表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
23/716

第二十二話「ニャルララ迷宮(前編)」


 王都ニャンドランドから二日ほどかけて、

 山を越えて俺達は目的地に到着。

 ニャルララ迷宮。


 この迷宮がいつの時代に出来たかは詳しい事は未だにわかっていない。

 猫族ニャーマンがヒューマンから独立した戦い――所謂、

 猫族ニャーマン独立戦争を終えた頃には、

 既にこの迷宮の存在を示唆するような文献があるので、

 少なくとも千年以上前からあったと思われる。 


 このウェルガリアの世界各地に迷宮やダンジョンと呼ばれる物は

 数多く存在するが、千年以上前の建造物となると、そう多くはない。 

 迷宮やダンジョンはモンスターにとっては格好の住処すみかであり、

 冒険者や考古学関係者などの一部の人種しか訪れない為に、

 どんどん繁殖して文字通りモンスターの巣窟と化す場合が多い。


 俺達はニャルララ迷宮のすぐ傍にある避難所も兼ねたログハウスで

 小休止して、下準備を終えてニャルララ迷宮の入り口の前まで進んだ。


 俺達は奥をうかがい知れない真っ暗な迷宮の入り口に足を踏み入れた。

 前一列にドラガンと兄貴とアイラ。 

 後一列に俺とエリスとメイリンが並び、手に魔石で作られた

 魔法のランタンをぶら下げて、ゆっくりと迷宮内を進む。


 魔法のランタンは魔石に魔力を注入する事で明かりを灯すので、

 松明や普通のランタンより、遥かに便利なのでこういった迷宮や

 ダンジョン探索には欠かせないアイテムだ。


 魔法のランタンの灯りで周囲を灯しながら、俺達はドンドンと前へ前へと進む。

 視界を埋め尽くす薄茶色の壁面と天井が何処までも続いている。


「……ちょっと止まってくれ」


 というドラガンの言葉に皆が従い、その場で足を止める。

 するとドラガンは首にぶらさげたゴーグルをくいっと目元に押し上げた。

 そしてゴーグル越しに双眸を細めながら――


「う~ん、やはり魔力数値が高いな。 それと邪気と瘴気も漂っている。 前に訪れた時はこうではなかった。 これは先客が居るかもしれんな」


「ねぇねぇ、ドラさん。 そのゴーグルってなにか意味あるんですか?」


 俺も疑問に思っていた事をエリスが訊いた。


「ああ、これはニャーグルというゴーグルだ。 これをかけて周囲を見れば、魔力数値などを測れる魔法道具だ。 ちなみに首にかけている小瓶はタタびん。 中に魔タタビの香りを入れて、我々猫族ニャーマンが嗅ぐと、トランス状態になり、一時的に戦闘力と魔力が跳ね上がる優れものだ。 ……ただの飾りではないぞ?」


 なるほど。 前々から思っていた疑問が氷解した。 

 意味はあんのね、一応。


「……先客というとマルクスかしら?」と、アイラ。


「……恐らくな。 ただこの漂う邪気と瘴気が気になる。マルクスは暗黒魔法を得意とするが、邪気や瘴気が関連するスキルや魔法は持ってない筈だ。 となると奴が死霊使い(ネクロマンサー)などの仲間を連れてる、と考えた方がいいだろうな」


 ドラガンの言葉に兄貴も「ああ」と頷き、同意する。


「奴も一人で我々に立ち向かうほど馬鹿ではないだろう。

 恐らく三、四人の仲間を引き連れていると考えるべきだろう。 

 となるとこの邪気の正体はその仲間が持つスキルや魔法が関連すると思われる。 

 つまりはドラガンの云うとおり死霊使い(ネクロマンサー)系の能力者と思うべきだ。 

 エリス、君は神聖魔法は得意か?」と、兄貴。


「はい、一通りは使えます。 要するに不死生物アンデット退治ですよね?」


「ああ、恐らくそうなるだろうから、その時は頼む!」


「はい! お任せくださいなのです!」


 神聖魔法は不死生物アンデットに非常に有効な魔法である。

 神聖な力を持つ僧侶プリーストはただでさえ、

 モンスターの標的にされやすく、特に不死生物アンデットを強く引き寄せる。 

 故に自身を護る為に神聖魔法を取得するのは、

 僧侶プリースト系の職業ジョブの必須項目である。


 また少人数で効率よく敵と戦う場合、スキルや魔法で

 何かを使役するのが基本戦術だ。

 それは精霊だったり、使い魔だったり、時には悪霊や死霊だったりする。

 だが何かを使役するには、自身の魔力を激しく

 消費するので長時間の継続は難しい。


 しかし例外もある。 


 それが悪霊や死霊などの不死生物アンデットを操る死霊使い(ネクロマンサー)だ。

 この世への未練、恨み、怨念などの邪気で不死生物アンデットは、現世に留まっているが、生きた肉体という器を持たない不死生物アンデットの魂は非常に不安定だ。


 故に周囲の環境などに非常に左右されやすい。 

 そして更には自分より強い魔力や邪気の持ち主の前では隷属する傾向がある。 

 だから死霊使い(ネクロマンサー)などの傀儡くぐつ系のスキルや

 魔法を持つ職業ジョブが使役するには格好の存在である。


 更にはここは日の光の届かない迷宮。

 不死生物アンデットは日の光に非常に弱く、

 基本的に夜間にしか行動出来ない。


 だがこのような日の光のない迷宮では、神聖魔法や聖水などで

 浄化しない限り、不死生物アンデットは不死の存在である。 

 だからこういう迷宮で相手が不死生物アンデットを使役してくるとなると、少々厄介である。



「……俺とドラガンが攻撃役アタッカーを務めるから、ラサミスとアイラでエリスを護ってくれ。 メイリンは迷宮内だからあまり破壊力の高い魔法の使用は避けてくれ!」


「了解」「ああ」「はいです」「はいッス」


 兄貴の言葉に俺達は返事をして、ランタンを片手に迷宮内を進んだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] ニャーグルというゴーグル( ´艸`) そこ、ニャーに変換する必要あったの!?と突っ込みたくなるゴーグルが可愛かったです。 魔タタ瓶でトランスするドラガンさんも楽しみです。 [一言] さすが…
[良い点] ニャルララ迷宮にニャーグルに魔タタ瓶……! 相変わらずたまらないです! いつかドラガンに魔タタビを献上できるように、楽しく読み進めていきたいと思います。 (いつも欲に塗れた感想ですみません…
[一言] 意味はあんのね、一応。 →おーいw と言う感想しかありません(`・ω・´)ゞ この作品はやはり作者様のねこラブがヒシヒシと伝わってくる辺りが素晴らしいです。魔タタ瓶とかニャーグルとか。説明…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