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第百十七話「復讐」


 三十分後。


「き、貴様らっ……に、逃げるな! 敵前逃亡は死罪だぞっ!?」


 ヒステリックにそう叫ぶ騎士団長ヴェルゴット。

 しかしもう彼の言葉に耳を傾ける者は殆ど居なかった。

 城門前に陣取ったエルドリア王国騎士団はほぼ壊滅状態となり、残された兵士はもう両手の指で数えられる程になっていた。


「きゃん、きゃん、五月蝿せえぞっ! てめえ、司令官だろ? もう少しドンと構えろや!」


 ザンバルドが大鎌片手に呆れ気味にヒューマン言語でそう告げた。


「き、貴様ら……魔族だな? こ、こんな真似してただで済むと思うなよ! 今のウェルガリアは全種族で停戦協定が結ばれているのだ! こんな暴挙に出れば、エルフ族だけでなく他の種族も黙ってないぞ!」


「はい、はい、都合の良い時だけ他種族を持ち出すなよ? そんな後先考えずに行動するから、安易に知性の実(グノシア・フルーツ)を犬なんかに与えてしまうんだよ。 んで復讐されるという落ちつき。 おい、バルデロン! お前の出番だぜ!」


「なっ!? ば、バルデロンだとっ!?」


「お久しぶりですね、騎士団長殿」


 漆黒のフーデットローブのフードを右手で後ろに払って、犬の顔を露わにして、低い声でそう切り出すバルデロン。


「き、貴様っ!? い、生きていたのかっ!?」


 目を見開いて驚く騎士団長ヴェルゴット。

 

「ええ、貴方達エルフに見捨てられた後に魔族に拾われたのです。 不思議な縁もあるものです。でも私は満足していますよ。 何故なら――」


 そこで一端言葉を切り、その双眸で眼前の男を睨むバルデロン。


「こうして貴方方、エルフに復讐する機会を得られましたからな!」


 語気を強め、その双眸に怒りをたぎらせるバルデロン。


「き、貴様っ!! よりにもよって魔族の軍門に下るとは!! な、なんて恥知らずな真似をするんだ! 貴様には誇りはないのか!」


「誇り? そんな大層な物は持ってはおりませぬ。 何せ私は犬ですからね。 それに私を切り捨てた貴方達にどうこう言われる筋合いはありませんよ!」


 冷淡な声で正論を返すバルデロン。


「ぐぐっ……。 犬風情が私に説教するな!」


「ほら、それが貴方の本音ですよ? これ以上の問答は無用です。 ではさようなら、騎士団長殿。 我は汝、汝は我。 我が名はバルデロン。 母なる大地ウェルガリアよ。 我に力を与えたまえっ! 『フレミング・ブラスター』ッ!」 


「ま、待てえええっ……うわああああああぁっ!!」


 至近距離から強烈な魔法を受けて、絶叫するヴェルゴット。

 爆風によって吹き飛んだヴェルゴットは近くの城壁に背中からぶつかるなり、しばらく身体を痙攣させてから、動かなくなった。


「くたばったみてえだな」


「ええ、ザンバルド将軍。 全ては貴方のおかげです」


「よせやい、俺はきっかけを作ったに過ぎねえよ。 それよりまだ終わってないぞ? 後は国王を締め上げて、お前の妻や子供の居所を吐かせないとな」


「ええ、急ぎましょう」


「ああ、よしっ! 全軍、城内に突入だあっ!!

 国王や王族は当然だが、誰一人として逃がすなよ!」


「おおおっ!!」


 

 そう怒号を上げながら、城内に突入する魔王軍。

 既に勝敗は決した。 

 だが魔王軍は絶対に手心を加えたりなどしない。

 彼等は破壊衝動の赴くまま、戦勝者の権利を行使するのであった。

 血塗られたうたげは、終焉を迎えようとしていた。


次回の更新は2019年11月23日(土)の予定です。

 


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― 新着の感想 ―
[良い点] むむむ……バルデロンギさんは復讐に走ってしまったのですね。 なんとも悲しいことです。 でも家族を救い出したいバルデロンさんの意向を汲んでくれるザンバルド将軍は魔族にしてはいい人っぽい。 こ…
[気になる点] バルデロンはこういうポジションに落ち着いてしまったか。 根が悪人では無かっただけに、先行きが心配です・・・。
[良い点] ついに魔族側としてバルデロン参戦……(;´・ω・) 彼の今後がどうなってしまうのか(。´・ω・)? 展開的に魔族の一部やバルデロンも仲間にならないかなぁ(*´ω`*)
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