魔法の手帳とコンティニュー
未だに信じられない。
ここが、3年前?
最初は母さんが冗談を言ってるとか、だいぶリアルな夢だと思ったのだが。
自室を見回すと、中学3年間で買った本がなかったり、スマートフォンや壁に掛けてあるカレンダーを見ても、2014年___3月25日。
そもそも俺は車と衝突して大怪我を負っていたはずで、その痕がないのはどう考えてもおかしい。
取り敢えず冗談ではないらしい。
それに夢だとしても、3年前の自室などをここまで完璧に再現できるのだろうか?
むしろ、俺が過ごした中学3年間の記憶。それ自体が長い夢だったのでは____?
そう思いながら自分の勉強机の中を漁り、状況を把握できるものがないか探す。
もちろん引き出しの中も3年前のままで、どんどん現実を突きつけられるような気持ちになる。
もういっそのこと俺が事故に遭ったはずの場所に痕跡が残っているか確かめに行こうか、と思い、一番下の引き出しを閉めようとすると。
「ん?あれ、閉まらない?」
何かが引き出しの奥へ落下して詰まっているらしい。手を伸ばし、取ってみる。
「____!?」
それを見た瞬間、手から落としそうになった。
なぜならこれは____俺が中学入学時に入学祝いとして貰った手帳であり、春休みの初め頃である3月25日にはここに存在していなかったはずだからだ。
俺はこの手帳を気に入っており、二年生のころまで一週間に1、2回日記をつけていた。三年生になってからは、ほとんど忘れてしまっていたが。
恐る恐る表紙を開く。震える手でページをめくっていくと、中学入学日から、他愛もないことや学校生活について書かれている。
やはり、あの3年間は夢ではなかった。
そして____今この瞬間も、夢ではない。
なぜこうなったのかはわからない。
なぜこの手帳だけが残されていたのかもわからない。
けれど、一つ言えるのは、俺はまたやり直すことができるのだ。
1周目は地獄だった学校生活を。
今度こそ、完璧に!