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第四百九十四話 披露宴


---ラサミス視点---



 9月26日の十五時過ぎ。

 披露宴の会場は連合ユニオン・『暁の大地』の拠点ホーム

 披露宴の参加者は、オレの両親と兄貴夫妻、そして姪っ子のライラ。


 そしてドラガン、メイリン、ミネルバ、マリべーレと妖精フェアリーカトレア。

 バルデロン、ジュリー、ジウバルトといった連合ユニオンの仲間。

 それに加えてエリスの両親二人。

 

 この面子に料理人シェフのジャンやシンシア。

 それにアロンやポロンなど連合ユニオンの団員が加わる形だ。

 まあ殆どの参加者が身内のようなものだ。


 披露宴で出す料理は、料理人シェフのジャン。

 それとオレの両親や兄貴のライルが手伝ってくれた。

 というか殆どの料理がこの四人とエリスで作られた。


 エリスもそれなりに料理は出来るが、

 この四人は言わばその道のプロ。

 だからこの場では、遠慮無く彼等に手伝ってもらった。


 料理が出来るまでの間には、

 他の参加者には、拠点ホームのリビングルームや休憩所で、

 小休止してもらう事にした。


「やっぱりお肉が多い方がいいかしら?」


「そうね、エリスちゃん。 牛肉、豚肉、鶏肉、魚肉。

 一通り揃えているわ。 後は適当に盛り付けるだけよ」


「ありがとう、叔母おば様。 いえお義母かあ様!」

 

「そっか、アイラさんに続いて、

 エリスちゃんもウチの娘になったんだね。

 そう考えると、私達って幸せよね? ねえ、お父さん」


「……そうだな」


 お袋の言葉にそう答える親父。

 そっか、エリスにとってはウチの両親も身内になるんだな。

 それに加えて義姉のアイラ、姪っ子のライラ。

 気がつけばカーマイン家の女性率が一気に跳ね上がったな。


「今回は猫族ニャーマンの参加者が多いな。

 だから魚料理を多めにしておこうよ」


「そうだな、その辺はジャンに任せるよ」


「ああ、任せてくれ」


 兄貴とジャンがそう言葉を交わす。

 まあ猫族ニャーマンは確かに魚好きでもあるが、

 同様に牛肉や鶏肉も普通に好きなんだけどな。


「ラサミス、アンタは主催者なんだから、

 料理場は私達に任せて頂戴。

 アンタは時間が来るまで休憩しときなさい」


「お袋、分かったよ」


 どうやらオレはお邪魔のようだ。

 ならば言われたとおり料理が出来るまで休んでおこう。

 そしてオレは二階に上がり、

 談話室で小休止した。


 それから三十分後。

 料理が出来上がったので、

 時間通りに会食する事にした。


 さあ、大事な披露宴だ。

 ここからは少し気合いを入れて、シャンとするぜ。


---------


 会場は立食形式にする事にした。

 この食堂もそこそこの広さがあるから、

 この方が参加者としても良いだろう。


 勿論、疲れた時に、端の方に椅子も用意しておいた。

 とりあえず、全員に酒のコップ、あるいはジュースのコップを配った。

 と言っても酒を飲むのは、オレの両親、兄貴夫妻。

 それとエリスの両親とミネルバとジャンくらいだろうな。


 参加者の多くは十代の少年少女。

 まあ十五歳で成人扱いだから、

 飲もうと思えばいくらでも酒を飲めるが、

 オレを含めて団員の多くはあまり酒が好きじゃない。

 なのでジュース組には、無難にオレンジジュースを注いでおいた。


 乾杯の音頭は主催者であるオレの役目だ。

 オレはエリスと並んで、皆の前に立った。

 自然と皆の視線がオレに集まる。


「……、本日はお忙しい中、わざわざお集まり頂き、

 誠にありがとうございます。

 改めて申しますが、私ラサミスと、こちらのエリスは、

 結婚します。 まだ互いに若輩者ですが、

 二人で助け合って、今後の人生を歩んで行きたいと思います。

 ここに居る参加者の皆様は、

 私達夫婦が特に親しくさせてもらった方々です。

 今後とも何かとお世話になると思いますが、

 どうか宜しくお願いします」


「挨拶が長いわよ!

 もっと短く! 短くなさい!」


 と、ジュース片手に言うメイリン。


「そうよ、無礼講よ、無礼講」


 ミネルバも場の空気を和らげてくれた。

 そうだな、堅苦しいのもアレだな。


「そうだな、オレはエリスとお腹の子を幸せにするよ。

 だから皆、今後とも宜しくな! それでは乾杯!」


「乾杯!」


 そして皆が酒やジュースの入ったコップを掲げた。

 ……さあて、楽しい会食だ。

 皆で食って、飲んで、大騒ぎするか!


