第四百九十話 授かりました(後編)
---ラサミス視点---
「工エエェェェェェェェッ!!」
「それって本当なのっ!?」
拠点に帰って、エリスの妊娠の件を伝えると、
ドラガンとメイリンが大声て叫んだ。
ま、まあこうなるよな。
「ああ、事実だよ……」
すると団員の視線がオレに集中した。
ドラガン、メイリンは分かりやすい反応だが、
ミネルバは無表情、マリべーレは唖然としていて、
バルデロンとジウバルトは微妙な表情で無言を貫き、
ジュリーは「あらま」と右手を口に当ててた。
「それでどうするのよ?」
詰問口調でそう言うメイリン。
「ああ、勿論責任は取るよ」
「……どう責任取るのよ?」
「これを機にエリスと結婚するよ」
「そうか、結婚か。 そうよね……ってエエエェェェッッ!!」
「いやこうなれば結婚するべきだろ?
そんなに大声で叫ぶなよ、なんか恥ずかしい……」
「でも結婚よ、結婚! エリスはそれでいいの!?」
「わたくしは全然構いませんわよ!」
凄い良い笑顔でそう言うエリス。
何というか既に妻としての貫禄みたいなものを感じる。
「二人がそれでいいなら、我々が口出す問題じゃないのでは?」
ドラガンが軽くフォローを入れてくれた。
「しかしアンタも意外に手が早かったんだな」
ジウバルトが少し驚いた感じでそう言う。
「え? それってどういう意味?」
マリべーレが首を傾げながらそう言う。
そうか、マリべーレの年齢じゃまだ分からないか。
「いいのよ、アンタは気にする事ないだわさ!
ここは素直に二人を祝福するぬよ」
妖精カトレアがマリべーレをフォローする。
「そうね、ラサミスお兄ちゃん、エリスお姉ちゃん。
ご結婚おめでとうございます!」
「あ、ああ……ありがとうな」
「マリべーレちゃん、ありがとう!」
……。
何というか肩身が少し狭い。
アイラの妊娠騒動の時の兄貴を思い出したぜ。
「でも結婚するっていっても具体的にどうするの?
私達、竜人族の間では、夫婦がいつの間にか一緒に暮らすけど、
結婚式とかは上げなかったわ」
ここに来てミネルバが初めて口を開いた。
そうか、竜人族はそうなのか。
でも確かに結婚って何をすれば良いんだ?」
「その辺は種族によって変わるからな。
我等、猫族も基本的に結婚式とかはないな」
と、ドラガン。
「でもラサミスとエリスはヒューマン。
なら二人は結婚式を挙げるべきよね?」
「そうだな、ミネルバの言うとおりだな。
ラサミス、お前は結構貯金あるよな?」
「ああ、冒険者時代に荒稼ぎしたからなあ。
だから結婚式も普通に挙げれると思うよ」
オレがそう言うと、ドラガンが「ふむ」と頷いた。
「わたくしもそれなりの貯金がありますので、
二人の貯金を合わせたら、新居も買えると思いますわ」
「え? エリス、いきなり家買っちゃうの?」
と、メイリン。
「いえ流石にいきなり家は買わないわよ。
とりあえず新婚時代、それと子育てが無事に出来るような
アパートメント、あるいは借家を借りるつもりよ」
「凄え、二十歳で結婚に加えて、
新居も用意するのか。 なんか大人って気がする」
ジウバルトがしみじみとそう呟く。
いや新居の話は、オレも今聞いたんだけどな?
でもエリスの中じゃ既に決定事項のようだ。
「でも確かに結婚後もこの拠点で暮らす。
という訳にはいかないよな。
とはいえいきなり新築一戸建てを買うのもアレだしな。
良し、リアーナの顔役の誰かに良い物件がるか聞いてみるよ」
「それがいいわね。
出来ればこの拠点からも程よく近い場所が良いわね」
ミネルバの言うとおりだな。
結婚後もオレはこの連合の団長で居るつもりだ。
子育てするにも、皆の力を借りた方が何かと便利だしな。
「それじゃとりあえず結婚式の日取り。
それから新婚生活用の新居。
この二点に絞って、事を進めるべきですね」
バルデロンが淡々とそう言った。
まあそうだな、まずはその二点に絞るべきだな。
「でもどれくらいの規模の結婚式をあげるのかしら?」
と、ジュリー。
「う~ん、オレとしてはあんまり盛大なものにはしたくないな。
親族と身内だけで挙げる感じが理想かな?
エリスはどうなんだ?」
「そうね……」
するとエリスがしばし沈思黙考する。
オレ的には結婚式は、無難にやれば良いと思うが、
やはりここは新婦であるエリスの意見を尊重したい。
「わたしもそんなに大きな式じゃなくてはいいわ。
とりあえず親族と連合の仲間。
その全員が参加すれば、問題ないわ」
「そうだな、オレのコネクション目当てに
各種族のお偉いさんとか来たら、肩が凝るしな。
だからここは程よい感じの結婚式にしておくよ」
「うん、わたしもそれでいいわ」
「そうか、お前等がそれで良いなら拙者も何も言わんよ。
しかしラサミスとエリスが結婚か。
まさかこんなにも早く二人が結婚するとはな」
ドラガンとしては思うところがあるだろうな。
あ、でもドラガン自身は結婚しないのか?
あるいは案外、既に子供居たりして……。
「なんか先を越されてショックだわ」
「メイリン、私も同じ気持ちよ」
ミネルバがさらりとそう言う。
二人ともそうなのか。
やはり女子にとっては、結婚って一大イベントのようだ。
「まあとりあえず式の日取りを決めるまでは、
拙者も色々とサポートさせてもらうよ。
新居に関しては、早速、明日辺り二人で探してきたらどうだ?」
「そうだな、そうするよ」
「ええ、わたしも問題ないわ」
「そうか、ならば皆で正式に二人を祝おう。
さあ、皆、声を合わせて「結婚おめでとう!」と叫ぼう。
それじゃ一、二、三……」
「「「「「「「結婚おめでとう」」」」」」
……。
こうしてオレとエリスは正式に結婚する事となった。
次回の更新は2024年7月15日(月)の予定です。
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