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【天使編開始!】黄昏のウェルガリア【累計100万PV突破】  作者: 如月文人
第八十二章 権天使プリシンパティ
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第五百八十五話 権天使プリシンパティ(後編)



---三人称視点---



「――クレセント・ストライク」


「――トリプル・ストライク」


 権天使けんてんしプリシンパティと剣聖ヨハンがお互いに剣技ソード・スキルを繰り出す。

 剣術の腕はほぼ互角、あるいはヨハンが勝ってたかもしれない。


 だが今のプリシンパティは、

 強力な支援魔法バフがかかった状態。

 故に剣聖ヨハンと言えど、

 彼女と対峙するのは、相当骨が折れる作業であった。


 しかしそんな中でも剣聖ヨハンは、

 基本受け身に回り、カウンター技を中心に

 プリシンパティに傷を負わせていった。


 プリシンパティもその都度に回復魔法で傷を癒やすが、

 そんな彼女に異変が起き始めた。


「……っ!?」


 急に激しい頭痛がして、視界が定まらなくなった。

 意識を集中しないと、立っているのも辛い状況。

 だが頭痛は治まらない、むしろ悪化するばかりだ。


 地に足をつけながら、左手で額を押さえるプリシンパティ。

 その姿を見て、剣聖ヨハンが口の端を持ち上げた。


「ふっ、どうやらボクの狙い通りのようだな。

 大天使と言っても、身体の構造はボク達人間と同じだね」


「……どういう意味だ?」


「答える義理はないよ」


「……何かしたのか?」


「さあ? どうだろうね?」


 あくまでとぼけるヨハン。

 今のプリシンパティは、極度の貧血状態。

 単純に身体から血液が抜けすぎたのだ。


 だが彼女は地上世界に降臨したのは、

 かなり久しぶりであり、

 前の戦いでは、殆ど傷を負わなかった。


 また前回の戦いの時と今では受肉した肉体も違った。

 それ故に彼女も人の肉体の特徴に関して色々と忘れていた。


 だから極度の貧血状態によって、

 このような状況になっているという事が理解出来なかった。


 更には時魔法「クロノ・ドライバー」で、

 体感速度や意識が強化された為、

 貧血などによる体調不良が更に強く感じた。

 常人ならばこの時点で立ってられないだろう。


「ラサミスくん、好機チャンスだ。

 二人で一気に攻めるぞ!」


「ヨハン団長、了解です!」


 だがプリシンパティにも大天使としての意地がある。

 眼が眩む中、彼女は全神経を集中させて、

 迫り来るラサミスとヨハンを迎え討った。


「――諸手突きっ!」


「――ピアシング・ドライバーッ!」


「舐めるなぁっ! ――ダブル・ストライクゥッ!」


 体調不良ながらも、プリシンパティは果敢に戦う。

 相変わらず頭がくらくらするが、そこは精神力で耐えた。


 ラサミスやヨハンと何度も切り結ぶが、

 ラサミス達は大技ではなく、

 小技やカウンター技で、

 ちまちまとプリシンパティにダメージを与える。


 その度にプリシンパティは、回復魔法で治療するが、

 やはりこの不快な頭痛が治まる事はなかった。


 ダメ元で治療魔法も唱えたが、

 体調不良の原因は、血液不足だったので、

 この貧血状態が回復する事もなかった。


『ラサミスくん』


『はい、何でしょうか?』


 二人は小声で『耳錠の魔道具(イヤリング・デバイス)』で言葉を交わす。


『敵の底力や残されたスキルなどはまだ不明だが、

 どうやら相手は、

 自分が極度の貧血状態である事を理解してないようだ』


『……そのようですね』


『ここは小技やカウンター技で応対して、

 敵が更に貧血を悪化させたところで、

 大技で攻める、という筋書きはどうかな?』


『良いですね、その戦術が良いと思います』


『うむ、ここからはスキルや能力アビリティを出し惜しむな。

 この手の敵は殺せる時に殺すべきだ』


『……同感です』


『うむ、じゃあ行くぞっ!』


『はいっ!』


 対するプリシンパティもこの状況をどう打破するか、

 思考を張り巡らせていた。


 とりあえずこの一対二の状況は避けたい。

 銀髪のヒューマンもそうだが、

 金髪のヒューマンは輪を掛けて強かった。


 ――この状態で奴を倒すのは難しい。

 ――ならば奥の手の魅了攻撃を使うしかない。


 ――だがこの能力アビリティも使えて一回。

 ――ここはあの金髪のヒューマンを魅了する!


「ハアァア! ――ゾディアック・ブレードォッ!」


「――我は汝、汝は我。 我が名は権天使プリシンパティ。 

 創造神グノーシアよ。 我に力を与えたまえ! 

 『天使エンジェルズの誘惑(・テンプテーション)』!!」


 そう呪文を紡ぐと、

 プリシンパティの翡翠色の瞳がきらりと光った。

 プリシンパティが数多く持つ魅了スキルの中でも、

 最高クラスの威力と効果を持った固有能力ユニーク・アビリティだ。


「う、うあ、あああっ……あああっ!!」


 激しく喘ぐ若き剣聖。


「ヨハン団長! これは魅了攻撃かっ!」


「ラサミス、フィジカル・リムーバーよ!」


 後方からミネルバがそう叫んだ。

 それによってラサミスも落ち着きを取り戻す。


「――フィジカル・リムーバーッ!!」


 ラサミスは左手を振りかざし、

 状態異常解除の職業能力ジョブ・アビリティを発動させた。


 次の瞬間、ラサミスの左手から、

 放出された白い波動が剣聖ヨハンの身体に降り注がれる。

 やや間を置いてから、剣聖ヨハンは、正気に戻った。


「……ラサミスくん、ありがとう。

 う、うううっ……うううぅっ!」


 魅了状態は解除されたが、

 ヨハンの全身に言い知れない不快感が襲った。

 大天使の固有能力ユニーク・アビリティの魅了攻撃。


 その威力と効果は、

 魔族の幹部や連合運の主力級エースきゅうでも瞬時に戦闘不能に追いやる程のレベルであった。


「ら、ラサミスくん。 ぼ、ボクはもう動けそうにない。

 後はキミ、そしてミネルバくんやクロエ達と力を合わせて戦う……んだ」


「……了解ですっ!」


 ラサミスはそう返事して、

 右手に聖刀を持ちながら、全力で地を蹴った。


 ――ヨハン団長はもう戦えない。

 ――この状況ではオレがやるしかねえ!

 ――頑張れ、ラサミス!


 ――オレの持てる全てを持って、相手を討つ!



次回の更新は2025年2月18日(火)の予定です。


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― 新着の感想 ―
更新お疲れ様です。 まさか、ヨハンまでをここまで追いやるとは... ラサミス達との共闘で良かったと同時、フィジカル・リムーバーがどんどん強くなっていきますね。 これがあるだけで回復要員として最前線に…
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