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第五百四十八話 千軍万馬(後編)


---ラサミス視点---



「遠路遥々、ようこそお越し下さいました。 

 それでは皆様、お好きな席にお座り下さい」


 巫女ミリアムは薄い水色の羽衣を身にまとい、

 胸元には金の十字架をかけていた。

 相変わらず美人さんだが、表情が固いな。

 まあ状況が状況だし無理もないか。


 オレ達は館の一階の会議室で、

 中央にある部屋の左側のテーブルに巫女ミリアム、エリアス参謀長。

 マリウス王弟、ニャラード団長。

 そして「暁の大地」からはオレとミネルバがこの場に参加した。


 右側のテーブルには、

 魔将軍グリファム、エンドラ。

 若手幹部のレストマイヤーとアグネシャール。


 「ヴァンキッシュ」からは、

 団長ヨハンとアーリアが参加して、

 同じく右側のテーブルの椅子に腰掛けていた。


「こうして集まって頂けたのは、

 非情に有り難い事ですが、

 今回の事態は我々、エルフ族だけの危機ではありません。

 実は――」


 そして巫女ミリアムは、

 エルフ領に起こっている問題を端的に告げた。


 噂では天使は、空中要塞なる物を使ってるとか。

 後、エルフ族の旧文明派を利用するとはな。

 どうやら少々、面倒な事になりそうだな。


「それで単刀直入に聞きますが、

 魔族、そして猫族ニャーマンの方々は、

 事前に天使の存在を知っていたのではないのでしょうか?」


 そう言って、探るような視線を向ける巫女ミリアム。

 だがグリファムや他の幹部。

 それとマリウス王弟やニャラード団長は、堂々とした口調で――


「ええ、我々は事前に知っておりました。

 数ヶ月前に竜人領でいざこざが起きましたが、

 その際に天使の一団と遭遇しました。

 ですが魔族と竜人族の話し合いの結果、

 他の三種族には秘密にするようにしました」


「ボクらも途中まで秘密にされてたけど、

 魔王陛下との謁見の場で、

 その情報が伝えられた、という感じニャン」


「……そうですか。

 出来る事なら我々にもお伝えして欲しかったですわ。

 我々は仮にも同盟関係にあるじゃないですか?」


「事が事ですからね。

 ですが天使が降臨したら、

 いつでも戦える準備は整えており、

 このように救援に駆けつけました」


 グリファムが淡々とそう言う。

 こう言われたら、

 巫女ミリアムも強くは言えないだろう。


「まあ……そうですわね。

 この件に関しては不問としましょう。

 それでは早速、具体的な戦い方や戦力の配置の話をします。

 ここに居る魔族、猫族ニャーマン

 そして連合ユニオンの方々は、

 旧エルドリア城の防衛戦に参加してもらいます」


「ここに居る全員ですかニャ?」


 と、マリウス王弟。


「ええ、この大聖林にも数万の防衛部隊を置きますが、

 旧エルドリア城、そしてエルフィッシュ・パレスは、

 エルフ領の主要都市であります。

 この二拠点を落とされる訳にはいきません」


 まあ特にエルフィッシュ・パレスは、

 エルフ族の経済の拠点でもあるしな。

 だから何が何でも護りたいという気持ちはよく分かる。


「皆様、不服はありませんか?」


 巫女ミリアムの要求に周囲の者達は「ええ」と応じた。


「この戦いはエルフ族の命運を賭けた戦いになるでしょう。

 我々の敵は天使とそれに従属する旧文明派ですが、

 このエルフ領が陥落すれば、

 天使達は次は猫族ニャーマン領。

 あるいはヒューマン領へ侵攻するでしょう」


「まあそうなるだろうね」


 と、マリウス王弟。


「だからこの戦いは、

 あなた方にとっても他人事ではありません。

 なのに共に協力して、天使達の侵攻を食い止めましょう」


 巫女ミリアムの言葉に、

 この場に居る一同が「はい」や「ええ」と頷いた。

 結局のところは戦うしかない。


 仮に講和を結ぶにしても、

 こちらが有利な状況を作るべきだからな。


「では善は急げ、です。

 戦力や準備を整え次第、

 旧エルドリア城へ向かってください」


 端的にそう伝える巫女ミリアム。

 こうしてオレ達も猫族ニャーマンや魔族と共に

 旧エルドリア城へ向かう事となった。



---三人称視点---



 二日後の6月17日。

 ラサミス達「暁の大地」の団長と団員四名。

 連合ユニオン「ヴァンキッシュ」も総勢二十名。


 またエルフィシュ・パレスで、

 高額の報酬で雇われた傭兵及び冒険者五百人。


 この冒険者を中心とした部隊の指揮は、

 「ヴァンキッシュ」の団長ヨハン。

 そしてラサミスにも副司令官の権限が与えられた。


 更には猫族軍ニャーマンぐん王国魔導 (おうこくまどう)猫騎士団 (ねこきしだん)魔導猫騎士まどうねこし二千匹。

 その全権をつかさどるマリウス王弟は、

 他にも猫族兵ニャーマンへい三千匹を引き連れて、

 旧エルドリア城へやって来た。


 魔王軍に関しては、

 魔将軍グリファムが総指揮官を務め、

 エンドラ、若手幹部のレストマイヤーとアグネシャールの三人が

 グリファムをサポートする形のようだ。


 ちなみに魔王軍は総勢で五千人。

 エンドラがサキュバス部隊を五百人。

 レストマイヤーとアグネシャールもそれぞれ五百人の兵が与えられた。


 これにエルフ族のネイティブ・ガーディアンの一万人。

 それぞれの戦力を合せたら、

 総兵力は二万人を超える事となる。


 これだけの戦力が一カ所に集まるのは。

 第二次ウェルガリア大戦以来であった。


 だがその時、敵対関係であった魔族と四大種族は、

 今では共闘する形で、

 未知なる生物・天使の一団を迎え撃とうとしていた。


 天使側の戦力は、天使騎士エンジェル・ナイト250名。

 そしてその天使達に強制洗脳された魔物、魔獣が約五千匹。


 また旧文明派のエルフ族によって、

 結成された「エルドリア解放軍」も総勢五千人を超える一大戦力となっていた。


 だが「エルドリア解放軍」自体は所詮は烏合の衆。

 問題は天使達の一団だ。

 

 天使。

 神話や聖書、経典では知られた存在だが、

 実際に戦うとなると、

 やはり歴戦の猛者もさ達でも不安や緊張を感じていた。


 そして迎えた6月18日。

 旧エルドリア城の北東部のネザライト平原で、

 五大種族の連合軍と天使の一団の戦いが始まろうとしていた。



次回の更新は2024年11月24日(日)の予定です。


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― 新着の感想 ―
更新お疲れ様です。 初手から総力戦。 天使もそうですが、もしけして魔族の新幹部も初戦闘ですかね? これまであまり絡みはなかったイメージですが、これを機に仲良くなれるか?それとも、単なる噛ませ犬として…
いよいよ戦いが始まりますね。果たしてどうなるのか気になります!
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