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【天使編開始!】黄昏のウェルガリア【累計100万PV突破】  作者: 如月文人
第七十章 伝説の猫族(ニャーマン)
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第四百九十六話 父親として


---ラサミス視点---


 3月15日正午過ぎ。

 エリスが無事に出産した。


 特に何の問題もない、ごく普通の出産だった。

 早産でもなく、逆子でもなかった。

 エリスのお母さん、それとこの日に向けて

 実家からオレのお袋マリンと兄貴夫婦が駆けつけてくれた。


 それとドラガンの知り合いの経験豊富なヒューマンの助産婦が

 エリスのお母さんやお袋、アイラと一緒に素早く動いてくれた。

 

 それから数時間後。

 赤子は無事に生まれて、元気な産声を上げた。

 赤子は男の子だった。

 オレと同じ銀髪の可愛いらしい男の子だ。


 赤子は助産婦さんの手によって抱き上げられて、

 それからすぐにエリスの手に渡された。

 エリスは赤子を抱いて、小さく嘆息する。


「良かった、健康な赤ちゃんで……」


「ああ、そうだな。 エリス、お疲れ様」


「うん」


 正直未だに実感が湧かない。

 このオレが父親になったんだよな……。

 

「ラサミス、アナタも抱いてあげて……」


「あ、ああっ……」


 オレはゆっくりと赤子を抱いた。

 小さい手に、小さい目、小さい口、そして銀色の髪。

 ……この子がオレとエリスの子か。

 そう思うと胸に熱いものがこみ上げてきた。


「これでライルに続き、ラサミスもお父さんになったのね。

 そして私は本格的にお婆ちゃんになるのよね」


 と、お袋。


「いえいえ、お義母かあさんはまだまだ若いですよ?」


「アイラ……義姉ねえ様の言うとおりですわ」


 と、エリス。


「マリンさん、私は貴方の気持ちよく分かるわよ」


 そう言って両肩を竦めるエリスのお母さん。


「セリスさん、カーマイン家とシャールトレア家が

 協力して孫達を育てて行きましょうね!」


「ええ、勿論ですよ!」


 自然と固まる女性陣の団結力。

 こういう時の女性の団結力は実に頼もしい。


「ライラにも従兄弟いとこが出来たようだな」


 しみじみした表情でそう言う兄貴。


「兄貴……子育ての助言よろしく頼むよ」


「嗚呼、まあオレもアイラや母さんに頼りがちだがな」


「そうなのか?」


「嗚呼……」


 どうやら兄貴も父親としては、まだ新米のようだ。

 でもオレとしては、色々兄貴を頼りにしたいぜ。


 そして子供の名前は、ラミレスと名付けた。

 オレとエリスの名前を何となく合わせた感じだ。

 今日からこの子はラミレス。

 ラミレス・カーマインだぁっ!


---------


 子供――ラミレスが生まれて約一週間が経過したが、

 産後の経過は順調だった。

 母子共に見事に健康。


 実家の仕事もあるので、

 お袋と兄貴夫婦は既にハイネガルに帰還していた。

 基本的にはオレとエリス、それとエリスのお母さんの三人で

 この家に住んでいる形だ。


 ラミレスが生まれて、一週間後に

 エリスのお父さん――フェイムさんが来て、

 約三日ほどこの家に泊まって一家団欒したが、

 彼にもハイネガルの聖レディス教会での仕事があったので、

 四日目にはリアーナの瞬間移動場テレポートじょうから、

 瞬間移動魔法テレポートで王都ハイネダルクに戻った。


 そして二日後の3月24日。

 メイリンやミネルバ達も

 産まれた赤ん坊を見に来るために自宅に訪れてきた。


「赤ちゃん、とっても可愛い~」


「うん、エリスに似てとても可愛い子ね」


 メイリンとミネルバが興奮気味にそう言う。


「おい、おい、オレの子でもあるんだぜ?」


「勿論分かっているわよ!

 アンタに似た銀髪も良いと思うわ」


 と、メイリン。


「うん、あたしはラサミスお兄ちゃんに似てると思うよ」


「うん、うん、あたしもそう思うだわさ」


 マリべーレと妖精フェアリーカトレアがさりげなくフォローする」


「あ、そうだ。 ドラさんがラサミスを呼んでいるのよ。

 落ち着いたら、拠点ホームに来て欲しいって!

