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【天使編開始!】黄昏のウェルガリア【累計100万PV突破】  作者: 如月文人
第三十五章 荒馬(あらうま)の轡(くつわ)は前から
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第二百一話 情報収集


 そしてオレは再び職業ジョブギルドへやってきた。

 オレはカレンに『四種族混合・無差別級フィスティング大会』の情報収集を

 したいと伝えると、彼女は快く承諾してくれた。


「詳しい事は彼女――メラニーに聞くといい。

 メラニー、こちらの彼に色々教えてやってくれ!」


「はぁーい!!」


 そう元気よく答えたのは、

 金髪の三つ編みの20前後と思われるヒューマンの女事務員だ。

 冒険者ギルド職員の制服と似た黒のスーツとスラックスを綺麗に着こなしている。


「はじめまして! 職業ジョブギルドの受付嬢のメラニーです。

 今日はどのようなご用件でしょうか?」


「『四種族混合・無差別級フィスティング大会』のデータを集めたいんだ。

 とりあえず上半期に行われた大会の……そうだな、

 ベスト8に入った選手の情報を入手したい」


「成る程、分かりました。 では資料を魔法で複写ふくしゃしてお渡ししますが、

 資料一枚につき、一万グラン(約一万円)かかりますが、よろしいですか?」


 一枚、一万グラン(約一万円)か。

 結構高いな。 だが背に腹は変えられん。


「分かった、それで頼むよ」


「はぁーい! では10枚以上、複写するので少々お時間を

 頂いてもよろしいでしょうか?」


「ああ、いいよ」


 10枚だと10万グラン(約十万円)か。

 結構痛い出費だな。 まあ勝つ為だ。

 これは将来への投資と思って、我慢しよう。


 そして待つこと、15分。

 受付嬢メラニーは複写を終えた羊皮紙の紙束をこちらに渡した。

 オレはそれを受け取り、代金10万グラン(約十万円)を金貨で払った。


「ありがとうございます。 また何か御用があれば申してください」


 と、メラニー。


「うん、また何かあれば声をかけるよ。 カレンさん、ちょっといいかな?」


「ん? どうかしたかい?」


「いや良かったら、このベスト8の選手の情報を教えてもらえないか?

 もちろんそれ相応の謝礼は払うからさ」


「ああ、なんだ。 そんなことなら問題ない。 謝礼なんかいらんさ。 

 私の仕事はそういう情報提供も含めまれているからね」


「じゃあお言葉に甘えて、面倒かもしれんけど、一人一人教えてください」


「ああ、分かった」


「えーと、じゃあまずは――」



 オレはそれから30分程、カレンから色々な情報を提供してもらった。

 まあベスト8の名前とファイトスタイルは大体分かった。

 だがカレン曰く――



「多分キミならかなり良いところまで勝ち進めるよ」


 と、太鼓判を押されたが、本人からすればイマイチ実感が沸かない。

 だがジムや道場でA(クラス)のプロ拳士フィスター相手の模擬戦スパーリングでも

 オレは互角……いやそれ以上に打ち合えている。


 あの化け物のように強かったザンバルドに比べたら、

 A(クラス)のプロ拳士フィスターもそんなに大したことないように思える。

 とはいえ実戦とフィスティングの試合は似てるようで、違う。

 まずはルールとフィスティングに必要な動作を徹底して、

 身体に叩き込まないとな。 その為には、ひたすら練習するしかない。


 だがベスト8の中で一人、否、一匹だけ気になる奴が居る。

 それは上半期のトーナメントの優勝者である猫族ニャーマンだ。

 まさか上半期のトーナメントの優勝者が猫族ニャーマンとはな。

 なんだかコイツの事は妙に気になる。 とりあえずカレンに聞いてみよう。


「ねえ、この猫族ニャーマン……ルーベン・オリスターって奴のことが聞きたいんだけど」


 するとカレンは「ああ~」と言いながら、微妙な表情になった。

 ん? オレ、なんか変なことを聞いたか?

 するとカレンは唇に柔らかな微笑を浮かべて、静かな声で言葉を紡ぎ出した。


「あ~、彼だけはキミでも苦戦するかもな。

 正直彼と当たった時は、色々覚悟した方がいい」


「ん? こいつ、そんなに強いの?」


「う~ん、強いというか、試合巧者という感じかな?」


「試合巧者ねえ。 戦闘技術とかが高いタイプなの?」


「う~ん、まあ……そうとも言える……かな?」


「……でもコイツが上半期のトーナメントの優勝者なんでしょ?」


「うん、それは紛れもない事実だよ」


「なんか奥歯に物が挟まった言い方だね」


「まあそうだね。 なんというか拳士フィスターギルドの師範代としては、複雑な気分なんだ。 彼――オリスターのおかげで上半期のトーナメントは大盛況だった。 それは紛れもない事実だ。 でもなんというか、彼の試合内容は……ちょっとね」


 そこでオレは何かが閃いた。

 考えてみれば、猫族ニャーマンのプロ拳士フィスターはかなりレアな存在だ。

 ベスト8の面子を見ても、猫族ニャーマンはオリスターだけだ。

 もしかして……


「もしかしてコイツ、猫族ニャーマンだから、大会運営にメチャメチャ贔屓されてるとか?」


「おっ!? よく気付いたな、流石だね!」


 なんだ、やっぱりそういう事か。

 となるとコイツと試合する時は色々と用心しないとな。


「まあなんというか彼と試合する時は色々気をつけた方がいいよ。

 でも彼は勝つ為なら、何でもするタイプさ」


「ふうん、でもある意味プロっぽいね」


「う、うん。 まあそう言えなくもないが、彼は場の空気を操る名人さ」


「場の空気を操る名人?」


「そう、まあそればかりは直に観てみないと分からんよ」


「まあいいや、あんまり想像の翼を広げるのも良くないからね。

 カレンさん、ありがとう。 オレは今からジムで練習してくるよ」


「うん、キミには期待してるよ。 ラサミスくん、頑張ってね!」


「ういっす!」


 オレはそう言って、拳士フィスターギルドを後にした。

 しかしオレは後ほど思い知らされることになった。

 奴――オリスターの恐ろしさ、というか勝利に対する執念。

 というか勝つ為には、何でもする奴の浅ましさを。


 ちなみにメイリン達はドラガンの伝手で猫族ニャーマンのサーカスのチケットを

 入手して、三人揃ってアリーナ席で無事サーカスを観れたようだ。


 ちなみに無事公演が終わった後、メイリン達は両手にどっさり土産物を持って帰宅してきた。 聞けばメイリンは10万、エリスは8万、マリベーレは5万分の土産物を買った、というか売り子の猫族ニャーマンを乗せられて、またカモられたようだ。 でも三人揃って笑顔だったので、オレは何も云わず風呂に入ってから、明日に備えて早く寝ることにした。



次回の更新は2021年3月13日(土)の予定です。



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