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【天使編開始!】黄昏のウェルガリア【累計100万PV突破】  作者: 如月文人
第七十章 伝説の猫族(ニャーマン)
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第五百話 伝説の猫族(ニャーマン)・(前編)


---ラサミス視点---



 翌日の3月28日。

 どうやらで「伝説の猫族ニャーマン」こと、

 故ジェン・アルバ将軍の墓は、

 王都ニャンドランドの郊外の共同墓地にあるようだ。


 王城から共同墓地までは、結構距離があるそうなので、

 オレ達はそれぞれ馬車に乗って、共同墓地に向かった。


 ちなみに今回の墓参りの同行者は、

 猫族ニャーマン側がアーベル王太子とマリウス王子。

 そして王子のお供のジョニーとガルバン。

 この四人が乗る豪奢な馬車が最前列。


 護衛役として、ニャラード団長とケビン団長。

 そしてオレとドラガンの二人を合わせた計四人を乗せた

 やや豪奢な馬車が前から二番目、

 メイリン達を乗せた普通の馬車が中列。


 そして最後列を走るゴシック調の馬車には、

 魔王レクサーとその側近達が乗っている。

 実は言うとアーベル王太子に――


「カーマイン殿は魔王陛下と個人的に親しいようなので、

 魔王陛下とご同席してもらって宜しいでしょうか?」


 と、言われたが丁寧にお断りした。

 そりゃオレもレクサーとはある程度の面識がある。

 だが魔王とその側近達に囲まれて馬車なんか乗りたくない。


 特にあの老魔族……シーネンレムスには嫌われているからな。

 あんな爺さんや魔王と一緒の空間など、ある種の拷問だよ。

 

 まあそんな感じで皆で仲良く馬車に乗って、

 郊外の共同墓地に向かっていた。

 オレはそんな中、馬車の背もたれ部分に背中をあずけた。


 ちなみにドラガンやニャラード団長、

 ケビン団長も同じ姿勢をしている。

 ちょっと空気が重苦しいな。

 軽く話題でも振ってみるか。


「ちょっと質問いいッスか?」


「……何だね?」


 と、ニャラード団長。


「え~とジェン・アルバ将軍ってそんなに凄かったんスか?

 オレも中学の歴史の授業で、彼について少し学びましたが、

 実は詳しい事はあまり知らないんですよね~」


 するとニャラード団長が「ふむ」と頷いて、

 それからゆっくりした口調で語り出した。


「まあヒューマンの君があまり知らないのも無理はニャい。

 だがジェン・アルバ将軍は、我等、猫族ニャーマンにとっては、

 救国の英雄だ、彼が居たらから第一次ウェルガリア大戦に勝てた。

 と言っても過言はニャいだろう」


 まあその辺もちょこちょこ耳に挟んだ話だけどな。

 でも今から六百年も前の話だからな。

 だから将軍の偉業を聞いても、いまいちピンとこないんだよな。


「ニャラード団長の仰る通りだ。

 だがある程度は猫族ニャーマンが彼の偉業に

 尾ひれをつけて、彼の功績が伝説化、神話化した面はあるだろうな」


 ドラガンがさりげなくそうフォローを入れた。

 まあそれはそうなんだろうな。

 歴史上の人物の実像なんかなかなか分からないよな。

 

 でも魔族の老魔族――シーネンレムスがあえて、

 アルバ将軍の墓参りしたい、という事は、

 アルバ将軍が魔族側にとっても賞賛すべき敵将。

 だったという事の証明にならないか?


