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双丘リベンジのお知らせ

作者: 蝶乃舞月夜

こんな感じのを書きますという前書き

「水素水バーニアの調子はどうなっている!?」

 ネオサイコブッダ社のロゴが入ったスパナが浮かぶ音。何者かが蹴ったのだ。

「バーニアの駆動系じゃない。火を入れるタイミングが――――」

「敵は待ってくれねえぞ!」

 この宇宙世紀……西暦が終わってウン万年と経たこのご時世、信心深いと呼べるものはそう多くない。神という概念が彼岸に渡った世界にあって人の拠り所は知性にこそあった。

『貴殿は財閥補給船の航路妨害にあって、月面評議会が認可するところの』

「それは良くないな。年貢を納める民を虐げることになる」

「敵性エイリアンを捕捉! 第一射程距離に入ります!」

 ハイクラス向けのホットラインより発せられる底冷えの陳情には目もくれず、着々と戦闘状態にある自身の宇宙戦艦を俯瞰していた。有体に言えばプロジェクションマッピングである。艦橋内部に彼を中心として艦内外のあらゆる状況を視覚的に知り得るものだが、赤い枠線で囲われた老人の顔が彼の視界を妨げている。

「パワードスーツ部隊の発進を急がせろ。蒸気機関の暖機は艦の外で行わせるんだ」

『ザブザ・ザンザス将軍!』

 名前を呼ばれた男……ザブザはそこでようやくホットライン越しの老人に目を向けた。老人は輪っかに覆われた星であるところの木星を象ったユピテル財閥のバッヂを胸に着けている。普段は眼鏡をかけているのか、しきりに目頭の辺りを指で上げるような仕草をする。

「これはこれは。マダム・ゴンバジョフのところのマッケンジー秘書官殿ではないか」

『月面国家の幕府の首魁がここまで浅慮が過ぎるとは思いませなんだな』

 征夷大将軍の肩書きを持つ彼にここまで言える地球人も太陽系広しと言えどマッケンジー氏くらいなものだろう。ザブザの座るシートのすぐ後ろには、武田信玄がミュシャ調に描かれた古めかしい軍配と、刀身が三尺三寸四分五厘に達すると言われる軍刀・ビームホタルマルが飾られている。如何にも強いって感じだ。

『先の生麦事件を忘れたとは言わせませんぞ。銀河同盟と月面国家アクエリアの間柄とは言えど、宇宙連合憲章を軽視した行為を見過ごすことは出来ませぬ』

 ザブザの脳裏に過ぎった記憶が彼の表情を噛み潰された苦虫の顔に変えた。銀河同盟による経済制裁および軍港の無期限閉鎖。彼と彼の背後にいるマダムの権謀術数。月面評議会においては厭戦保守派の巨大派閥であるオフパコ会派にも彼は名を連ねている。

『重ねて言うが今回の民間宇宙港の閉鎖および軍事利用、評議会の認可を得ない無断出兵、補給船の航路妨害……どれも宇宙連合憲章の取り決めから著しく違反し――――』

「お言葉ですがマッケンジー秘書官殿」

 肘掛に備え付けられた取り外し可能のタブレットが敵性エイリアンの照合結果を示す。ザブザの予想した通り、前方宙域に展開し財閥の補給船を襲っているのは目目連であった。

「我が国にも自治権が認められるが故に我が国の憲法があります。惑星ガイアのオーガニック水素水の輸出管理を受け持つ貿易国家でありますから、我が国アクエリアにも独自の自衛権を行使する際の取り決めがあります。そこには『国籍を問わず如何なる所属の船舶においても敵性エイリアンに襲われている際にはこれを助けること』とある」

『知っているともさ。その為の自衛戦力も評議会が設立したばかりだ。これからの幕府運営に宇宙戦艦は必要ない』

「それがあるんだよ!」

「敵性エイリアン・目目連、照準。主砲充填開始!」

「第一から第八小隊順次発進、クリア」

「全速前進。包囲陣形・車掛りの陣」

 糒味のレーションの残り香が鼻をつく中、彼の指示も無く着々と交戦状態に移行するがザブザはさして気にする様子も無い。数々の制約をもってしても彼の軍靴の音は止む事が無い。まるで戦場こそが当たり前の日課だとでも言うように。

