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【天使編開始!】黄昏のウェルガリア【累計100万PV突破】  作者: 如月文人
第三十八章 追風(おいて)に帆を上げる
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第二百十五話 黄金の手(ゴールデン・ハンド)


---ラサミス視点---


「「「「ラサミス、準優勝おめでとう!!」」」」


「ありがとうよ」


 オレ達は拠点ホームの食堂で乾杯の音頭を取った。

 とはいえ兄貴とアイラ以外はジュースでの乾杯となった。

 まあ今日くらいは酒を飲んでもいいと思うが、一応自重しておいた。


「でも準優勝なんて凄いですわね」


「エリス、ありがとよ。 これでオレもはれて上級職ハイクラスだ」


「うん、本当によくやったと思うわ。

 でも準決勝はかなり酷い試合だったわね。 あれはないわよ~」


 と、メイリンが胸の前で両腕を組みながらそう言った。


「ホントそれ、ラサミスもよく我慢したわね」


 と、ミネルバ。


「いや半ば呆れていたよ。 正直もう二度とあの大会には出たくない」


「……あたしももう観たくないかも。 猫族ニャーマンが少し嫌いになった」


「い、いやマリベーレ。 別に猫族ニャーマンに罪はないだろ?」


 マリベーレの言葉にドラガンがやや戸惑いながら、そう言った。

 まあドラガンの言うとおりだが、実はオレもマリベーレと同じ心境だ。

 いや悪いのはあの野郎――ルーベン・オリスターなんだけどさ。

 まあそれでも一応勝てたから、良しとしておくか。


「ところでラサミスは賞金はどうするつもりだ?」と、アイラ。


「そうだなぁ~。 まあ半分以上は税金で持って行かれるから、残り一千万ちょいで黄金の手(ゴールデン・ハンド)用の装備を新調するよ」


「ほう、装備に一千万もかけるのか?」


「ああ、兄貴。 どんな大金を持っていても死んだら終わりだろ? ならば生き残る可能性を上げる為に、自己投資する、ってわけさ」


「あ、じゃああたしもついて行こうかなぁ~」


「おい、メイリン。 お前の分の装備は買わないぞ?」


「わ、分かってるわよ! あたし、そこまで厚かましくないわよ!

 あたしもそろそろ新しい杖を欲しいと思ってたのよ」


「じゃあ私もついていこうかな~」


「あたしも行きたいかも……」


「わたしはパス。 また職業ジョブギルドへ行って飛竜の騎乗練習をするわ」


 エリスとマリベーレもついて来るのか。

 まあ人数が多い方が楽しいから、オレとしても不満はない。

 というかミネルバは明日も飛龍の騎乗練習か。 頑張るねえ~。


「オーケー、オーケー、んじゃオレは明日、黄金の手(ゴールデン・ハンド)職業ジョブギルドに寄って、転職クラスチェンジとスキルの振り直しするから、それが終わったら買い物に行こうぜ!」


「はいですわ!」「了解~♪」「うん」


「んじゃ今日は疲れたし、そろそろ寝るわ。

 皆、おやすみ~。 あまり食い過ぎるなよ~」


 オレはそう言って食堂を後にした。

 とにかく今日は疲れた。 だから泥のように眠るぜ。



---------


「我は汝、汝は我。 ラサミス・カーマインよ。

 汝は女神レディスを信じますか?」


「信じます」


「ではラサミス・カーマイン!

 貴方に新たな力を与えましょう。 

 そして共に女神レディスに祈りを捧げましょう!」


「はい、祈りを捧げます!」


 オレはそう言って祭壇の前で祈りを捧げた。

 ここは黄金の手(ゴールデン・ハンド)職業ジョブギルド内にある祈りの間だ。

 そして祭壇の前に立った神職らしき法衣を着たヒューマンの老人がこう告げた。


「良かろう、ラサミス・カーマイン!

 汝に黄金の手(ゴールデン・ハンド)の力を授けよう。

 これからも女神レディスを敬いたまえ!」

 

「はい!」


 こうしてオレは上級職ハイクラス黄金の手(ゴールデン・ハンド)に無事に転職クラスチェンジした。 やや面倒な手続きや儀式が多かったが、これでオレも上級職ハイクラスの仲間入りだ。 それからオレは祭壇の前に立った法衣をきたヒューマンの老人に一礼してから、祈りの間を後にした。 そして職業ジョブギルドの敷地内にある庭で大きく伸びをした。


