔いている様子だったけど、悪いのは私であって洋介さんではない。

 それに私が秋人さんに避けられているのではないかと疑問を持ち始めた頃、二人が最近不仲なのを知った。私の罪が、彼らの友情にヒビを入れてしまったのだ。

 一度洋介さんに申し訳ないことをしたと謝ったが、彼は「気にしなくていい、それにこれは俺と秋人の問題だから」と言われそこでその話は終わってしまった。


 申し訳なさ過ぎて、どうしていいのか分からなかった。

 全部、私のせいなのに。私の好奇心がいけないのに。


 ここしばらく暗い顔をしていたせいか、綾子や彰に心配された。やっぱり私はすぐに顔に出るらしい。洋介さんの言っていたことは真実だったようだ。

 こんな状態で喫茶店には行けない。もし秋人さんに、洋介さんに会ったら、どういう顔をすればいいのか。どうしていいのか分からなくて、ここ二か月ほど、喫茶店『LaLa』に行っていない。

 そんな私を知ってか知らずか、洋介さんが心配してよくメールをくれる。


「秋人が目当てで来てたのは知ってる。今の状態じゃ『LaLa』に来る意味はないかもしれないけど、愚痴を言うでもいいから一度来てみないか」と言われた。


 だけど、私は合わせる顔がなくて断っている。そのせいで洋介さんが罪悪感を募らせているかもしれないとは思いつつも、今の状態を隠せるほどの余裕がなくて、結局行けずにいた。

 洋介さんは親身になって話を聞いてくれるし、相談にも乗ってくれる。だから一度話したいとは思っているのだけど、今の私には勇気がなかった。

 こんなに意気地なしだったとは思わず、自分にショックを受けた。そして益々塞ぎ込んだ。





 でもある日、学校に登校して席に着くと、何やら深刻そうな顔をした綾子がいた。

 何事かと話しかけようとしたら、私をじっと見て綾子が言ったのだ。


「裕ちゃん、相手がどう思っているかなんて聞いてみないと分からないのよ!そんなに塞ぎ込むくらいなら、砕ける勢いで秋人さんにきいてみなさい!」

「で、でも絶対あの日のことがバレて嫌われたんだよ…」

「そんなの裕ちゃんの考えでしかないでしょ!本人の口からハッキリ聞けばいいのよ!」

「いや、そんなこと無理だよ…」

「無理じゃない!実はもう秋人さんと会う予定をセッティングしてあります!」

「え!?」

「今週の土曜日裕ちゃん何も用事なかったよね?」

「な、なかったけど」

「じゃあオッケーね!今週の土曜日、午前11時にいつもの駅集合だから」

「もう決まってるの!?」

「そう!だから気持ちを決めてちゃんと話し合ってきなさい」


 ほとんど強引ではあったが、私は何か月ぶりかに秋人さんと会うことになってしまった。何故こんな急に!?心の準備が出来ていない!

 断ろうと思ったのだが、さっきまで傍観していた彰が真剣な顔をして急に話しかけてきた。


「桜庭が落ち込んでるお前のために、一人で秋人さんに会いに行って話をつけてきたんだ。桜庭の気持ちを汲んで行って来いよ。断ったら、俺はお前を許さない」


 何故か少し怒っている彰にそう言われ、断ることができずに結局行くことになってしまった。

 家に帰ってから断れなかったことを猛烈に後悔したが、今更引くことはできない。

 覚悟を決め、素直に秋人さんにデートを覗き見していたことを謝ろう。

 嫌われても仕方のないことをしたのだ。謝ったら、秋人さんのことは潔く諦めよう。


 今度はこんな苦しい気持ちにならない、新しい恋をしよう。

 そう決めて、私はベッドに入り目を瞑った。



コメディがなかなか帰ってきてくれないよぉ!

しばらくシリアス続きそうですが、それが終わればまたコメディが帰ってきます!

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