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第六百六十二話 力天使ヴァーチャ(前編)



---三人称視点---



「兎に角、攻めろ! 攻めて、攻めまくるんだ!

 使える物は何でも使えっ!

 ミネルバ、お前もオレと同じように魔槍を振れっ!」


 ラサミスはそう叫んで聖刀を振るった。

 その意図を察したミネルバも漆黒の魔槍を振った。


 すると真空波や闇色の炎塊が放出された。

 その光景を観て、「竜のいかずち」の団長シャルクも前方に飛びだした。


 身長185セレチ(約185センチ)の筋肉質な褐色の肌。

 黒のインナースーツの上から、

 銀色の軽鎧ライト・アーマーを装着しており、

 左手に真紅の大剣、右手に漆黒の魔剣を握っていた。


「――アイザック前団長、ボバン元副団長。

 アンタ等から受け継いだ魔剣を使わせてもらうぜっ!」


 シャルクはそう言いながら、

 左右に持った大剣と魔剣を交互に振り回した。

 真紅の大剣イスカンダール。

 漆黒の魔剣レヴァンティア。


 いずれも前団長と前副団長の遺品だ。

 前団長アイザックの戦死から、

 数年が経ったが、団長を受け継いだシャルクは、

 この大剣と魔剣を彼等の形見の品として常に持ち歩いていた。


 真紅の大剣イスカンダールからは紅蓮の炎。

 漆黒の魔剣レヴァンティアからは漆黒の波動。


 その二つの波動が混ざり合って、魔力反応『闇火』が発生。

 それを見て中衛に居たメイリン達も次々と魔法攻撃を仕掛けた。


 だが力天使りきてんしヴァーチャは、落ち着いていた。

 左手で印を結んで、勇ましい声で呪文を紡ぐ。


「我は汝、汝は我。 我が名はヴァーチャ!

 嗚呼、創造神グノーシアよ! この大地を氷で埋め尽くしたまえ!

 ――アイシクル・シールドッ!!」


 ヴァーチャの前方に長方形方の青白く輝いた障壁バリアが張られた。

 するとウェルガリア軍の前衛部隊及び、

 魔導師部隊が放った数々の魔法攻撃が炸裂した。


 それによって爆発や衝撃波は生じるが、

 青白く輝いた障壁バリアは、最初は全て防いでいたが、、

 次々と着弾する様々の属性の魔法攻撃に徐々に罅が入り始めた。


「くっ……この私のバリアを破壊しようとするとはね。

 やはり侮れない連中ね、そしてこの場における敵の頭目は、

 あの銀髪のヒューマン、天使長が特異点と呼ぶ危険人物。

 私にもその意味が少し分かってきたわ。

 天使兵てんしへいに告ぐ、全員、私と同じように、

 対魔結界か、障壁バリアを張りなさい。

 敵の攻撃を凌いだら、私が最前線に出るから、

 動ける者は全員ついて来なさいっ!」


「了解っ! ――ライト・ウォールッ!」


「――ライト・ウォールッ!」


 ヴァーチャの命令に従い、

 天使兵達も光属性の対魔結界を張るが、

 ウェルガリア軍の魔法攻撃も尋常でなかった。


 その結果、ヴァーチャの周辺の天使兵や機械兵は助かったが、

 それ以外の者達は、魔法攻撃や狙撃部隊にするレーザーライフル。

 熱光線銃によって、容赦ない破壊衝動の犠牲となった。


 五分以上に及ぶ長い攻撃が終わった。

 気が付けば、ヴァーチャの周囲には二十体の天使兵てんしへい

 それと三十体余りの戦闘バイオロイド――機械兵きかいへいしか残されてなかった。


「……信じられないわ。

 まさか短期間でここまで戦闘員を減らされるとはっ!!」


 開戦前は 約350名だった天使騎士エンジェル・ナイトは百体以下まで、

 戦闘バイオロイドに関しては、

 約二千体居たのが約四百体まで減らされていた。


「このまま魔法合戦を続けても、

 いたずらに仲間を減らすだけのようね。

 そうすればこの私がられるのも時間の問題。

 でもそうはさせないわ、このヴァーチャにも意地があるわっ!」


 そしてヴァーチャは、

 二匹の天馬ペガサスに引かれた黄金の戦車チャリオットの台座に飛び乗った。

 そして座席を両足で踏みながら、

 右手に持ったディバイン・ランスを高々と翳し上げた。


「兵士達よ、私と共に戦えっ!

 それでは今より封印結界を張る。

 我は汝、汝は我。 嗚呼、創造神グノーシアよ! 

 我が願いを叶えたまえっ! 『封印結界』ッ!!」


 そしてラサミス達を閉じ込めるように、

 ドーム状の結界が広がった。


 全長450メーレル(約450メートル)、幅十五メーレル(約十五メートル)。

 高さは十五メーレル(約十五メートル)に設定。

 このそれなりの広さの空間に、

 ラサミス達やシモーヌ副隊長や団長シャルクを含めた二十五人。


 そしてヴァーチャとその配下の二十体の天使兵てんしへい

 三十二体の戦闘バイオロイドが綺麗に収容された。


「マズいぞ、あの大天使の封印結界で、

 オレ達は閉じ込められたようだ。

 「暁の大地」の団員は全員居るか!」


「「居るわよ」」


 と、ミネルバとメイリン。


「「居ます」」


 ジュリーとバルデロンの声も聞こえた。


「「居るよ」」


 どうやらジウバルトとマリベーレも居るようだ。

 その事実に少し「ほっ」としながらも、

 ラサミスは自分達が置かれた状況を瞬時に理解した。


 この狭い空間で、先程のような天候操作魔法。

 そこからの氷結魔法と風魔法のコンボを喰らえば、

 自分達の命など一瞬で失われる。

 その事を察したラサミスが先手を打った。


「――明鏡止水めいきょうしすいっ!」


 ラサミスはここで職業能力ジョブ・アビリティ「明鏡止水」を発動。

 これによって彼の能力値が倍化された。


 ラサミスは新たに覚えた職業能力ジョブ・アビリティ黄金時間ゴールデン・タイムで、

 一度だけなら、全ての蓄積時間チャージ・タイムを零に出来る状態。


 それ故にいきなり「明鏡止水」を使う事が出来た。

 そして彼はそこから更に攻撃の手を強めた。


「――雷神剣らいじんけんっ!!!」


 ここで神帝級の刀術スキル「雷神剣」を発動させた。

 それによって、右手に持った聖刀に雷光が宿り始めた。


「――くたばれっ!!」


 ラサミスが大声で叫びながら、

 雷光を宿らせた聖刀を頭上に振り上げた。


 標的はヴァーチャの周囲に居る天使兵と機械兵。

 電撃属性の強烈な一撃で、

 まずはあの大天使の手下を倒す。


 そう思いながら、

 ラサミスは狙いを定めて、聖刀から雷光を解き放った。


次回の更新は2025年8月14日(木)の予定です。


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