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第六百八十八話 以長撃短(前編)


---三人称視点---



 ウェルガリア軍の空戦部隊による激しい魔法攻撃が続いて、

 約十五分が過ぎた午後十六時十五分過ぎ。


 度重なる魔法攻撃で、

 空戦部隊の魔力も浪費されていた。


 そして天使軍にとっては、

 非常に良いタイミングで障壁バリアが破壊された。

 この機を待っていた。

 言わんばかりに熾天使してんしは大声で叫んだ。


「今だ、今こそ攻める時であるっ!

 制御AI(エーアイ)システムの告げる。

 前方の敵集団に向かって、低周波ミサイルを放てっ!」


「了解です、ミサイルは何発放てば良いでしょうか?」


「……今のミサイルの残段数は?」


「残り173発です」


 その数字を聞いて、ミカエルが数秒間、無言になった。

 少なくもないが、多くもない数字。


 だがここで躊躇して、

 メルカバー自体が拿捕されたら、それこそ目も当てられない。


「天使長ミカエル」


「何だ、同士ラファエル」


「ここはミサイルを乱射すべきでしょうか?」


「それは君の判断に任せるよ。

 但し私ならミサイルを撃つね、二十発程ね」


「分かりました。 前方の敵部隊に目掛けて、

 時間差をつけて、低周波ミサイルを23発撃てっ!」


「ご命令承りました。

 前方の敵部隊界目掛けて、

 低周波ミサイルを23発、発射しますっ!」


 無機質な女性のAI音声がそうアナウンスする。

 それから間もなく、

 メルカバーのミサイル発射口が開いた。

 その事にニャラード団長がいち早く気付いた。


「敵が攻撃を仕掛けてきた。

 全力で障壁バリアを張るんだ!

 もし防ぎきれない場合は転移石で

 「レスシーバ平原の味方の本陣」へ転移するんだ!」


「了解でニャンす!」


「さあ皆、踏ん張るんニャッ!

 ――ニャーマン・バリアァァァッ!!」


「いくでニャンす! ――ニャーマン・バリアァッ!!」


「アタシたちも障壁バリアを張るよっ!

 せいいいっ……シャドウ・ウォールッ!!!」


 ニャラード団長達が咄嗟に障壁バリアを張る中、

 ミサイル発射口から、

 13発の低周波ミサイルが発射された。


 間を置かずして、ミサイルが着弾。

 眩い光が生じて、耳朶じだを打つ衝撃音が周囲に鳴り響いた。


 ニャラード団長は、通常サイズで、

 「ニャーマン・バリア」を張ったが、

 その状態でも彼の障壁バリアはとてつもない強度を誇った。


 二発、三発とミサイルを防いでも、

 障壁バリア自体は傷一つ負う事すらなかった。


 だが他の者は違った。

 宇宙戦艦から放たれるミサイル攻撃。


 それはこの世界における常識外の攻撃。

 故にそんな攻撃を耐えられる障壁バリアを張れる者は少なく、

 ミサイルが着弾するなり、

 その衝撃に負けて、四方八方に飛散した。


「あああぁっ……魔王陛下万歳っ!」


「糞っ……障壁バリアで防げるレベルの攻撃じゃないぞ!」


「バーナック、次の攻撃が来るわよっ!」


 エンドラがそう言う中、

 ミサイルの発射口から、今度は低周波ミサイルが10発放たれた。


「あああぁっ……障壁バリアを張る間がないっ!?」


「転移石よ! 転移石を使いなさいっ!」


「だ、駄目だっ! 間に合わない……ウアアアァッ!」


 バーナック率いる竜魔部隊に、

 低周波ミサイルが二発命中すると、

 爆音と爆風が生じて、その身体が見事に爆散ばくさんさせた。


 他にもニャラード団長やツシマン以外の魔導猫騎士まどうねこきし

 エンドラのサキュバス部隊、竜騎士団の竜騎士ドラグーン

 キャスパー率いる龍族部隊などがミサイルの犠牲となった。


 この一撃でバーナックは、とその配下の部隊が百名以上戦死。

 魔導猫騎士まどうねこきしも百匹前後が死亡。

 サキュバス部隊も五十人以上、竜騎士団も六十人近く、

 龍族部隊も七十名程の命が一瞬で消え失せた。


 合計にして380人以上の兵士が犠牲となった。

 これによってウェルガリア軍の空戦部隊は、

 隊列が乱れて、多くの者が恐怖心に囚われた。

 この姿を液晶スクリーンで観たラファエルは――


「良し、ここで敵を一気に叩く!

 まずは電磁砲レールガンで敵の地上部隊を一気に叩く」


「――了解致しました」


 ラファエルの命令に、

 中央発令所の高性能コンピューターから、

 無機質な女性の音声アナウンスが流れた。


「――エネルギー充填開始っ!!!」


 メルカバーの先端の主砲発射口に光子が集まりだす。


「目標前下方70キルメーレル(約70キロメートル)。

 攻撃対象、敵の地上部隊。 ターゲット・ロックオン。

 エネルギーレベル30、40、50……」


 無機質な女性の音声アナウンスが聞こえる中、

 ラファエルは胸の前で両腕を組み、

 双眸を細めて、近くの液晶スクリーンを見据えた。


「ラファエル、躊躇うなよ?

 やる時にはやる、そうじゃないと勝てぬぞ?」


「天使長、それは百も承知さ」


「照準オーケー、電磁砲レールガン、出力最大です」


 その時、地上に居た魔王の側に立つシーネンレムスが異変に気付いた。


「物凄いエネルギーを上空から感じます。

 これはエルフ領の大聖林を一掃した超兵器かもしれません」


「そうか、ならば対魔結界や障壁バリアではどうにもならんな。

 シーネンレムス、何か良い策はないか?」


 と、魔王レクサー。


「あると言えばあります……」


「何だ? 申してみよ!」


「とりあえず魔王陛下を含めた側近を

 瞬間移動魔法テレポートで、

 マリウス王弟おうていが陣取る丘陵地帯へ転移すべきです」


「……では他の兵士はどうなる?」


「普通に死にますね、でも魔王の貴方が死ぬ訳にはいかない」


「そうか、心苦しいが、その選択肢を選ぶしかないようだな」


「ええ、では瞬間移動魔法テレポートを使いますよ!」


「やむを得んな……」


 渋々承諾するレクサー。

 その両眼には無念さが滲んでいた。

 

「我は汝。 汝は我。 我はシーネンレムス。 

 時をつかさどる時の神クロノよ! 我に力を与えたまえ! 

 ――ハイ・テレポートッ!!」


 シーネンレムスがそう呪文を紡ぐなり、

 彼の周囲に無数の白い波動が生まれて、

 瞬く間に周囲を呑み込んだ。


 それと同時に魔王レクサーとその側近。

 魔王親衛隊、また強襲揚陸艇に乗り込んだラサミス達や剣聖ヨハン達も

 その白い波動に呑み込まれて、

 十秒もしないうちにその姿が消えた。


 それと同時にメルカバーの電磁砲レールガンの発射態勢が整った。


「良し、撃て(ファイア)っ!!!」


「――電磁砲レールガン! 全門斉射ぁ!!!」


 電磁砲2門5基が同時に火を吹いた。

 それと同時にメルカバーの周囲が白くなる。

 そしてメルカバーから、

 発射された電磁砲レールガンが数秒の間を置いて地面に着弾した。



次回の更新は2025年10月13日(月)の予定です。


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