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opening

前作『我らは過去を食らう(モノ)』の世界観、設定、過去をそのまま利用しています。前作を読まなくてもお楽しみいただけると思いますが、前作を読んでいただくとより一層お楽しみいただけると思います。


『希望実行』の日から、約80年が経とうとしていた。


希望実行とは、簡単に言えば『過去を食らう猫』という種族の三人の人物が、お互いかつて起きた、悲惨でかつ重大な過去のトラウマから、自らの手で解放された出来事だ。


その希望溢れる行動が「全ての傷を負った希少種猫の支えとなる」と評価され、いつしか伝説となっていった。


カイヤ=エスポワール、エイヴァ=ソワール、そして…、ミヴェル=ソワール。


我らはその後も様々な功績を遺した。


残酷な状況から解放され、この『希少種猫保護施設』に保護された希少種猫達は、この3人の功績に、さぞ『希望』を貰ったことだろう。




そして…希望溢れた平和な世界は続いていく…










と、約80年前までは、思っていたのだ。











我らは過去を食らう(モノ)2〜opening〜


















今日もいつも通り、希少種猫保護施設α基地は忙しく動く。


希少種猫保護施設

そこは、何らかの能力を持った(もの)を保護し、生涯安心を保証する施設だ。


世界中に点在する施設の中の一つ、α基地は、世界中の希少種猫保護施設の中でも、トップの保護率と優秀な保護員が揃っている。


そのα基地を統治する希少種猫保護施設α基地長、クロヤ=ノワールは未だ健在だ。


今日も保護施設内の一番奥の基地長室で、資料とにらめっこしている。



「よお、クロヤ、相変わらず部屋が汚ねーなぁ」


だるそうな口調でドアから入ってきたのは茶髪の少年…『希望実行』を成功させた人物、カイヤ=エスポワールだ。数年前に一般保護員からα基地の保護員長に昇格した。人工型過去を食らう猫であった。


そして人工型永年猫でもあるためか、数年前から全く背が伸びていない。三十路に到達するというのに、外見は12歳ほどの少年のままだ。


「余計なお世話だぞ、エスポワール。で、何の用なのだ」


「ミヴェルが言ってた実験が成功したらしいぜ。クロヤも来いよ」


カイヤの言葉に「やっとか…」と呟き重い腰を上げる。ふと机に立てかけてあった写真を見ると、クロヤと嫁を中心に、笑い合う希少種猫保護施設の保護員の姿が写っていた。


ふっと微笑み、イスにかけてあったコートを羽織り、外へ出ていった。


廊下を歩いている時、カイヤが口を開いてこう言った。


「そーいや、もうすぐなんだっけ?お前の子供」


数年前、クロヤは希少種猫保護施設β基地長のエリス=スーリールと結婚した。そしてもうすぐ二人の間に新しい命が芽生えるのだ。


「ああ、嬉しい事だ。……楽しみだな」


クロヤの口角が無意識に上がるのを見て、カイヤはニヤリと笑った。



クモの巣状になっている保護施設内の真ん中に位置するホールにある噴水の前で、呼び出した本人が弟とともに待っていた。


兄の方がミヴェル=ソワール、元はβ基地の保護員だったが、数年前に研究員に移動した。短髪の綺麗に切り揃えられている黒髪が、意外に似合っている。


弟の方がエイヴァ=ソワール、またの名をシュマンと言う。数年前から一般保護員から基地長援護班に昇格した。長い黒髪に、片目を髪で隠している。


二人共、血族型両性、突発型過去を食らう猫である。そして『希望実行』の成功者でもある。


「やっと成功したよ。これを渡そう」


ミヴェルがそう言い、カイヤとシュマンに何かを手渡した。


「なんだこりゃ、宝石か?」


「ジェムだよ。そこに『人工型能力』を通じ込めることが出来た」


カイヤには琥珀色のジェム、シュマンには紅色のジェムが渡された。ミヴェルの掌には翡翠色のジェムが握られている。



ミヴェルが行っていた実験、それは人工型希少種猫の能力を別のモノに封じ込めるというものだった。


三人の過去の一部、カイヤの父親により実験台にされ、『人工型』の希少種猫の能力を与えられた。その当時は『人工型』の製造が禁止されていた。そのため制御が効きにくく暴走することも多い。なのでミヴェルは一旦別のモノに能力を移す考えに至ったのだ。


カイヤは『過去を食らう猫』、シュマンは『火猫』、ミヴェルは『風猫』と『水猫』の力が、それぞれ封じ込められている。


「ヴェリアットとルーヴが協力してくれたおかげで思ったより早く完成してね、良かったよ、ちゃんと完成して」


ミヴェルがホットした様子で話す。掌の上で光り輝いているジェムを見て、カイヤは目を輝かせた。


「ほんと、すげぇな。ミヴェルもそうだし、そのヴェリアットとルーヴとか言う研究員も」


「ほんと最高の仲間だよ。二人共優秀だしね」


弟子自慢を始めるミヴェルに若干呆れるカイヤ。話を振ったのがいけなかったか。


「ミヴェルさん、これ、再び使用する時はどうするんですか?後、他の人も使えたりするのですか?」


シュマンがジェムを見つめながらミヴェルに質問する。確かに聞きたかった質問だ。


「その力を強く願えばジェムが割れて能力が使えるようになるよ。後、能力は所有者しか使えないようになってる。他人に継承すれば他人が使えるようになる」


「なるほど……ちゃんと作られてるんですね」


納得するシュマンとカイヤ。


その時、三人の様子をじっと見聞きしていたクロヤがふと口を開いた。


「ミヴェル、お主に頼みたいことがあるのだが」


はてなマークを浮かべるミヴェルに、クロヤは一つ深呼吸をして話を続けた。


「この実験が成功したことで確信が持てた。お主に『人工型希少種猫』の能力の管理を、任せても良いか?」


クロヤの発言に、一瞬世界が止まる。そして状況をやっと理解したミヴェルが、目を見開いた。


「……『人工型希少種猫』の生成を、本格的に認めるということですか……!?」


ミヴェルの言葉にカイヤとシュマンも気づく。驚く三人に、やっぱりかというようにクロヤがフッと笑う。


「そうだ。管理者はミヴェルだ。但し、希望者にはある一定の条件を設ける。どうだ?引き受けてくれるか?」


しばらく黙った後、ミヴェルは顔をまっすぐクロヤに向けて、元気よく返事した。もちろん、返事はイエスだ。


「これで、希少種猫保護施設の更なる発展に繋げられたらいいですね」


「そうだな、親父ができなかったことをミヴェルがやるんだ。ちゃんとやれよ?」


「わかった…!」


こうして希少種猫の種類に、新たに『人工型』が付け加えられた。





そしてこの決断が、その先の結末に大きく関係していく。














そしてそこから数日後


約80年に渡る、悲劇が始まるーー











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