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思い通りにならぬ恋  作者: 遊々
本編
14/33

13 洋介さんのお願い

遅くなってすみません。

 ついに秋人さんのデートを盗み見る日がやってきた。

 私は洋介さんと偵察の待ち合わせ場所に向かう。洋介さん指定の恰好で彼とデートの振りをし、秋人さんたちを一日つけまわすのだ!…罪悪感が半端ではない。何度やっぱりやめようと言いかけたことか。しかしその度に私の好奇心が邪魔をしてやめようと言おうとする口を閉ざし、現在に至る。


 待ち合わせ場所である駅に着くと洋介さんはもうすでにいた。早めにきたはずだが、洋介さんの方が早かった。


「すみません、遅くなりました」

「遅くないよー。まだ待ち合わせ時間前だし」

「結構早めに来たつもりだったんですが、洋介さんも早いですね」

「俺川田ちゃんとデート出来るのが楽しみ過ぎて物凄い早くきちゃった」


 語尾にハートでもついていそうな慣れた感じの言い方。流石チャラ男である。


「チャラ男は言うことが違いますね…流石です」

「いや、流石ですとか言うとこじゃないよ?てか頬赤くして「嬉しい!」とか言ってくれてもいいよ?」

「他の女性とデートしたときに言ってもらってください」

「今日も朝から絶好調だね、川田ちゃん!お兄さん朝から泣きそうだよ!」

「大丈夫です、洋介さんには慰めてくれる女性が沢山いるでしょ?」

「いないから!俺川田ちゃんに慰めて欲しいのに!」

「お断りします」

「お兄さんの心折れちゃうぅ!」


 朝から相変わらず元気そうだ。なんだか今日は特に元気な気がする。

 秋人さんのデートの様子を見るのがそんなに楽しみだったのだろうか。


「ほら、行きますよ」

「あ、待って川田ちゃん」


 事前に洋介さんに聞いていた秋人さんがゼミの女性と待ち合わせる場所へ向かう。集合場所の駅の近くのショッピングモールで秋人さんは待ち合わせのようだった。


 ショッピングモールに着いたが秋人さんたちはまだいなかった。私も洋介さんも早めに集合したし、まだまだ時間まであるみたいだ。暇だったので私と洋介さんは秋人さんたちの待ち合わせ場所の様子が見えるカフェに入り時間を潰した。

 私はココアを頼み、洋介さんはコーヒーを頼んだ。席に着くと洋介さんは頬杖をつきながら私を上から下までまじまじと見た後、いつもはしない真面目な顔をした。


 ちなみに今日は洋介さん指定の髪型をして服を着ている。髪型は緩いハーフアップ、服は上が白い七分丈のシャツで下が紺色の膝下スカート、靴はベージュのパンプスを履いている。洋介さんは清楚系?の恰好が好きなのかもしれない。


「今日の服、本当に似合ってる。可愛いよ、川田ちゃん」


 洋介さんがいつもより大人びた声で真面目な顔をしてそんなことを言うものだから、私は驚いて少し硬直したあと急に恥ずかしくなってきた。


「な、何ですか急に…」

「急じゃないよ。それに最近『LaLa』に来るときの川田ちゃんずっと可愛いなって思ってたんだ」


 可愛いなんて男性に言われたのは秋人さんと家族以外で初めてだったので動揺を隠せない。頬が熱くなって変な汗が出てしまう。


「いつもとなんだか今日は様子が違いますね。さっきまでのチャラ男モードはどうしたんですか」

「川田ちゃん、フリっていっても今日はデートだよ。だから俺は川田ちゃんに対して誠実にいようと思うんだ」


 フリではなく、洋介さんにとっては結構真剣にデートなのかもしれない。

 というか確かにいつも通りのやり取りをしていたらあまりデート感は出ないのかもしれないな。なるほど、そういうことか。


「それは本格的に恋人同士のデートみたいにしたいってことですか?万が一バレた時の為に」

「いや、そうなんだけどそうじゃないんだ…。まあでも本気でデートしたいってこと」


 洋介さんの顔があまりにも真剣で、なんだか茶化せない雰囲気だったのと割と本気で言ってくれているのが伝わってきたので私も真面目に応えることにした。


「…わ、分かりました。偵察も兼ねた本気のデートということですね…」

「そーゆーこと。嬉しいな」


 にこにことしている洋介さんはいつもより少しだけ子供っぽい。彼にもこんな一面があったんだな。


「ねえ川田ちゃん。今日は川田ちゃんのこと”裕”って呼んでいい?」

「へ?」


 い、いきなりの名前呼び捨てだとっ!?やはりこの男、根はチャラ男だ!


「ま、まあいいですよ…」

「やった!嬉しいなー。ずっと裕のこと名前で呼びたかったんだ」


 名前を呼ばれると何だか照れる。私は男友達には大体”川田”って呼ばれるし、名前で呼んでくれる男性なんて家族と秋人さんくらいだから。

 チャラ男はやっぱり凄い、なんか懐にスルって入ってくる感じ。いやこれはチャラ男だからというよりは洋介さんだからなのだろうか。モテる男はやはり違うのだな。


「裕の今日の恰好も髪型も本当に可愛い。また『LaLa』に来るとき、たまにでいいから今日と同じ髪型と恰好してきて?そしたら俺すげー嬉しい」


 本当に嬉しそうに笑うその顔は、今まで見たことがない甘い笑顔だった。


 やばい、なんなんだこの男。

 本気デートのときはいつもこんなことを女性に言っているのだろうか。

 そして甘い微笑みをしているのだろうか。


 恐ろしい!これは女性は恋に落ちちゃうよ!落とされちゃうよ!私は秋人さんに未練がましくも恋しているので落ちはしないが、これやばいよ!

 チャラ男の女性を落とす手練手管、侮れぬ!


 今日一日偵察が終わるまで洋介さんと一緒にいることを考えると、私の身は持つのだろうかと不安になった。

相変わらず不定期の連載となりそうですが、よろしくお願いします。

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