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第七百話 一死報国(中編)


---三人称視点---



 戦いの合図は、数十本に及ぶビームの雨で開始された。

 艦内の壁面や床にビームが炸裂して、

 ウェルガリア軍が張った対魔結界や障壁バリアに反射して、

 この狭い通路に目映い光が散らばられた。


 対するウェルガリア軍も先の戦いで入手したレーザーライフルで、

 応射するが、およそ二分程の時間で銃撃戦は終わった。


 ビームによって視力が一時的に弱まっていたが、

 それも回復してくると、

 レーザーけんやレーザーランスを手にして接近してくる機械兵の影が映った。


 そこから激烈な白兵戦が開始された。

 絶叫と金属音が響き渡り、切断された血管から赤い血が迸り、

 壁面や床を赤く染め上げる。


 機械兵達の戦闘能力は、決して低くない。

 いやハッキリ言えば高水準を保っていたが、

 ラサミス達の勇猛さの前には押され気味であった。


 ラサミスと剣聖ヨハンが率いる傭兵及び冒険者部隊は、

 剣やレーザーけんを縦横に振り回して、

 レーザーランスを突き立て、

 魔法銃やレーザーライフルを撃ち込み、

 相手が怯むと属性技や範囲を狭めた魔法を打ち込んだ。


 レーザーけんやレーザーランスが激突して火花を散らし、

 ラサミスやミネルバ、剣聖ヨハン、アーリアのスキル

 機械兵の首元を切り裂き、次々と戦闘不能に追いやっていく。


 機械兵の残骸を踏みつけて、

 ウェルガリア軍は前進を続けたが、

 機械兵や天使兵も陣形を立て直し、

 武器を構えて、反撃の機会を伺っていた。


 そして肩を並べたラサミスと剣聖ヨハンに向かって、

 女侍おんなざむらいアーリアと曲芸師ジャグラーのジョルディーが口を開いた。


「ここは私やジョルディーやラモンに任せて頂戴。

 団長やラサミスくんや「暁の大地」の面々を引き連れて、

 先に進んで、敵の親玉の首を取って来てよ」


「……そうだな、ラサミスくん、それとクロエとカリン。

 また余裕がある傭兵と冒険者は、ボクの後に続くが良い。

 恐らくこの先に天使達の首領が居る。

 誰が倒しても良いが、報奨金は皆で分けよう」


「そうですね、それが一番揉めないですね」


 と、ラサミス。


「ええ、私もヨハン団長の意見に賛成よ」


「あたしも!」


 ミネルバとメイリンも相槌を打つ。


「まあ勝てば良いし、この際、報奨金はおまけみたいなもんだろう」


 ジウバルトが相変わらず皮肉めいた台詞を吐く。


「了解です、アーリアさん、ジョルディーさん。

 また後で会いましょう、くれぐれも無理をせずに!」


「ラサミスくん、勿論そのつもりよ。

 さあ、早くお行きなさい! 時間があまりないわ」


「はい、ではお先に!」


 ラサミス達は、一礼して競走馬のような速さで走り出して、

 剣聖ヨハン達、それと数名の傭兵と冒険者が無言のまま後に続いた。


 すると一体の機械兵がレーザーライフルの銃口を

 ラサミスの背に向けた。

 

「――させるかぁっ!!!」


 ラサミスが撃たれる前に、

 ジョルディーが右手に持った鉄球に光の闘気オーラを篭めて、

 ライフルを構える機械兵の頭部目掛けて投げつけた。


 投擲された鉄球は、機械兵の頭部に見事に命中。

 それによって機会兵は、身体のバランスを失い、

 左膝を床につけて倒れた。


「やるじゃない」


 と、アーリア。


「こう見えて曲芸師きょくげいしだからな。

 これぐらいは朝飯前さ」


「オレ様も燃えてきたぜ。

 ここはオレ様達「ヴァンキッシュ」の腕の見せ所だぜ」


「そうね、ラモン。 とりあえず確実に目の前の敵を倒すわよ」


 アーリアの言葉にジョルディーとラモンが無言で頷く。

 そしてそれぞれ手に武器を持って、再び戦闘態勢に入った。


---------


 アーリアの白刃の太刀が銀色の弧を描き、

 機械兵や天使兵の身体を綺麗に切断した。


 ジョルディーの鉄球とラモンの黒い拳銃ハンド・ガンから、

 放たれた銃弾が機械兵や天使兵の急所に命中する。


 だが数の上では、相手が上回っていた。

 機械兵は倒されても、倒されても突撃を繰り返す。


 アーリアの使う白刃の太刀――日本刀にほんとうは、

 東洋の国――ジャパングから取り寄せた超一級品の名刀であったが、

 こう何度も何度も機械兵や天使兵の機械の身体を切り捨てていくと、

 流石に無傷とはいかず、少しずつ刃こぼれが起こった。


 だがアーリアは腰にもう一本――脇差しを帯刀していた。

 こちらもジャパングから取りそろえた名刀。

 もしこの白刃の太刀が使えなくなれば、この脇差しを使う。


 短い間で頭をフル回転させて、

 アーリアは眼前の敵兵を次々と切り捨てていく。


 アーリアが再び闘志を装填して、

 鬼神の如く、戦い続けると通路を阻む敵兵もたじろいだ。


 機械兵と天使兵も機械の身体と心の持ち主だが、

 相手の力量に気圧されて、ジリジリと後退し始めた。


「アーリアさんっ!」


 一人で戦い続けるアーリアに、

 同じく「ヴァンキッシュ」の面々が声をかけた。


 「暁の大地」と違って、「ヴァンキッシュ」は、

 三十人以上の冒険者を抱える大所帯。


 その大所帯の団員達が数人ほど前へ出て、アーリアの横に並んだ。


「普段は団長達の遠征や任務に置いてきぼりだけど、

 この状況じゃ俺達の力が必要でしょう」


「そう、そう、団じゃ二軍扱いだけど、

 オレ達もれっきとした「ヴァンキッシュ」の一員だ。

 こういう時ぐらいは、オレ達を頼ってくださいよ」


「そうですよ」


「お前達……」


 団員の言葉にアーリアが目頭を熱くさせた。

 そして彼女は口を一文字に結んで、大声で支持を出した。


「よーし、お前等の命はこの副団長のアーリアが預かった。

 私の後に続け、支援職バッファー回復役ヒーラーは、

 支援魔法と回復魔法ヒールを頼むっっ!!

 さあ、皆! 私の後に続けっ!!!」


 アーリアの声と共に、

 同僚の団員達が彼女の後に続き、

 武器を片手に機械兵と天使兵に向かって突撃していった。



次回の更新は2025年11月11日(火)の予定です。


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