---------


 宴会は問題なく進んだ。

 皆、自由に料理を食べて、飲んで、会話を重ねた。


「ぷっ……ぷっはぁっ! も、もう無理」


 お袋と飲み比べしていたミネルバがとうとうダウンした。

 

「はっ、はっ、はっ! 小娘に負けるあたしじゃないよ!」


 高らかに勝利宣言するお袋。

 その傍らでエリスとアイラがミネルバを奥のリビングへ連れて行く。

 こういう気配りを出来るところは素敵だな。


「ニャハハハッ! 酒だ! 魔タタビざけを持って来い!」


「ドラガン、少し飲み過ぎだぞ?」


「ニャハハハ、ライル! そう言うニャよ~?

 こういう祝いの席じゃ騒ぐのが客の務めよ!」


「ふう、そう言えばお前は悪い酔いするタイプだったな」


「ニャハハハッ! 今日はとても気分が良いんだニャ!」


 どうやらドラガンもすっかり出来上がっていた。

 ちなみに十代、二十歳前後の参加者達は、

 オレの両親や兄貴、ジャンが作った料理に舌鼓を打っていた。


「この鶏のモモ肉、超美味しいわ。 むしゃ、むしゃ」


「うん、メイリンお姉ちゃんの言う通りね!

 鶏肉だけでなく、牛肉、鶏肉、魚肉もあるわ。

 こういう料理はエルフの里では食べられないわ」


「そうだわね、アタシはアンタが楽しそうで何よりだわさ!」


 メイリンとマリべーレは良い表情で鶏のモモ肉を頬張る。

 他にはアロンとポロンが魚料理をむしゃむしゃと食べている。

 この辺は良い雰囲気だな。

 でも一人、泣きながら酒を飲んでいる人が居る。


「うううっ……エリスがとうとうお嫁に行っちゃったよ」


「まあまあ、お父さん。 いつかはこうなるのよ」


 エリスのお母さんがそう言って、エリスの親父さんを宥める。


「で、でもエリスはまだ二十歳はたちだぞ?」


「良い感じの結婚適齢期よ」


「うっ、うっ、うっ……今日は飲むぞ! ち、畜生!」


 両眼に涙を浮かべて、酒を飲み干すエリスの親父さん。

 まあ親父さんの気持ちも分かるけどね。

 でもここはスルーで行こう、スルーで!


 その後も参加者達は、飲み食いに明け暮れた。

 あれだけあった大量の食べ物や酒も尽き始めた。

 ドラガンとエリスの親父さんは完全に泥酔状態。


 メイリンやマリべーレ。

 そしてバルデロンやジュリーも目一杯食べたようで、

 部屋の隅の椅子に腰掛けて、お腹を手でさすっている。


 平気そうなのはウチの親父と兄貴とアイラ。

 それとジャンとジウバルト、それとエリスとエリスのお母さんだな。

 うちのお袋も飲み過ぎたのか、今は完全ダウン状態だ。


「そろそろ皆を休憩室、あるいは寝室に運ぶ頃ね」


「そうだな、アイラ。 女性陣は君に任せるよ。

 男性陣は父さんと俺、それとそこの君も頼めるか?」


「……良いっスよ」


 ぶっきらぼうにそう答えるジウバルト。


「いや兄貴、オレも手伝うよ」


「お前は主催者だ、だからここは俺達に任せておけ」


「そうだよ、アンタには日頃世話になってるからな」


 と、ジウバルト。


「そうか、じゃあお言葉に甘えるよ」


 そしてアイラがエリスのお母さんが女性陣を。

 親父と兄貴とジャン、ジウバルトが男性陣を運び出した。

 

「じゃあエリス、オレ達は部屋でも片付けようか?」


「そうね、そうしましょう」


 だが思いの他、部屋は散らかってなかった。

 だからオレとエリスもぱっぱっと片付けを済ませた。


「どうやら無事に終わったわね」


「ああ、何とか終わって良かったよ」


「でもこういう家庭的な雰囲気良いわね。

 ライルにい様とアイラさんも息ぴったりだし、

 あんな風な夫婦になりたいわ」


「まあ、ああいう風になれるように善処します」


「ううん、ラサミスはラサミスのままで居てよ?」


「そうか、でも意識出来る範囲では成長するよ」


「うん、わたしも頑張るわ」


「ああ、お互いに助け合って行こう」


「うん」


 こうして、披露宴も無事に終わり、

 オレとエリスは正式に結婚した。



次回の更新は2024年7月25日(木)の予定です。


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― 新着の感想 ―
[一言] 更新お疲れ様です。 披露宴も終え、2人は結婚。 さて、幸せな毎日が待っている───のだが、匂わされている天使編。 まだ日常編は終わりではないようですが、天使編が近いのも事実、一体どうなって…
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