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第六百五十一話 疾風勁草(中編)



---三人称視点---


「成る程! 天候操作魔法で揺さぶりをかける。

 それは面白い試みですね」


 レストマイヤーが感心気味したようにそう言う。


「確かに状況次第では、使える策でしょうね。

 流石は大賢者ワイズマン、予想の上を行く戦術に、

 わたしも感激しております」


 と、アグネシャールも同意の意を示した。

 だがシーネンレムスは、表情を変える事無く、

 自分の考えと策を端的に述べていく。


「敵艦は基本的に上空一万メーレル(約一万メートル)以上に、

 陣取っているようだから、

 この地上からでは魔法の射程圏外であろう。

 だから我々三人は、グリファムなどの他の幹部の愛獣に相乗りして、

 上空五千から七千メーレルに浮上すれば、

 我々の天候操作魔法も射程圏内に入るであろう」


「確かにそれならば通用しそうですね」


「ええ、私もレストマイヤーと同じ意見です」


「嗚呼、そして上手く敵艦の動きを封じたら、

 上空五千から七千メーレルから一斉に魔法攻撃を放射。

 それば敵艦にダメージを与えられる可能性は高い」


「確かに……」


「そうですね、良い策と思います」


 と、レストマイヤーとアグネシャール。


「では早速だがグリファムやバーナック。

 他の種族の主力部隊に伝令兵を出して、

 この件を伝えておこう」


「「はい」」


 そして本陣から他の幹部に伝令兵がこの作戦内容を伝えた。

 魔将軍グリファム、キャスパーやバーナックも

 シーネンレムスの作戦に賛成して、

 上記で打ち明けられた策が実行される事となった。


「まずは魔力を練り上げて、

 超強力な大結界を張るぞっ!」


「「はいっ!!」」


 そして大結界を発動する前に、

 エンドラやキャスパーやバーナック。

 またラサミス達「暁の大地」七名。

 魔導猫騎士まどうねこきしニャーランを初めとした魔導師猫騎士達。


 更には彼等を魔獣や飛竜に相乗りさせるグリファムやレフ団長が

 地上に魔獣や飛竜を着地させていた。


「各種族の主力部隊の方々(かたがた)よ。

 今から我々が大結界を発動します。

 その際にあの敵艦――空飛ぶ黒い船から、

 反撃があるでしょうが、

 敵の反撃が弱まったら、隙を突いて、

 各自、魔獣や飛竜に相乗りして空中に浮遊してもらい。

 その間にワタシ――シーネンレムス。

 レストマイヤーとアグネシャールで天候操作魔法を使い。

 あの黒い船に揺さぶりをかけます。

 その間に各部隊は、敵の空戦部隊を撃破。

 あるいは限界高度まで上昇してから、

 あの敵艦目掛けて魔法攻撃を仕掛けてください」


 シーネンレムスの作戦に各種族の主力部隊は、

 しばらく沈思黙考していた。

 確かに多少のリスクは伴うが、

 あの黒い船にダメージを与えられる可能性は充分あり得る。


 とはいえ黒い船――メルカバーのミサイル攻撃。

 ビーム及びレーザー攻撃の威力を知っていた為、

 ラサミス達やニャーランもやや渋い表情をしていた。


「確かにこの作戦なら試してみる価値はありそうニャ。

 でも失敗すれば、あの黒い船に一網打尽されかねニャい。

 とはいえ防御に回れば、相手の火力に押される。

 となればリスク覚悟で攻める、というのも有りですニャ」


 と、ニャーラン。


「オレ達「暁の大地」は注意深く観察したいと思います。

 ウチの副団長は、飛竜乗りの竜騎士ドラグーンですが、

 団長のオレを初めとして、

 長距離攻撃は得意としてないので、

 空中戦に参加するか、あるいは地上戦に回るか。

 を作戦の結果次第で決めたいと思います」


 ラサミスは色んな状況を想定して、慎重論を説いた。

 一見すれば消極的に思われるが、

 彼は自分だけでなく、他の団員の安全を確保する責任がある。

 故にラサミスの主張は、この場において間違ってなかった。

 シーネンレムスもラサミスの意見を柔軟に受け入れた。


「カーマイン……殿の意見もよく分かります。

 ですのでアナタ方は無理に空戦に参加しなくて結構です」


「お気遣いありがとうございます。

 ただ戦況がこちらに傾いたら、

 自分達も協力を惜しまないつもりです」


「ええ、ワタシとしてもそれで構いませんよ」


「……作戦が無事に成功するように祈っておきます」


 かつてシーネンレムスは、ラサミスの事を嫌っていた。

 というよりかは警戒していたが、

 彼も柔軟性を欠いた思考の持ち主ではない。


 過去は過去。

 と割り切って、今は普通にラサミスを評価していた。


「……魔族の若手幹部の諸君は、

 この作戦に不服かね?」


「いえ、自分はシーネンレムスきょうの作戦に賛成します」


「自分もバーナックと同じ気持ちです」


 バーナックとキャスパーも参加を表明した。

 魔将軍グリファムとレフ団長も参加の意思を示した。

 これによってシーネンレムスの作戦を実行する下準備が揃う。


「ではこれより大結界を発動します。

 レストマイヤーとアグネシャール。

 また周囲の魔導師の方々も協力して頂けると助かります。

 では全員、ワタシと一緒に魔力を練り上げてください。

 行きますっ! ――大結界発動っ!!」


 シーネンレムスはそう叫んで、全力で魔力を解放した。

 レストマイヤーとアグネシャール。

 メイリンや他の魔導師達も後に続く。


 シーネンレムスが設置した巨大な魔法陣に、

 周囲の魔導師達が上に乗って、

 次々と魔力が注ぎ込んで行く。

 すると魔法陣は眩しく点滅して激しく光った。


 そしてこの草原地帯を中心に巨大なドーム状の大結界が張り巡らされた。

 シーネンレムスや魔族の若手幹部が結集して発動させた大結界。

 その大結界は尋常ならざる魔力を帯びながら、物凄い勢いで周囲に広がった。


「もう少しです、更に魔力を注入してください」


「「了解です」」


 シーネンレムスの言葉に従い、

 レストマイヤーとアグネシャールも更に魔力を放出する。


「あ、あたしも頑張るわよぉっ!!!」


 負けじとメイリンも魔力を魔法陣に注入する。

 すると前方に張り巡らされた大結界の強度が更に増した。


「良し、とりあえずこれぐらいで良いでしょう。

 後は作戦通りに各自、動いてください」


 こうして下準備が整い、

 各自、作戦に向けてそれぞれの役割を果たそうとする中、

 空を駆けた空飛ぶ黒い船――メルカバーが遙か上空に現れた。


次回の更新は2025年7月20日(日)の予定です。


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