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第六百七十一話 艱難辛苦(前編)



---三人称視点---



 ウェルガリア歴1606年9月15日。

 猫族領ニャーマンりょうと旧エルフ領に国境線あるガルフ砦を

 中心として、五大種族連合軍と天使軍えんしぐんの戦いが繰り広げられようとしていた。


 連合軍は、ガルフ砦に猫族軍ニャーマンぐんと魔王軍の兵士を

 五千匹と二万人、竜人軍を五千人を配置して、

 司令官は魔将軍グリファムに任せた。

 その下にレストマイヤーとアグネシャールが配置された。

 

 またラサミス達「暁の大地」もガルフ砦の防衛戦に参加する事となった。

 更には魔導猫騎士まどうねこきしツシマンもこの防衛戦に参加。


 そして砦の近くの東の草原に、

 サキュバス・クイーンのエンドラはサキュバス部隊を五百人。

 バーナックとキャスパーには、

 先の戦いと同じく五千の兵が与えられた。


 更にはシモーヌ副隊長率いる残党エルフ軍約二千人。

 シャルク団長率いる竜人軍4500人。

 この約47000の戦力でメルカバーを迎え撃つ。


 尚、魔王レクサーとマリウス王弟おうていは、

 レスシーバ平原に、魔王軍約十万。

 猫族軍ニャーマンぐん約三万五千匹の戦力を陣取らせた。


 この本隊にシーネンレムスとニャラード団長。

 一万の竜人軍をレフ団長が率いる事となった。


 一方の天使軍は、地上部隊に主天使しゅてんしドミニオンが約350名の天使騎士エンジェル・ナイトと戦闘バイオロイド二千体を率いて、その配下にある魔物、魔獣を約7000匹以上と共に、ガルフ砦の東の草原に陣取る事となった。


 少々心許ない戦力だが、

 大聖林やエルフィッシュ・パレスを護るべく、

 エルドリア解放軍やダーク・エルフ部隊は上記の二カ所に配置。


 ここで王都ニャンドランドが陥落すると、

 連合軍は一気に瓦解するであろう。


 それ故に絶対に負けられない戦いである。

 そしてガルフ砦に残った戦力に与えられた任務は、

 時間稼ぎと敵艦の消耗。


 簡単そうで難しい任務だが、

 泣き言など言える状況ではないので、

 兵士達は与えられた任務に全力を注いだ。


 レストマイヤーとアグネシャールによって、

 ガルフ砦の前方上空に強力な大結界が三重になって張られていた。


 当然、天使軍の司令官もそれに気付く。

 メルカバーの中央発令所の液晶クリーンで眺めながら、

 総司令官の熾天使してんしラファエルと熾天使してんしウリエルが言葉を交わす。


「敵は大結界を三重にして張ってきたようだな。

 同士ラファエル、敵の狙いは何処にあると思う?」


「同士ウリエル、恐らく時間稼ぎとこのメルカバーの消耗だろう。

 ここは制御AI(エーアイ)に直接問おう。

 メルカバーのミサイルの残弾数はどうなっている?」


 熾天使してんしラファエルの声を認識すると、

 すると制御AI(エーアイ)システムが稼働して、

 瞬時にミサイルの残弾数を計算して、正確な数値を伝えた。


「計算が完了致しました。

 当艦のミサイル残弾数は138発となってます」


「138発か、だいぶ減ってきたな」


 と、熾天使してんしウリエル。


「この間の化け猫殺ねこごろしで結構使ったからな。

 制御AI(エーアイ)に再び問う。

 メルカバーの総エネルギーはどうなっている?」


 ラファエルの問いに制御AI(エーアイ)システムが稼働して、

 無機質な女性の音声アナウンスが正確な数値を伝える。


「現在のメルカバーの総エネルギーは72(パーセント)です」


「72(パーセント)か、随分と減ったな」


「ええ、想像以上にエネルギーの消費が激しいですね」


 同じように液晶スクリーンの前に立つ座天使ざてんしソロネが率直な感想を述べた。


「最悪、エネルギーは我々や天使兵の魔力で補充すれば良い。

 現時点では我々が有利だが、

 敵にも奥の手があるかもしれん。

 故に長期戦を避けて、短、中期戦で挑むぞ!」


「同士ラファエル、それは理解出来ますが、

 あの三重になった大結界は、どうするつもりですか?」


 座天使ざてんしソロネの意見は尤もだ。

 だがラファエルもそんな事は百も承知だ。

 だから彼は毅然とした態度で、ソロネの疑問に応じた。


「知れた事よ、ビーム攻撃及びレーザー攻撃で破壊するまでだ。

 尚、低周波ミサイルは温存するつもりだ」


「このままではこのメルカバーも地上のドミニオン部隊も

 動くに動けんからな、俺は同士ラファエルの作戦に賛成だ」


「……では私も従います」


 こうしてウリエルとソロネもラファエルの作戦を支持する事となった。


「あの砦を突破すれば、

 猫族領ニャーマンりょうへ侵入出来る。

 そうなればあの化け猫共の王都まで目と鼻の先となる。

 奴等を叩き潰せば、敵も色々と内部崩壊を起こすだろう」


「現時点でヒューマン軍は、参戦する気配すら見せないからな。

 猫族軍ニャーマンぐんが瓦解すれば、

 残りは魔王軍だけとなるであろう。

 そうなれば我々の勝利は確実なものとなるだろう」


 ウリエルの言葉にラファエルも「うむ」と相槌を打つ。

 だがウェルガリア軍には、底力のようなものがある。


 だからラファエルは、気を緩めず、

 声を張り上げて、周囲の同士と部下。

 そして制御AI(エーアイ)に命令を下した。


「まずはあの猫族ニャーマンの砦を陥落させるぞっ!

 エネルギーの事は気にするな。

 撃って、撃って、撃ちまくれっ!

 ここが正念場だぞ、恐れず攻撃を続けよっ!」


 そのメルカバーから、

 凄まじいビーム攻撃とレーザー攻撃が放たれたが、

 レストマイヤーとアグネシャールが張った大結界も強力で、

 一枚目の大結界を破壊するのに二時間。


 二枚目の大結界を破壊するのに五時間。

 三枚目に至っては、十五時間もの時間を要した。


 だがウェルガリア軍は、それと同時にガルフ砦から、

 主戦力を引き上げて、レスシーバ平原の本隊と合流させた。


 だがガルフ砦にも猫族軍ニャーマンぐん五千匹。

 竜人軍を五千人、空戦部隊として、

 エンドラ率いるサキュバス部隊を五百人。

 バーナックとキャスパーには、五千の兵が継続して与えられた。


 更にはシモーヌ副隊長率いる残党エルフ軍約二千人。

 シャルク団長率いる竜人軍4500人。

 この約27000の戦力で、

 メルカバーと天使軍の地上部隊を迎え撃つ事となったが、

 彼等に与えられた任務は、あくまで時間稼ぎと敵艦の消耗。


 それが分かっていたので、

 指揮官や兵士の士気も高くないまま、

 迫り来る天使軍と戦う事となった。


次回の更新は2025年9月4日(木)の予定です。


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