「ふう、なんか疲れたぜ」


「無事、転職クラスチェンジできたようだね。

 おめでとう、ラサミスくん」


 と、茶髪のショートヘアの女竜人おんなりゅうじんが話しかけてきた。

 彼女の名前はスカーレット。

 見た目は二十半ばくらいの女性に見えるが、

 実際はもう少し年がいってると思う。


 何故なら彼女はこの黄金の手(ゴールデン・ハンド)職業ジョブギルドの師範代なのだ。 彼女はノースリーブの青い武道着と黒いズボンいう格好だ。

 身長は177のオレとそう変わらない。

 全体的に肉付きは良いが、締まるところは締まっている。



「どうも、無事に転職クラスチェンジしました。

 これでオレも今日から黄金の手(ゴールデン・ハンド)です。 よろしくお願いします!」


「うん、それでは早速スキルを振り直しするかい?」


「はい」


「なら購買部に行きたまえ。 やり直しの宝玉ほうぎょくを買うといい」


「はい」


 オレはスカーレットに言われるまま、購買部に行ってやり直しの宝玉を購入。

 このやり直しの宝玉があれば、全職のスキル振り分けを零に戻せる。

 とはいえそうそう買える代物じゃない。

 なにせ一個30万グラン(約30万円)もするからな。


 そしてオレは再び祈りの前へ行き、祭壇の前でやり直しの宝玉を捧げた。

 すると祭壇の火が灯ると同時に宝玉が砕け散り、灰となって消えた。

 一回で30万グランか。 ボロい商売だな。

 まあいいや、とりあえずスカーレットの所へ行こう。

 それからオレ達はギルド内の事務所に移動した。


「よし、これで準備万端だね。

 ではキミのそれぞれの職業ジョブのレベルを教えてくれ」


「はい、拳士フィスター38、レンジャー33、戦士ファイター25、

 魔法戦士は18って感じですね」


「ほう、こう言っちゃなんだがキミもマメだねえ~」


「まあオレはパーティ内じゃ便利屋していたので、

 気がつけば色んな職業ジョブのレベルが上がってました」


「ふむ、キミは器用貧乏の生きた見本だな。

 でも安心したまえ、そのキミの努力が報われる日が来た。

 だから私が色々アドバイスしてあげるよ。

 とりあえず座って話をしよう」


「はい」


 そしてオレとスカーレットは円卓テーブル越しに向かい合うような形で、木製の椅子に腰掛けた。


「とりあえずキミの希望を聞いておこう。

 キミはどういう感じの黄金の手(ゴールデン・ハンド)になりたいんだ?」


 そうだなぁ~。

 やはり火力がありつつも、回復役ヒーラーも出来る感じがいいな。

 ウチのパーティってエリスが抜けると、一気にバランスが悪くなるからな。

 だからオレがアタッカー兼サブ回復役ヒーラーになれば、だいぶバランスが取れる。


「そうですね、剣術というか刀術とうじゅつ、格闘戦が出来る上に

 回復力もあるアタックヒーラーになりたいです」


 するとスカーレットは「ふむ、ふむ」と頷きながら、

 何やら考え込む素振りを見せた。

 そして胸の前で両腕を組みながら、ゆっくりと言葉を紡ぎ出した。


「要するに端的に言えば、刀を使えて、格闘戦も出来る。

 そして回復役ヒーラーも出来るようになりたいわけだね?」


「ええ、まあそうです」


「そうだね、まあ刀術スキルより剣術スキルを選んだ方が色々と便利だが、

 キミはどうしても刀術スキルを取りたいのかね?」


「ええ、ウチのパーティには既に三人剣術使いが居ますので。

 それに前々からかたな、特にあの東方の国ジャパングで使われている

 刀を使いたいと思っていたのですよね」


「ああ、通称・ポンとうと呼ばれる日本刀にぽんとうを使いたいのかね?」


「ええ、ダメですかね?」


 するとスカーレットは小さく首を左右に振った。


「いやキミがやりたいなら、そうすればいいさ。

 私はあくまでキミの相談役兼アドバイザーだからね」


「では日本刀にぽんとうことポンとう、それに格闘戦と回復力を上げたいですね。 

 あ、でもレンジャーの投擲スキルは少し残しておきたいです」


「了解だ。 それじゃキミの冒険者の証を見せてくれ。

 私の助言を聞きながら、最後は自分のやりたいようにしたまえ!」


「はい!」


 そしてオレはまず比較的スキルの割り振りが簡単な拳士フィスターのスキル振り分けを始めた。 とりあえず戦闘スキル闘気オーラの項目にある程度ポイントを割り振った。

 それによって『闘気の威力5%アップ』と『闘気の総量5%アップ』の効果を習得。