 何でも猫族ニャーマンと魔族に関する話らしいわ」


 メイリンは、思い出したかのようにそう告げた。


「……どうやら厄介事のようだな。

 エリス、少し出かけて来て良いか?」


「うん、多分お仕事の話でしょ。

 ラミレスと家の事はわたしとお母さんに任せて!」


「そうよ、だからラサミスくんは遠慮せず行ってらっしゃい」


 と、エリスのお母さん。

 正直、赤ん坊が生まれたての状態で、

 家を空けたくないが、ドラガンがわざわざオレを呼ぶんだ。

 多分、それなりに重大な話なんだろう。


「じゃあ行って来るよ。

 メイリン、ミネルバ、マリべーレ。

 お前等もオレについて来てくれ!」


「「うん」」「いいわよ」


 三十分後。

 オレ達は連合ユニオン拠点ホームに到着。

 すると受付にいたシンシアに声を掛けられた。


「ラサミス、お久しぶり。

 どうだい? 父親になった気分は?」


「シンシア、意外と良い感じだよ。

 ところでドラガンがオレを呼んでいると聞いたが……」


「ああ、二階の談話室で待ってるわよ。

 ドラガンだけでなく、ジュリー、バルデロン。

 それとジウバルトも居るわよ」


「そうか、ありがとう。

 それじゃ皆、二階の談話室へ行くぞ」


「「「うん」」」


 そしてオレ達は二階の階段を登り、談話室に向かった。

 オレは談話室に到着するなり、

 右手で控えめにドアをノックした。


「ああ、空いてるぞ。 入るが良い」


「んじゃ入るよ」


 そしてオレ達は、談話室の中へ入った。

 談話室の黒革のソファにジュリー、バルデロンが腰掛けており、

 ジウバルトは、壁に背中をもたれさせて、両腕を組んでいた。

 ドラガンは長机の前の椅子にちょこんと座っていた。


「来たか、ラサミス」


「うん、それで何の話なんだい?」


「まあ立ち話もなんだ、そこの椅子に座れ」


「ああ」


 オレはとりあえず近くの椅子に座って、

 ドラガンに視線を向けた。

 するとドラガンは「コホン」と咳払いして用件を述べ始めた。


「最近、猫族ニャーマンと魔族が懇意していてな。

 ガリウス三世陛下やアーベル王太子殿下は、

 それを歓迎しているのだが、軍務を預かるマリウス王子が

 少し難色を示しているようだ」


「成る程、その辺の事を軽くフォローする感じなのかい?」


「それもあるが、魔族にも用件があるようだ」


「魔族の用件? 面倒臭い感じのやつ?」


 オレは端的にそう問うた。 

 だがドラガンは、首を左右に振って否定した。


「いやそうでもない。

 魔族の幹部に大賢者ワイズマンが居ただろ?」


「ああ、あの老魔族かあ~」


 確か名前はシーネンレムスだったな。

 でも何となくだがオレはあの爺さんが苦手だ。

 向こうもオレの事を嫌ってそうだしな。


「あの御仁ごじん猫族ニャーマン領の故ジェン・アルバ将軍の墓を訪れたい。

 と言っているそうだ。」


「ジェン・アルバ? あの伝説の猫族ニャーマンだよな?」


「ああ、どうやらあの御仁は第一次ウェルガリア大戦で、

 故ジェン・アルバ将軍と戦場でしのぎを削ったらしい」


「ほへえ~、第一次ウェルガリア大戦の生き残りか。

 そう考えると凄いね。 ある意味、歴史の生き証人だ」


「まあな、あの御仁だけでなく、

 魔王レクサー……陛下も来るようだからな。

 だから魔王の盟友であるお前が居た方が何かと良いだろう:


「そうだな、オレは別に構わんよ」


「そんな訳だ、なので今回の遠征には、

 拙者、ラサミスの他にはバルデロン、ジウバルト。

 それとジュリー、ミネルバ、メイリン、マリベーレにも

 同行してもらいたい」


「はい、久々に魔王陛下にお会いしたいです」


「……オレも陛下に会えるなら、ついていくよ」


 魔族の二人が同意する。


「私も猫族ニャーマンの問題だから同行するわ」


「あたしもとりあえず同行するわ」


「うん、久々の猫族ニャーマン領!

 色々と楽しみだわ!」


 ジュリー、ミネルバ、メイリンも同行に同意する。


「あたしも春休みだから、

 久々に外の世界に行きたいわ。

 最近は学校中心の生活だったから……」


「うん、たまには羽を伸ばす必要があるだわさ」


 と、マリベーレと妖精フェアリーカトレア。

 どうやら全員の同意を得られたようだな。

 今回の同行者は、ドラガン、バルデロン、ジウバルト。

 そしてジュリー。ミネルバ、メイリン、マリベーレ。


 オレを含めて全員で八人+妖精フェアリー一匹か。

 まあ子供が産まれたばかりで、

 家をあまり空けたくないが、これも仕事だ。


 そしてオレはエリスとエリスのお母さんの許可を取って、

 翌日に備えて旅の準備をした。


 最近はあまり遠出してなかったからな。

 だから猫族ニャーマン領へ行くのも、

 レクサーに会うのも少し楽しみだぜ。


次回の更新は2024年7月30日(火)の予定です。


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― 新着の感想 ―
[一言] 更新お疲れ様です。 カーマインは「ラ」から始まる人が多いですね。 そして、伝説の猫族ジェン・アルバ将軍の墓参りへ。 シーネンレムスとの関わりを作るためか、ジェン・アルバの話を触れておく必…
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