「……マッケンジー秘書官殿。憲法解釈権というものを知っているか?」

 ザブザの問いに対しマッケンジーは押し黙る。その沈黙が肯定であると捉えたザブザは先を続ける。戦火の火蓋が切られるのはもう目前である。

「成立して日の浅い月面評議会と違ってザンザス家の率いる幕府の歴史はアクエリア建国戦争以前よりある。今日では多少様相が異なるが、我が国はあくまで立憲君主国であり、その憲法解釈は皇帝陛下と幕府に委ねられるのだ。助けよと憲法に記載されている以上、我々幕府軍は武力行使でもってあれを助けねばならない」

 ザブザの視界にはズームアップされた財閥所属の補給船が映っていた。……妙だと彼は思った。普段は展開されている重力制御フィールドの光が観測できないのだ。故障でもしたのだろうか。

『……そうまで言うのであればザブザ・ザンザス将軍。当然貴殿は皇帝陛下からの許可も取り付けておるのであろうな?』

「我らザブザ幕府は有史以前からアクエリア皇族に仕えた身である、と口で言っても聞きはすまいな。おい、アクエリア。此度の出兵における許可状を送付してやれ」

『リヨーカイしましたです~このスーパーAI・アクエリアちゃんにおまかせよん!』

 ザブザに呼ばれて能天気な声を発する少女が空間に現れた。いや、構築されたと言った方が正しいであろう。0と1で紡がれた天女は手紙のアイコンを赤枠のホットラインに投げつける。マッケンジーは先程から口数が少なくなっているが、恐らくは自身の仮想電脳に外部記憶からの情報をダウンロードしたりしていたのであろうとザブザは推察する。

『信じ難いことだが、宮内庁の正式フォーマットに則るものだ……。照合したザブザ将軍。貴殿の武運を祈る』

 そう言うとマッケンジー秘書官は一方的に通信を切ってしまった。ザブザはしばらくホットラインの映す「Cannot Connect」の表示を見ていた。

『ふぁあぁ~』

 古めかしいクシナダ姫を思わせるような服を着たAIが欠伸をする。マッケンジーと交信するザブザに代わって艦内各所に指令を出していた彼女であるが、どういう理屈であるのか彼女は疲れてしまったらしい。

「秘書官殿の方が些か勉強不足だったのかもしれませんね」

 新米のオペレーターの男性が軽口を漏らす。本人が聞いていれば切腹ものであるが、彼の失言を笑って許せるだけの器量がこの船にはあった。誰もが溜息混じりの笑みを漏らす。

 しかし、彼が席を立ち軍配を手に持った瞬間、緩んでいた糸が引き締まる音がした。それを境に誰もが真剣な表情を浮かべ、これから起こる戦闘に集中したのだ。


(マッケンジーの物言いは知識不足からくるものではなかった。皇帝陛下の許可状についての質疑応答までを引き伸ばし、問答を長引かせる為のもの。奴はあの補給船でのことを知っている……もしくは――――)


「パワードスーツ部隊は進軍開始! 主砲発射!」

 ザブザが軍配を振り下ろす。果てしない轟音が艦内を包む。地獄の業火が燃え盛る音。オーガニック水素水を取り込んだ蒸気機関が唸りを上げ、月面宙域に浮かぶデブリの数々を瞬く間に爆ぜさせる。夷人(エイリアン)を征伐すると書いて征夷大将軍である。

「一万と二千年の栄光と共にある幕府の力を見せ付けてやれ!」

 戦艦と同じく蒸気機関を搭載したパワードスーツが火を吹かす。プラズマ化した極微量の水滴が推進力を生む。碇肩がトレードマーク、灰色のパワードスーツである【トザマ・アタック】は臀部に収納されている折り畳み式携行銃・ビームタネガシマを取り出し、流れるような所作で威嚇射撃。球状に加工された水素水合金の肩部パーツがデブリを弾く。

 対するはバーゲン錯視に巣食うエイリアン・目目連。最大で9000万平方kmにも及ぶチャクラフィールドを展開してこれらを迎え撃つ。

 そしてもう一方。補給船の中でのボーイミーツガール。神話を語り継ぐ者の来訪。ユピテル財閥の陰謀。皇族を裏で操る者。――――神話世界の再現。

 作者自身が最も狂気に満ちていた時代の小説を病床の私が書き直しちゃうゾ!









焼肉を食べろ。


こんな感じのを書きますという後書き

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