「……あの大賢者ワイズマンならば、アルバ将軍の当時の功績が

 本物か、嘘なのかも分かるのかもしれないな。

 実際、こうしてわざわざ墓参りを希望してるし……」


「それは私も思いましたよ。

 少なくとも敵将に敬意を示されるべき将軍。

 ……だったのは間違いないでそう」


 と、ケビン団長も会話に加わってきた。

 ふうん、なんだかんだでニャラード団長とケビン団長。

 それにドラガンもその辺を気に掛けているようだな。


 でもやはり第一次ウェルガリア大戦の英雄だもんな。

 その英雄の墓にかつての仇敵きゅうてきが訪れる。

 これはこれで一つのビッグ・イベントかもしれないな。


 でもオレはあの爺さんに嫌われてるからな。

 だからオレはこの件で余計な口を挟むつもりはない。

 正直、あの爺さん――シーネンレムスは苦手だ。


 それと同時にあの爺さんは魔族の中でも重鎮にあたる。

 だからあの爺さんと揉めると、

 オレとレクサーの関係にも響きそうだな。

 その辺には気をつける必要があるな。


「しかしアルバ将軍は、猫族ニャーマン英雄えいゆうですよね?

 そんな彼のお墓が共同墓地というのは、

 何か理由があるんスか?」


 オレは話題を変えるべく、そう話を振った。

 するとニャラード団長がその疑問にしっかり答えてくれた。


「嗚呼、カーマイン君の疑問はもっともだニャン。

 私も子供の頃は不思議に思ったものさ。

 だがアルバ将軍は生前自身が神格化された事で、

 内心、辟易してたという話だ。

 だから自分の墓は、特別視される事のないように、

 共同墓地を自身で選んだ、という逸話があるニャ」


「へえ、意外と謙虚というか、

 その辺は割と庶民派の将軍だったんスね」


「まあそうかもしれんニャ。

 でも考えてみるがいい、カーマイン君。

 君も魔王陛下相手に互角以上に戦った英雄と呼べなくない存在。

 だけど君自身は自身を神格化される事を好むかね?」


 と、ケビン団長。


「それは……」


 ケビン団長の言葉に、オレは一瞬言葉に詰まった。

 まあオレ自身、自分を英雄だなんて思ってない。

 だが時々、オレをそうもてはやす連中が居るのも事実だ。


 でもそれが嬉しいか。

 と言えばオレ自身は全然嬉しくない。

 というかハッキリ云えば嫌だ。


「……成る程。 だからアルバ将軍は、

 死後、特別視される事を嫌い、

 共同墓地での埋葬を望んだのかもしれないですね」


「うむ、私もそう思っているニャ」


「ええ、私も」


 ニャラード団長とケビン団長が同意見を述べた。

 そっかあ、案外そうなのかもしれないな。


「……どうやら共同墓地のあるニャルルの森に着いたようだ」


「そうッスか。 おお、アレが共同墓地ですか!!」


 オレは馬車の窓から、外の景色を見て思わず声を上げた。

 窓の外から広大な森に囲まれた広い墓地が見えた。


 木々に囲まれた墓地は、

 やや質素な雰囲気であったが、

 木々も墓地もよく手入れが行き届いていた。


 普通なら森の中に墓地があれば、

 鬱蒼とした空気を漂わせていただろうが、

 この眼前の墓地は、緑と墓地が絶妙にマッチしていた。


「到着したようだな、では馬車を止めて降りよう」


 ニャラード団長がそう言って、

 御者に「ここで止めてくれ」と伝えた。

 するとすぐに馬車は止まった。


 それからオレ達は馬車からゆっくり降りた。

 アーベル王太子やレクサー達、メイリン達も馬車から降りていた。


 天気も快晴で墓地なのに、

 何処か落ち着いた雰囲気が漂っていた。

 共同墓地というから、もっと寂れた感じかと思ったが、

 墓地全体が小綺麗な感じで、

 雰囲気も見た目もイメージしていたものとは違った。


「皆、揃いましたかな?

 ではここからは団体行動で行きます。

 私とマリウスが先頭を歩きますので、

 皆様はその後について来てください」


 黒い喪服姿のアーベル王太子が凜とした口調で周囲にそう告げた。

 そしてオレ達は、王太子の言葉に従い彼の後について行った。



次回の更新は2024年8月8日(木)の予定です。


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― 新着の感想 ―
[一言] 更新お疲れ様です。 英雄と言うものは大変ですね。 真の英雄ほど自分を謙遜するものなので、アルバ将軍もラサミスも真の英雄と言えるでしょう。 ラサミスが死んで、数百年。ラサミス神なる神が生まれ…
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