対人類制圧胸型決戦兵器『OPPAI』、始動せよ!!
俺はしがない一人の高校二年生だ。いつものようにベッドから起き、いつものように朝食をとり、いつものようにテレビを見ていた。
すると--この世界に、新種の微生物が発見されたと報じられている。
その小さな微生物は、女性の胸の奥深くにのみ存在を確認された特異種だった。
名を「ボニュー」。
女性の胸の奥深くから分泌される微量の母乳を栄養源として生存、繁殖をするその微生物が今注目を浴びているらしい。
つい数年前に見つかったボニューの解析は進んでいた。つい今朝方には朝の占いニュースを返上して難しい顔をした教授たちが記者会見に臨んでいる。
その微生物、ボニューが身体から分泌する成分についての緊急発表らしい。
「――これは、人類における偉大なる一歩です」
独り暮らしをしている俺――高城哲也の眼前のテレビでは日本のトップ大学の一つである京野大学名誉教授が真面目な顔をしてモニターに映し出された女性の胸の奥を長い棒で突っついた。
「数年前、突如として発見されたボニューは、かのアトランティス大陸で産出されたというオリハルコン鉱石を体内精製できるということが分かったのです」
教授がモニター内の女性の胸を突っつくと、その映像は拡大される。
「オリハルコンとは、銅と亜鉛の合金ともされる真鍮とも呼ばれる成分。五円玉が近いでしょう……。長らく、その金属は『幻の金属』ともされてきたのです」
教授の発言に、記者たちは一斉にフラッシュを焚いた。
その中の一人の記者が挙手をし、立ち上がってその教授たちに質問を投げかける。
「では、何故その……幻の金属ともされたオリハルコン鉱石が、女性の体内にて合成されるのですか?」
今日、英単語テストあったなーなどとぼーっとしたままの頭を揺り動かして汚い部屋をがさがさと捜索し始める。
そんな中で、テレビの前の教授はやはり真面目な顔をして、「恐らく――」と前置きをした。
「乳頭刺激により、下垂体後葉からオキシトシンというホルモンが分泌されます。オキシトシン分泌には乳腺の筋上皮細胞を収縮して母乳を排出する効果。主に妊娠後半の妊婦はプロゲステロン、エストロゲンや卵胞刺激ホルモン、黄体形成ホルモン、プロラクチンなど様々な要素を排除しても寄生生物「ボニュー」は的確にそれらを避け、なおかつ血中の亜鉛などを――」
……専門用語ばかり話してると何にも知らない俺たちには本当に眠くなる話なんだぜ?
要するに、ボニュー赤ちゃんが欲しがる成分は避けてて、自分が欲しい成分だけを摂取してたってことか?
最終的に、説明し終えたのであろう教授は「ゴホン」とわざと大きな咳払いをした。
「果ては、このボニューを利用して宇宙開発の礎ともできる可能性があります。惑星間移動など、従来のエンジンでは不可能とされたことが、夢ではなくなるの――」
歯磨きを終えた俺は、難解単語を羅列する教授のハゲ頭を一瞥してテレビを切った。
結局、そんな微生物が発見されようがされまいが、俺たち庶民には何ら関係のないことなのだ。
「ふぅ」と小さなため息をついて俺が立ち上がった――その瞬間だった。
ドゴォォォォォッ!!
「――な!?」
一瞬の轟音と共に、ふと後ろを振り返ってみれば借家の三階建てアパートの半分が消し飛んでいた。
「……な、何じゃこりゃぁ!?」
俺が思わず声を上げると、半壊し、瓦礫の山と化した四階の端がガラガラと音を立てた。
木屑が散る中でそこから姿を現したのは――一人の少女だった。
「……た、高城哲也ね!」
「……な、アンタ、誰だよ!」
俺の前に颯爽と現れたそいつは、黒髪のロングストレートだった。白衣を木屑で汚したそいつは、髪の毛についた埃を一切払わずに銀色のアタッシュケースを俺の前に差し出した。
な、何なんだ!?
