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第六百一話 能天使パワー(前編)



---三人称視点---



「ゾディアック・ブレードォォッ!!」


「アァァァ……アァァァ……!!!」


 剣聖ヨハンは、青毛の軍馬から聖剣サンドライトを振るい、

 また一体の天使兵てんしへいの撃破に成功。


「流石、団長。 これで敵は十七体まで減ったわ」


 黒い軍馬に乗った女侍おんなざむらいアーリアがそう叫んだ。

 能天使のうてんしパワーに率いられた天使兵てんしへいも臨機応変に動き、

 ラサミス達を苦しめたが、

 剣聖ヨハンがパワーに目もくれず、

 天使兵を一体ずつ確実に撃破していった。


 現時点でヨハンが四体撃破。

 ラサミスが三体、アーリアとミネルバが一体ずつという撃破スコア。


 だが敵の時魔法「タイム・クローズ」を受けて、

 バルデロンとクロエが体感速度を下げられていた。

 なので二人は後衛に下がり、

 メイリンとカリンの護衛を務めていた。


「コイツはエキサイティングな展開だぜっ!

 オレ様も超ハッスルするぜェェェッ!

 発砲はっぽう! 発砲はっぽう! 発砲はっぽう!」


 気勢を上げながら、

 栗毛のポニーを走らせて拳銃ハンドガンを乱射するラモン。

 一見適当に乱射しているように見えて、

 地上に居た前衛の天使兵の眉間と心臓部に確実に銃弾を撃ち込んだ。


「ラモン、ナイスよ! 私も続くわ!

 うおおお……おおおっ! スピニング・ドライバーッ!」


「ならばオレも行くぜ! ――ライガー・クロウッ!」


 ジュリーが栗毛のポニーを、

 デュークハルトが鹿毛の軍馬を走らせて、

 至近距離から得意の武器スキルを放ち、

 ラモンが銃撃した天使兵に確実に止めを刺した。


「これで敵は十五体まで減ったわ。

 大天使を除けば天使兵が残り十四体。

 焦らず対応して行けば、きっと勝てるわ」


 芦毛あしげの軍馬に乗ったクロエが中衛からそう叫ぶ。

 数的有利によって、ラサミス達の士気も自然と高まったが――


 だが天使側も動いた。

 集団戦では分が悪い。

 

 その事を悟ったパワーは、個の力で勝負に挑んだ。


「集団戦では勝ち目がなさそうだな。

 ならば俺の個の力でこの流れを変えるっ!

 ――ディバイン・フォースゥッ!!」


 強化能力きょうかアビリティによって、

 パワーの魔力と闘気オーラが急上昇した。

 同様に能力値ステータスも跳ね上がった。


 だがこれは序章に過ぎない。

 パワーは更に自己強化に磨きをかける。


「我は汝。 汝は我。 我は能天使パワー。 

 時をつかさどる時の神クロノよ! 我に力を与えたまえ! 

 ――クロノ・ドライバーッ!!」


 時魔法クロノ・ドライバーによって、

 パワーの体感速度やスピード、反射神経が更に急上昇した。

 でもそれで終わらない。

 

「我は汝、汝は我。 我が名は能天使パワー。 

 創造神グノーシアよ! 我に光の加護を与えたまえ! 

 エンチャント・オブ・ライトッ!!」


 仕上げに付与魔法エンチャントで光属性を強化。

 そして右手に持った青い大剣を頭上に掲げて――


「我は能天使パワー。 ウェルガリアの民に告ぐ。

 我が力を持って、貴様等に制裁を加える。

 この大剣――ディバイン・ソードに斬られたい者は、

 前へ出て来るが良いっ!」


 パワーは芝居がかった口調で煽りを入れる。

 だが口先だけではない。

 実力も剣技を兼ね備えた者の大言。

 故にラサミス達もその圧力に呑まれ掛かけたが――


「ラサミスくん、ここはボクとアーリアで

 能天使パワーと一戦を交えるから、

 キミは中衛でボク達の戦いを観てくれ。

 その際に何か気付いたら、教えてくれっ!」


「了解ですっ!」


「では行くぞ! ――ストレングス・エンハンスッ!!」


 ヨハンはまず最初に、

 職業能力ジョブ・アビリティ能力強化のうりょくきょうか』を発動して、自身の筋力値を強化させた。 


「私も行くわっ! ――軍神ぐんしんの構えっ!」


 今度は女侍アーリアは、馬上で右手に持った太刀を構えながら、

 さむらい職業能力ジョブ・アビリティ軍神ぐんしんの構え』を発動させた。

 

 これによってアーリアの力と素早さが向上したが、

 その代わり防御力が少し下がった状態となるが、

 トータルで見れば、利点の方が大きかった。


「我は汝、汝は我。 我が名はヨハン。 女神レディスよ!

 我に闇の加護を与えたまえ! エンチャント・オブ・ダークッ!!」


 ヨハンがそう呪文を紡ぐと、

 白銀の聖剣が闇色の波動に包まれた。


 ヨハンの聖剣サンドライトに、

 付与魔法エンチャントで闇属性が付与された。

 聖剣に加えて、天使の弱点属性である闇属性が宿った状態。


「ほう、貴様等も自己強化したようだな。

 ……なかなかの力と見た。

 良かろう、この俺が自ら手を下してくれようっ!」


「その勝負受けて立とう!」


 パワーは白い一角獣ユニコーンを。

 剣聖ヨハンは、青毛の軍馬を走らせた。


「――ゾディアック・ブレード!」


「――パワフル・スマッシュ!」


 両者共に馬上から剣技ソード・スキルを放ち、

 パワーの青い大剣とヨハンの聖剣が激しく激しく交差する。


 一撃の威力では、

 パワーが勝っていたが、

 聖剣サンドライトの強度で相手の剣を受け止める事が出来た。


 だが両者の体格差は明らかであった。

 身長168のヨハンに対して、

 パワーは195前後に及ぶ巨漢。


 単純な力量差でパワーが上回った。

 だがヨハンは低身長であった為、

 今までの戦いの大半は、自分より高身長の相手であった。


 それに加えて、

 第二次ウェルガリア大戦では、

 あの魔元帥アルバンネイルと何度も剣を交えた。


 その経験がこの場で生きた。

 お互いに剣を、大剣を振るい続けるが、

 決定打は生まれず、互角の展開が続いた。


 そして疲れた頃に、

 女侍おんなざむらいアーリアが前へ出て、

 ヨハンと入れ替わって、パワーと対峙した。


 その攻防を五分以上、観ていたラサミスは――


 ――強い事は強いが勝てない相手じゃない。

 ――今の所、特別なスキルや能力アビリティも使ってない。


 ――とはいえ相手の手札はまだ残しているだろう。

 ――だからオレはこの戦いを観戦しつつ、

 ――自分の出番が来たら、

 ――あの巨漢の大天使を一気に叩く。


 そうラサミスが思う中、

 馬上では一進一退の攻防が続いていた。



次回の更新は2025年3月27日(木)の予定です。


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― 新着の感想 ―
更新お疲れ様です。 パワー、強いですが倒せない相手では無さそうですね。 アーリアでもそれなりの攻防ができるなら、ラサミスが動けば倒せそうですね。 問題はやはり、厄介な時魔法になりそうですね。 最近は…
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