表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
332/714

第三百三十話 ラインラック要塞(中編)


---ラサミス視点---



「それでは皆、手渡された見取り図に眼を通して欲しいニャン。

 『ラインラック要塞』は城壁の麓にレアード川という川が流れており、

 城壁に繋がっている橋が架かってるだニャン。

 そして城塞への出入り口は城壁の正面にある正門だけだニャン。

 よって橋を確保をして、正門をいかに突破するかが重要だニャン」


 まあ城攻めの基本は橋を確保する事だからな。

 だからマリウス王子の云う事は間違ってはいない。

 でもそれは敵側も理解しているだろう。

 なので正門は当然として、橋も全力で死守してくるだろう。 

 

「でも正面から攻め込むのは少々キツくありませんか?

 こういう要塞は得てして、城壁のいたるところに矢狭間(やざま)があるでしょうし、

 正面突破は難しいと思われます」


 と、アイザックが控え目に意見を述べた。

 矢狭間(やざま)ってアレか、

 攻めてくる敵を壁の内側から矢で狙い撃ちするために開けられた小窓の事だな。


 まあこのクラスの要塞じゃ当然あるだろうな。

 後、投石機とかヴァリスタもありそうだし、確かに正面突破は難しいだろうな。


「となると正面から攻撃を仕掛けつつ、空から攻めるべきでしょうか?」


 と、山猫騎士団オセロット・ナイツのレビン団長がそう云った。

 まあ必然的にそうなるだろうな。

 とはいえそれはそれで難しそうだけどな。


「となれば我等、竜騎士団の出番となりますね。

 ですが城壁の高さ十五メーレル(約十五メートル)に及ぶ城塞を

 攻め込むのは、色々と厳しいですね。

 この高さから味方の部隊を地上に降下させるのも難しいでしょう」


 竜騎士団の騎士団長レフが神妙な顔でそう述べた。

 そうなんだよなあ、正面が無理なら空から攻めるべき。

 というのは間違ってないんだが、当然敵も何らかの手は打ってくるだろう。


 竜騎士団の竜騎士ドラグーンと飛竜は約三百人と三百匹居る状態だが、

 敵にも空戦部隊が居るからな。 だから制空権の奪い合いだけで苦戦するだろうな。


「とはいえ地上及び空中からの攻撃は必須でしょう。

 だが敵もこの要塞を何が何でも死守してくるでしょう。

 となれば敵としては、長期籠城戦を挑んで来る可能性が高いでしょう」


「それは充分に考えられますよね。

 敵としては、この要塞を落とされたら、魔帝都までの大きな防衛拠点を

 失う事になります。 だから防御に徹した長期籠城戦を挑む可能性は高いと思います」


 団長アームラックの言葉に剣聖ヨハンも同意する。

 まあこの辺に関しては、オレも同意見だな。

 敵としてもこの要塞攻略戦の結果如何で今後の戦局が大きく変わる。

 極論で云えば、この要塞攻略戦に全兵力を投じるという選択肢も有り得る。


 となると必然的に連合軍が不利となる。 

 何せ行動線が延びきった状態だからな。

 そして補給部隊との補給線を絶たれたら、全軍が一気に瓦解する。

 というのは決して大袈裟な表現ではない。


「うん、それはボクもその辺は、考慮しているだニャン。

 だから補給ラインには、防衛部隊をしっかり配置するつもりよ。

 でも敵の籠城戦に付き合うつもりはないだニャン。

 だからこちらも大攻勢をかけて、籠城戦になる前に要塞を落とすだニャン」


 まあ司令官の立場ならそう云うだろうな。

 でも実際に前線で戦うのは、オレ達兵士の役目だ。

 上層部の無理な作戦で、むざむざ犬死するのは御免だ。

 だがマリウス王子もその辺のところはちゃんと考えていたようだ。


「まずは正面突破に関しては、敵がゴーレムなどを召喚する可能性が高いから、こちらもウォーロックや魔導師ソーサラーにゴーレムを大量に召喚させるニャン。 そして魔力を保ちながら、敵のゴーレムや魔物部隊と交戦させるだニャン。 それから前衛に戦士ファイター聖騎士パラディンなどの防御役タンクを配置しつつ、中衛に魔法部隊、それと大砲を引く工作兵を配置するだニャン」