「――詳しく話している暇はないわ! あなたをずっと探してたの! 今すぐこれを装着しないと、地球が滅びるの!」
少女は、傷ついた身体を引きずって俺の前に置いた銀色のアタッシュケースを開いた。
「ちょ、何なんですか!? なにが起こってるんですか!?」
俺の問いに、少女は「チッ」と舌打ちをした。
なんで舌打ちされたんだ俺。
「私の名前は榛原花梨! 宇宙研究機構――AXAの特派研究員よ!」
ガサゴソとアタッシュケースの中身を取り出しながら少女――榛原は続ける。
「この機密を他国に漏らすならば、ここであなたに使ってもらった方が……何万倍もマシよ……ッ!」
「い、いやいやいや!? 話が見えねえし、その青いブラジャーを俺が使うとか何の冗談だよ!」
「そんな悠長なもんじゃないわ! これはAXAが二千三百五十億をかけて開発した国家トップシークレット装備なの!」
「……そのブラジャーが!?」
「対人類制圧胸型決戦兵器、オリハルコン寄生生物粒子自動イオン――通称『OPPAI』よ!」
「お、おっぱい……!?」
「くっ……! 早くしないと、早く……装着しなさい!」
「は!? いや、だから――」
「地球がこのままなくなってもいいの!?」
榛原の怒号が半壊したアパートに飛び交った!
よく見てみれば、遠方からこちらに向かって全速力で飛来してくる三人組がいた!
「……ぐっ! っそぉぉぉぉ!!」
「上半身を脱ぎ捨て、半裸になりなさい! そして、私の後に続いて詠唱して!」
意味が分からないが、こちらに向かってきている三人組は確かに危険だ!
俺はすぐさま、上半身のカッターシャツを脱ぎ捨てた。
「唱えたら、勝手にOPPAIが装着主に呼応してくれる! 叫びなさい――!」
「……よ、よく分かんねぇけど、分かった!」
俺は、榛原と名乗る少女に続いて天高く唱えた。
えぇい、ままよッ!!
『対人類制圧胸型兵器『OPPAI』――始動ぉぉぉぉぉぉッ!!!』
――その、瞬間だった。
『バストサイズ 極小、 張り 良好、 乳首色 良好、胸毛 無、ボニュー量 極大、「OPPAI」――装着完了』
ビビ……ッ! ビビビッ……!
高速な電子音と共に俺の胸に装着されたそのOPPAIは蒼い光沢を醸し出していた。
触ってみると、装着具自体は金属よりも固い。そして俺のピンク色の乳首だけが露出すように外気に充てられている。
コンピューターで制御されているのだろうか、加熱と冷却をとめどなく繰り返すそれは、いささか気持ちがよかった。
「Oh! 日本にもオパーイを装着けられる者がいたトハ! 想定外ネー!」
先ほどよりも視界がはっきりと見える。
嘘だろ……!? 視力まで上がっているのか!?
「高城哲也! 来るぞ、避けろッ!!」
迫り来る二人組の内、金髪巨乳の一人が胸を思いっきり前面に押し出した!
こちらも、見たところ俺と似たような装備を付けている!
にやり、と笑みが見えた。
そして――。
「食らうがいいネー! 『OPPAI焼夷弾』ッ!」
おおよそ二百メートル前方から、突然金髪巨乳美少女のおっぱいが光り輝いた!
「伏せろ、高城哲也ッ!!」
瞬間、怒号のような音と共に四回のアパートに直撃する白濁色の爆弾が降りかかる!
「な、何なんだこれ!?」
俺は爆弾の衝撃に備えながらも、眼前で同じく伏せる榛原の胸はとても小さかった。
「彼女たちはB国宇宙開発機構――ASAだ。AXAが威信を懸けて作り出したOPPAIを狙ってるんだ……!」
「こ、このOPPAIはどんな効果があるんだよ!?」
「従来、女性にしかないと思われていた未知の寄生生物『ボニュー』が男性にも偶発的に現れることが判明したんだ! そのボニューの内在的存在を補助し、男性でもボニュー産出。もともとOPPAIの主成分はオリハルコン鉱石だ」
「……ここでボニューが出てくるのか……」
「ともかく、今は哲也の意思でボニューを活性化させることが出来る。君にも撃てるんだ! 彼女のような立派な――OPPAI砲を!」
「OPPAI砲!?」
「君の中のボニューを活性化させる! OPPAIの語源の元にもあるイオンはイオンロケットのことだ。ボニューが推進剤の代替となる――その推進力は馬鹿にはならんぞ……ッ! もう一撃、来るぞ!」
ふと、眼前を見てみれば金髪巨乳美少女がさっきよりも近くに見える!
その横には褐色爆乳女の子が胸を張りだしている!
「行きますッ! 貧乳でも、ボニュー産出量ナンバーワンの私を舐めないでくださいッ! OPPAIライフルッ!」
チュインッ!!
俺の頬を掠めるのは白濁色のスナイパーライフル弾!
「……くっそぉ!!」
俺は榛原を腋に抱えて一気にアパートを飛び降りた。
妙な浮遊感が身体を襲う中で、榛原は俺に言葉を投げかけた!