「そうだな、闘気オーラはどの職業ジョブでも使えるから、

 ある程度上げておいても損はないだろう。 残りのポイントはどうするんだ?」


「とりあえず拳士フィスターのスキルポイントは体術スキルに全部振ります」


「そうか、まあそれが無難だろう」


 そしてオレは拳士フィスターのスキルポイントを体術スキルに全部割り振った。

 それによって今まで使っていた『徹し』や『黄金の息吹(ゴールデン・ブレス)』を

 再び覚えて、更に固有ユニークスキルの『サマーソルトキック 』を習得した。

 とりあえず拳士フィスターに関しては、これでいいだろう。


「うむ、拳士フィスターに関しては、それでいいだろう。

 それで次の職業ジョブはどれにするんだ?」


「レンジャーにします。 まずは投擲スキルにいくらか割り振り、

 残り全部を回復魔法に全振りします」


「うむ、そうか」


 オレはとりあえず投擲スキルに10ポイントのスキルポイントを振った。

 それによって投擲スキル『軌道変化』を習得。

 まあこのスキルは使い勝手が良いからな。

 覚えておいて損はないだろう。


 そして残る40ポイントを全部『回復魔法』の項目に割り振った。

 それによって新たに『回復魔法の詠唱速度アップ』と『回復魔法の回復量アップ』

 更に中級回復魔法『ハイヒール』を習得した。


「うむ、無難だが悪くない選択だ。

 それで残りはどうするのかね?」


 オレはスカーレットの言葉にしばし考え込んだ。

 まあ魔法戦士のスキルポイントは全部刀術スキルに割り振るとして、

 戦士ファイターのスキルポイントをどうするかだな。


 パッシブスキルを取るという手もあるが、

 今後は黄金の手(ゴールデン・ハンド)をメインジョブにするつもりだ。

 だからここは思いきって、

 戦士ファイターのスキルポイントも全部刀術スキルに割り振ろう。


「魔法戦士と戦士ファイターのスキルポイントは全部刀術スキルに割り振ります」


「そうか、それも一つの手だ。 好きにするがいいさ」


 オレはスカーレットの言葉に「はい」と返事して、

 冒険者の証を指で操作しながら、

 魔法戦士と戦士ファイターのスキルポイントを刀術スキルに全振りした。


 それによって初級刀術スキルの『いち太刀たち』、『二の太刀』、

 中級刀術スキルの『三の太刀』と『火炎斬かえんざん』、『水流斬すいりゅうざん』、それと固定ユニークスキルの『居合抜いあいぬき』を習得した。


「おお、結構色々覚えました!」


「どれ、どれ」


 スカーレットはそう言いながら、横からオレの冒険者の証を覗き込んだ。

 すると「ふむ、いいじゃないか」と言いながら、オレの左肩を右手で軽く叩いた。


「色々な職業ジョブを上げていたおかげで、

 スタート時からかなり幅広い選択肢を選べる状態になったな。

 最初に言っておくよ、黄金の手(ゴールデン・ハンド)のメリットは選択肢の多さだ。

 それに故に色んな事が出来るが、器用貧乏になりがちな部分がある。

 しかし色んな選択肢を持てるという事は何よりも強みだ!」


「そういうもんですか?」


「そういうもんだ」


 う~ん、正直今はスカーレットの言わんとすることが分からんな。

 でもとにかくこれで下準備は整った。

 後は次の連合軍の作戦まで、連合ユニオンの仲間に

 パワーレベリングしてもらって、一気に黄金の手(ゴールデン・ハンド)のレベルを上げるぜ!

 と、その前に装備を買いにいかないとな。


「じゃあ、スカーレットさん。 色々とお世話になりました」


「ああ、また何かあればいつでも来たまえ。

 相談でも組手くみてでも模擬戦もぎせんでも付き合うぞ」


「はい、その時はよろしくお願いします!」


「じゃあな、ラサミスくん」


「はい、スカーレットさん、さようなら!」


 オレはそう別れの挨拶を交わして、職業ジョブギルドを後にした。

 とりあえずこれで念願の上級職ハイクラスになれたぜ。

 まあ今すぐ大活躍というわけにはいかないだろうが、

 色んな事が出来るというのは魅力的だ。


 ただし拘りすぎて、器用貧乏にならないようにしないとな。

 なんにせよ、今日からオレも上級職ハイクラス黄金の手(ゴールデン・ハンド)だぜ!

 う~ん、なんかテンション上がってきたぜ。

 そしてオレは気がつけば、スキップしながら帰路についていた。


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