 成程、この猫王子も一応その辺考えてるんだな。

 確かにゴーレム相手に人員を割く必要はないからな。

 だからこちらもゴーレムを召喚して、最前線で戦わせる。

 ……悪くない手だ。


「ゴーレムが前線で戦っている間に、防御役タンクに護られながら、

 魔法部隊が前線に出て一斉に魔法攻撃するニャン。

 ここは魔力を無視して徹底的に攻めるだニャン。

 そして敵が怯んだ所で、大砲で城壁を狙い撃つだニャン。

 城壁は当然耐魔性が高い石や煉瓦で作られているだろうけど、

 大砲による物理攻撃は効くだニャン、まあ敵の魔導師が大規模な耐魔結界を

 張ってくるだろうけど、そこは耐えてこちらも大攻勢を仕掛けるニャン」


「成程、理に適った戦術ですね」


「うん、確かにこれなら長期籠城戦は避けられそうね」


 ナース隊長がそう云うと、女侍おんなざむらいのアーリアも相槌を打った。

 まあオレ自身も猫王子の作戦に少し感心した。

 この猫王子、最初は無能なボンボン猫と思っていたが、

 この魔族との戦いで、短期間で成長しているようだ。


 まあ副司令官のヒューマンの馬鹿王子が論外だから、 

 相対的にマリウス王子が優秀に見える、という部分はあるだろうが

 少なくとも司令官としては、及第点には達しているように思える。


「我々、竜騎士団は敵の空戦部隊と制空権を争えば良いのでしょうか?」


 と、団長レフ。


「うん、基本的にはそうだニャン。

 そして制空権を奪えた所で、前と同じように猫族ニャーマンの魔法部隊を

 飛竜に相乗りさせて、上空から地上へ魔法攻撃を仕掛けて欲しいだニャン」


「成る程、了解致しました。

 我が竜騎士団の誇りにかけて、制空権を奪います」


 うむ。

 大まかな作戦は決まったようだな。

 まあ実際の戦闘は、作戦通りには行かないものだが、

 最低限の目処めどはついた。


 これならば戦いの形にはなるだろう。

 まあ後の事は出たとこ勝負という事でやるしかねえかもな。

 などとオレが思っていると、マリウス王子が少し真面目な表情で一つの指示を下した。


「ちなみにこの『ラインラック要塞』の戦いでは、

 敵――魔王軍も城塞都市の住人である一般市民も戦線に投じてくる

 可能性が高い、無論、戦いとなれば一般市民といえど立派な敵だ。

 だがこの要塞攻略が成功した暁には、

 魔族の一般市民に対して、暴行行為、略奪行為を行う事は固く禁じるニャン」


 マリウス王子はやや強い口調でそう云った。

 成る程、確かにその辺を考慮する必要はあるな。

 オレの中の魔族という種族の印象はとにかく好戦的な種族というイメージだ。


 だが魔族の全てがそういう訳ではないだろう。

 それに魔族の中にも女は存在するだろうからな、

 だからマリウス王子は、その辺を含めて暴行を禁止する、と云ってるのだろう。


 ふうん、この猫王子。

 結構色んな所に気が回るじゃん。

 少し見直したよ。 


「自分もその案に賛成します。

 相手は魔族と云えど、女子供にはそれ相応の対応すべきと思います」


 兄貴が右手を上げながら、そう云った。


「自分も同じく賛成します。

 この辺は各部隊にしっかり伝えるべきでしょう」


 と、剣聖ヨハンも同意する。

 すると周囲の者も「同じ賛成します」と司令官の方針を支持した。

 こうして要塞攻略戦の方針は固まった。


 まあ実際は作戦通りに上手く行く事は少ないだろうが、

 この戦いで勝てるか、あるいは生き残れるかは分からない。

 だがやると決まったからには、オレも全力を尽すぜ!


次回の更新は2021年12月29日(水)の予定です。


ブックマーク、感想や評価はとても励みになるので、

お気に召したらポチっとお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 更新お疲れ様です。 マリウス王子、この戦いの前線に出ているからか視野が広がったのでしょうね。成長が凄まじいだけに、どうにもヒューマンの王子が……ってな部分はありますが。 敵だけど、全てはそ…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