「OPPAIは空を飛べるんだ! お前の言語に呼応して、OPPAIは動く! 上手く使いこなしてくれ!」
「んなこと言われてできるか! っつーかこのままだと地面に落ちるィィィィィィ!?」
「チッ……。貸せ!」
瞬間、榛原は俺の胸を大きく揉みほぐしやがった!
「ぁ……っふぅん……!」
「翔べ――『OPPAI噴射』ッ!」
ゴオオオオオオオッ!!
直後、俺の両の乳首から放たれたのは黄金色のビームだった!
地面を激しく穿ちながら、俺と榛原は宙に浮かんだ! 落下の速度と砲撃の噴射で威力を相殺したのか……!?
タンッと地面に軽やかに着地した俺。
その様子を見て、宙に浮いていた二人組が「へぇ」と笑みを浮かべた。
「……あとは、お前次第だ……。任せ……た」
力を無くし、白濁色の液体に沈んだ榛原だったが、俺にはもう何が何やら分からないし、俺が狙われていることだけは十分に理解できたんだ!
右手に飛び散ったビーム後の液体をぺろりと舐めると、少し甘ったるい味がした。
なるほど……ボニューってのはやっぱり母乳が元なのか。
このOPPAIは自身の母乳を武器に戦うのか!
というか俺の乳首から発射された液体ってやっぱ母乳だったのか!?
「私が奴を片付けよますッ!」
そう言って、宙に向けて爆乳おっぱいを向けた。肌は褐色、スタイル抜群、おっぱいはもはや人類の宝ともいえる大きさだ! その褐色おっぱいピンク乳首から放たれる何かの攻撃にその装着具も、一人の行動に呼応してかちゃり、かちゃりと形状を変化させた。
そう、それはまるで――
「この街諸共死ぬがよいですッ! 『OPPAIミサイル弐式氷結弾』!!」
「……な、何だ……この量は……!?」
大空を埋め尽くすかのように現れた大量の母乳が一気に固まった!
「――死んでください。日本のOPPAI戦士さん……」
もう、何が何だか分からない。けど、あれを喰らえば――俺はおろか、この街も。
そして、ここで俺の母乳の湖に寝そべる榛原をも見捨ててしまうのかもしれない。
「……なぁ、何でお前は俺にこんなもの渡したんだよ……」
こんなに傷だらけになって、こんな恐ろしい奴等に狙われて、ここまで来たちっちゃなおっぱいを持つ一人の少女を。
こんなところで――。
「死ねぇぇぇぇぇッ!!!!」
褐色少女の巨大おっぱいから放たれた母乳氷結弾!
俺は――空を見上げ、無い胸を思いっきり少女に宛がった。
「――死んでたまるかぁぁぁあぁぁぁぁぁぁぁぁあぁッッッ!!!!!」
『――認証 ボニュー産出臨界点突破 発射準備 正常 対人類制圧胸型兵器最終奥義 OPPAI砲発動まで 参 弐 壱――』
『――零』
その瞬間、俺の両胸からは視界を丸ごと白濁色に染めるほどの巨大な砲撃が天へと散っていく。
天を覆い尽すその巨大な砲撃は、金髪巨乳美少女だけが辛うじて避けられたレベルだったようだ。
避けた金髪美少女の胸の装着具もバリバリと青色の電流が走っている。壊れる寸前なのだろうか。
「Oh! キャシー! What!? ジャパンのOPPAI戦士、よくも仲間を消し去ってくれたネ! 許さナイッ!」
宙に浮いていた金髪巨乳美少女が、OPPAIを稼働させて自分の母乳でビームサーベルを培った。
「……あれ……おいおい、動けねえよ……」
だが、俺の身体にもう力は入らなかった。
さっきの攻撃で、全部の力を吐き出してしまったかのようだった。
「……た、高城……哲也……ッ!」
榛原は倒れながらも俺の足を持った。
「悪かった……君を巻き込んでしまって……だが、もう、いい……『OPPAI』を奴に渡してくれ……!」
ぐっと握りしめたその足には、悔恨の念があった。
俺が出した母乳の湖にバシャッと拳を振り下ろした榛原は、悔しそうに空を仰いだ。
「もとより……米国のトップおっぱいを持つ者どもに勝てるはずがなかったんだ……! アメリカの平均バストはD……日本はA……! 哲也にいたっては女性ですらない……!」
……まぁ、そりゃな。
「……はは、笑ってくれ……私のバストサイズはAAだ……所詮、ボニュー産出量も少ない、OPPAIにも見放された出来損ないだ……」
「何をごちゃごちゃと! とっとと死ぬがいいDEATH!」
金髪巨乳美少女が母乳サーベルを引っ提げて上段に振りかぶった。
「……君だけは……民間人の君だけは、これ以上は巻き込めない……」
ガシャリ――。
「――な、何を……!?」
驚く俺に、無機質な機械音が非常にも立ちふさがった。
『OPPAI――活動停止。装着主からの脱衣を確認しました』
「君のOPPAIホックは外させてもらった。ありがとう――そして」
「――すまなかった」
榛原の苦悶に満ちたその表情。共に、OPPAIが音を立てて俺の腰にまで下がってきていた。
「フフン! 諦めは重要ネー」
金髪巨乳美少女が上段から、OPPAIを引き抜くように振り下ろした――その瞬間だった。
「……まだだ」
何故、それが出来るのかなどは一切考えていなかった。
それはただの直感で――新たな人類の一歩でもあった。
「応えろ……俺のパトス!!」
グォンッ!!
