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第三百九十九話  空上の一騎打ち



---三人称視点---



「せいァァァッ!!」


「ハアァァッ!!」


 黄金の竜騎士ドラグーンレフと獣魔王ビースト・キングの空上での一騎打ちは、どちらも一歩も退かず、一進一退の攻防が続く。 速くて鋭い斬撃、刺突、切り払い。


 白兵戦のありとあらゆる技術が駆使されて、互いに隙を見つけては攻撃を仕掛けるが、その都度、相手の攻撃を綺麗に防御ガードする。


「……やるじゃないか」


「貴様もな」


 と、言葉を交わすグリファムとレフ。

 接近戦における力と技術はほぼ互角。


 となれば戦いの流れを変えるには、スキル、あるいは能力アビリティ

 また魔法力が戦いの鍵を握る事になる。

 そして戦いの主導権を握るべく、グリファムが先手を打った。


「――ブラッド・クラッシュ!!」


 グリファムはグリフォンに乗りながら、

 竜骨の戦斧に闇の闘気オーラを宿らせて、全力で振るった。

 レフも逃げずに黄金の斧槍ハルバードの斧刃で、

 グリファムの斬撃を受け止めるが――


「ぬうっ……」


 とてつもない衝撃と共にレフの乗る飛竜が後ろに下がった。

 それと同時にグリファムは、愛獣グリフォードを前進させた。

 そして間合いを詰めるなり、両手で持った竜骨の戦斧を縦横に振り回す。


「我が攻撃に耐えれるものなら耐えてみよっ!

 ――ブルーティッシュ・ラッシュ!!」


 グリファムはそう技名を叫ぶなり、両手で持った竜骨の戦斧でひたすら乱打を繰り出す。 力任せの強引な乱打ラッシュ


 レフも手にした斧槍ハルバードで、グリファムの乱打ラッシュを受け止めるが、一撃、一撃受け止める度に両手が痺れていく。


 レフの身長201セレチ(約201センチ)に対して、グリファムは220セレチ(約220センチ)を超える鋼の肉体。 この場における20セレチ(約20センチ)の差は大きかった。


「ハア、ハア、ハアァ、ハアァァァッ!!」


 グリファムの乱打らんだが続く。

 対するレフは防戦一方……のように見えた。

 そしてグリファムは更に攻勢を強めた。

 グリファムは、両手に持った戦斧の斧刃を素早く水平に振るった。


「――ネック・チョッパー!!」


「――アクセル・ターン!」


 レフは咄嗟に上級風魔法『アクセル・ターン』を唱えた。

 すると彼が乗る黄金の飛竜は、高速でターン旋回する。

 そして迫り来る戦斧の斧刃を華麗に回避。

 逆にグリファムの背後を取った。


 絶好の反撃の機会チャンス

 レフはその反撃の機会チャンスを逃さなかった。

 そしてレフは、右手に持った黄金の斧槍ハルバードに光の闘気オーラを宿らせる。


「喰らえっ!! ――ヘキサ・スキュアァッー!!」


 レフはスキル名を叫びながら、帝王級の槍術スキルを放つ。

 黄金の斧槍ハルバードの穂先を高速で六度突き刺した。

 繰り出された六連撃の突きがグリファムの背中に綺麗に命中する。


「ぐ、ぐははぁァァァッっ!?」


 グリファムは思わず悲鳴を上げた。

 六連撃に加えて、魔族の弱点属性が加わった連続攻撃。

 それをまともに喰らえば、魔族の幹部と云えど堪えた。


 ――よし、効いたっ!

 ――ならばここで一気に……な、何ッ!?


 レフがそう思った矢先に、グリファムが急遽反転する。、

 そして左手を前に突き出して、無詠唱で風属性の魔法攻撃を放った。


 ――来るっ!?


 レフはそう思うなり、斧槍を構えて、全身に風の闘気オーラを全力で纏った。 次の瞬間、レフと黄金の飛竜が激しい衝撃を受けた。 


 だが風の闘気オーラとレフが身につけている法具の黄金の鎧のおかげで致命傷は避けられた。 しかし今の一撃に動きが硬直してしまった。 するとグリファムは、短縮詠唱で再度、攻撃魔法を仕掛ける。


「――ブレード・カッターッ!!」


 するとグリファムの左手から風の刃が生じた。

 生み出された風の刃が空を裂きながら、レフに迫る。

 このまま直撃すると致命傷になりかねない。

 だがレフは焦ることなく、冷静にこの場における安全策を選んだ。

 そしてレフは英雄級の風魔法を唱えた。


宙返り(サマーソルト)ッ!!」


 レフが短縮詠唱で英雄級の風魔法を唱えるなり、彼が乗る黄金の飛龍は、両翼を羽ばたかせて上昇。 そして加速したまま、綺麗な宙返りを見事に決めて、風の刃を華麗に回避した。


「なっ、何っ!?」


 これにはグリファムも驚愕した。

 咄嗟に宙返りで回避する事を選んだレフの判断力も凄いが、それを難なく実行する彼の愛竜もまた凄かった。


 それは騎乗者ライダーと飛竜が強い絆で結ばれていた証でもある。

 そして驚くグリファムに対して、今度はレフが攻勢に出た。


秘技ひぎ大車輪だいしゃりん


 レフはそう叫ぶなり、両手で黄金の斧槍ハルバードの柄を掴んで、風車を回すように斧槍ハルバードを旋回させた。 この大車輪はレフの独創的技オリジナル・スキルであった。


 一回転、二回転、更に斧槍ハルバードを回す。

 そして高速回転した黄金の斧槍ハルバードをグリファム目掛けて投擲する。

 

「くっ……!?」


 グリファムは足で愛獣の腹を蹴って、横へ移動して回避を試みたが――


「が、がはぁぁぁっ!?」


 投擲された斧槍ハルバードがグリファムの右脇腹を抉った。

 だが僅かの差で致命傷は避けられた。

 しかしこれで終わりではなかった。


 投擲されたレフの斧槍ハルバードは、高速で横回転しながら、ブーメランのように弧を描く。 そして苦しみ喘ぐグリファムの背中に命中した。


「アアァ……アアァ……」


 再度、悲鳴を上げるグリファム。


「――リバースッ!」


 レフが念動力サイコキネシスを発動する。

 するとグリファムの背中に刺さった斧槍ハルバードがレフの手元に滾り寄せられた。


 そしてレフは右手で斧槍ハルバードをキャッチ。

 そこからレフは左手を前に突き出して、愛竜ベルムーラの横腹を蹴り、前進させた。


 レフとグリファムの距離が詰まる。

 お互いに超至近距離となった。

 そしてレフは止めを刺すべく――


「――我は汝、汝は我。 我が名はレフ。 竜神ガルガチェアよ、我に力を与えたまえ! 『トニトゥルス』!!


 レフが呪文を唱えて、レフの頭上で雷鳴が響き渡った。

 そして次の瞬間、レフの頭上に雷光が発生して、轟音と閃光が生じて、グリファムに強い衝撃を与えた。


「ぐ、ぐ、ぐっぐァッ……アアアアアアァァァッ!!」


 ほぼ零距離から放たれた英雄級の電撃魔法。

 超至近距離で放たれた電撃がグリファムの体内で暴れ狂った。

 グリファムの身体の至るところから、プスプスと黒い煙が生じて、その身を焦がした。


「アアァ……アアァ……」


「ギャア、ギャアァァッ!!」


 同様に電撃を受けたグリフォンも暴れ回り、その反動でグリファムは、勢い激しく鞍から落下する。 そしてそのまま地面に向け落下していく。


 この光景にはレフだけでなく、周囲の竜騎士や敵の空戦部隊も唖然とした表情で傍観していた。 だがすぐに我に返って――


「勝ちだァッ! この勝負、レフ団長の勝ちだァッ!」


「す、凄い! 敵の幹部を完膚なきまで叩きのめしたぞ!」


「貴様等、落ち着け! 戦いはまだ終わってないぞ! だがこれで敵の頭目は消えた、今が攻め時だァッ!!」


 副団長ロムスが興奮気味にそう叫ぶ。

 すると周囲の竜騎士達もそれに感化されたように「おお!」と歓声を上げた。

 そこからは勢いに乗る竜騎士団が数の差をものともせず、敵の空戦部隊を次々と蹴散らして行く。


 そしてレフはもう一度、万能薬エリクサーを飲んで魔力を補給する。

 その後は魔力切れが起きない程度に、電撃魔法で敵を一掃していった。

 

 一方、地上に落下したグリファムは一命を取り留めていた。

 だがその傷は深く、何より彼の自尊心プライドが傷ついていた。

 

「……完敗だ、俺の完敗だ」


 グリファムは回復ヒーラー部隊に治療してもらたが、表情を曇らせながら、何度も同じ事を呟いた。 この場合においては、身体の傷より心の傷の方が深かった。


 だが彼は負け犬ではなかった。

 全身から痛みと倦怠感が漂う中、グリファムは右手を強く握りしめた。


「――このままでは終わらん」


 だが結果的にグリファムのこの敗戦が戦局に大きく響き、連合軍の空戦部隊が星形要塞の上空の制空権を奪いつつあった。 星形要塞における戦いが新たな局面を迎えようとしていた。


次回の更新は2022年6月8日(水)の予定です。


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