「滾れ――俺の生命!!」
ギュインッ!!
瞬間、先ほどまで蒼かったOPPAIが俺の股間に形状を変え、フィットした。
『――対人類制圧棒型決戦兵器CHINKO、始動』
ドクリ、ドクリと俺の局部が脈打つたびに呼応してCHINKOもドクリ、ドクリと鼓動を撃つ。
「ま、まさか……は、ハレンチネー!!」
金髪巨乳美少女の一振りは俺を掠めずに地面に巨大なクレーターを造った。
「さ、高城……哲也……? そ、それは……!」
俺にもよく分かんねぇ! 結局、上半身は裸だったうえ、さっきの変身モーションで下半身も裸だ!
だが、大事な部分だけは元OPPAI――いや、CHINKOのおかげで隠されている。
そんな中で金髪巨乳美少女が呟いた。
「ボニューの新たな寄生先――ボニューはある場所に寄生先を移すと形態を変えるって、聞いたことがあるネー……」
俺や榛原が頭に疑問詞を浮かべていると、少女は小さく呟いた。
「『セーーキ』……それは男が勃起しているときにのみ、そしてボニュー因子が逸物に付着しないと起こらない突然変異……!」
そ、そうか……さっきまで、何やら乳首をOPPAIにいじられ倒していたからな! その反動で、俺のイチモツは大きく勃起していたのか……!
「……よくは分かんねぇ……。でも、さっきから俺は乳首をいじられ倒して限界だったんだ……! なぁ、CHINKOとやら……見せてくれよ……お前の力!」
「……にしし、ここは一旦退散とするネー……ッ!!」
「させるか!」
俺は勃起した逸物を金髪巨乳美少女に向けた。
「か、身体が……身体が……動かナイッ!?」
『認証――高城哲也 CHINKO最終奥義発動まで、五秒前』
「や、止めなサイ……!」
キュイイイイイインッ!!
俺の逸物の先からは青白い光が満ちていく。これが、ボニューがセーーキに突然変異していくって感覚なのかな……!
『伍、肆、参、弐、壱――』
「や、やめ――!」
『最終奥義――BUKKAKE!!!!!』
「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉッ!!!」
瞬間、俺の最高に熱くなったパトスから白濁色の液体が飛び出した。
イオンロケットの推進剤として使われたセーーキが、金髪巨乳美少女に一直線に向かっていった。
「や、止め……らっめぇぇぇぇぇぇぇッ!!!」
○○○
「……ひとまずの刺客はさったな」
役目を終えたOPPAI――いや、CHINKOは役目を終えて鉄くずと化した。
全裸の状態になった俺は、榛原の白濁に染まった白衣を着て恥部を隠している。
「ねぇ、あなた」
「……どうした?」
「あなた――私たちの研究所、AXAに入らない?」
「……は?」
「ボニュー、セーーキ、OPPAI、CHINKO……。私たちだって、知らないことばかりだった。あなたが入れば……史上初めてのCHINKO使用者が私たちの元に入ってきてくれたならば、百人力だと思うの!」
青い空を見上げて、俺は苦笑いを浮かべた。
「……俺はしがない一般の高校生だ。そんなことに力を貸したくはないよ」
俺がそう答えると、彼女は少しさびしそうな表情を浮かべた。
そう、俺がふと横を振り返ると――そこにもう榛原の姿はなかった。
「……あ、英単語の小テストあるじゃねぇか今日!!」
――俺は、しがない一人の高校二年生だ。