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嘘つきの異世界魔王譚  作者: 紅葉 咲
異世界 1日目
9/33

食事は残さず食べるべき?

「食事って大切よね。なにせあたしたち生き物が唯一外から栄養を補給する行為なんだから」


俺の向かい側の席で黄色いスープのようなものを口に運びながら赤い髪の巨乳『アミュル』はつぶやくように話す


俺はいま『食堂しょくどう』と呼ばれている所にいた


魔物達の食堂って聞いたので俺はてっきり人間が解体されていたり、虫が皿に盛られていたり、逆に食べ物が俺を食べるために襲ってきたりするんじゃないのかと考えていたのだがそんなことは無く、普通にお米のようなものや魚料理、野菜や水が並べられているだけだった


それにちゃんとテーブルとイスが有り、そこに様々な姿の奴らが各々食事をしているだけであった


・・・・・なんだかなぁ


もっと凄惨せいさんなものを想像していたものだから、拍子抜ひょうしぬけしてしまったぜ


いや別に俺の予想が外れたことは素直にうれしいんだがな


「ねぇちょっとあんた。あたしの話し聞いてるの?」


食堂の感想を抱いていると、アミュルが木で出来たスプーンを俺に向けながら不満の声を出す


さっきまで口に入れてたもので人を指すなよ気持ち悪い


「あぁ。聞いてる聞いてる。【その殺人事件の犯人はきっとスプーンに毒をぬっていたんだ】」


「あんたは何を聞いたの!?」


「【ん? 美食家密室殺人事件の話しじゃなかったか?】」


「違うわよ!? なにそのちょっと気になる話し!? 私が言っていたのは食事の大切さよ!」


「大声出すなよ恥ずかしい。 もちろん食事の大切さなんてお前に教えて貰うまでもなく分かってるよ」


「へぇ言うじゃない? じゃぁあなたはなんで何も食べてないのかしら?」


そう言ってアミュルは俺を睨む


何でこいつこんなに俺に絡んでくるの? なるほどこいつ俺のファンか


「そんな目で見るなよ。俺は女に長時間睨まれるときょどりだすぞ? ただ単に何を頼もうか迷っていただけだよ」


「迷うのはいいけど早くしてよね。あっちが食べ終わったらすぐに見張りの予定とか計画とか建てなきゃいけないんだから」


そう言いアミュルは少し遠くの席にいる『フルウ』達をみやる


そう。今俺たちチームは2つにわかれて食事をしている


別に喧嘩(けんか)したって訳ではなく、ただ7人全員が同じ所に固まって座れなかっただけだ


思っていたより食堂は混んでるんだな・・・


因みに俺と一緒に食事をしているのはこのずっと喋り続けている『アミュル』と黙々と野菜らしきものを食べている『スズネ』に、俺の隣で緊張した顔で食事する『サチュ』の3人だ


やったぜハーレムだ


「分かってるよ。・・・そうだな。お前のオススメを教えてくれよ?」


あぁクソが。やっぱり何も食べないでいるのはおかしいよな


実は俺はこの『魔物の食堂』で食事はしたくなかった


何故かと言うと魔物が食べるものはもしかしたら人間にとっては有害なものかもしれないと考えたからだ


さすがに考え過ぎだろと言われるかもしれないがこっちは命がかかっているんだ。慎重(しんちょう)にも考え過ぎにもなるさ


だがもし俺がこのまま食事をしないとなれば、怪しまれはさすがにしないと思うが相手アミュル不快感ふかいかんを与えてしまう可能性がある


今は少しでも仲が良い奴らを作っておくべきだ。仲良くなって信頼関係しんらいかんけいを築けていたら、いざという時に騙すのが楽になる。そう考えるならばこの『食事』という機会は逃すべきではないな


そこで俺はせめて人間が食べても害がないようなものを食べたいが、残念ながらここにある食事は俺にとって未知みち


ならば俺が一か八かで料理を選ぶより、このアミュルに選んでもらうのがいいだろう


さぁ俺にこの食堂でのおすすめを教えてくれ!


「私のおすすめ? ならもちろんこれね。『ガボドクのマダラムシの液漬』」


そういってアミュルは先ほどまで食べていた黄色いスープを俺に差し出す


「いやいやまてまて? 今これを君はなんて言った?」


「『ガボドクのマダラムシの液漬』」


「その料理の名前に俺は驚愕(きょうがく)を禁じ得ないのだが!?」


「何よその反応!? これ凄くいいのよ!?」


「何がいいの!? 1つの料理の名称に『どく』と『むしえき』がコラボレーションしてる状況とか俺初めてだぞ!!」


少なくても俺の精神(せいしん)にはまったくよくない!!


「夢のコラボよね」


「悪夢のコラボレーションなんですが!?」


「何あんた? もしかして食べれないのかしら?」


少し泣きそうな俺にアミュルは挑発的(ちょうはつてき)に言う


「いいんですよ? 無理に食べなくて?」


そこに今迄いままで黙っていたサチュが言葉を発した


・・・・・・・・・・・・・・・


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・やってやるよぉ!!!


「はぁ!? 何言ってるんですか食べれるにきまっておろうが!!」


俺は黄色いスープを一気に口に流し込んだ!!


「あっ」


「「あぁ!!?」」


アミュルが間抜けな声を漏らし、他の二人は何故か大きな声を出した


因みに味は・・・


「【中々うまいじゃんか】」


クッソ甘ぇぇぇぇぇっぇえええええ!!!!?


何これ砂糖水や水飴でもまだ謙虚(けんきょ)だぞ!!


なんでこんな甘いのこいつ普通に俺と話しながら食ってたの!? 怖ッ!


しかも感触が少しドロっとしてるのが気持ち悪い!


「【少し甘いが、食えないってわけじゃ】」


魔物っていつもこんなん食ってるの!? 尊敬しちまうぞおい!


そんなこと考えていると甘い液体の中に小さな固体を発見した


嫌な予感はしたが噛み砕かないと飲めないので腹をくくる


そして固体を噛みつぶした瞬間、甘みが一気に苦みに変わる


・・・・・・吐き出さなかった俺は褒められるべきだ


「【・・・・ほほうなるほどなるほど。甘さの中に半端ない苦みを入れているのか。飴と鞭の使い方をこの料理は心得ているな】」


ただ飴と鞭だと順番が違うし、どちらも強すぎる


「え? だ、大丈夫?」


「水・・・・いる・・・・よね・・・・?」


サチュとスズネが椅子から立ち上がり俺の側にかけよる


・・・・・・・サチュは俺が人間なのを知っているから心配するのは分かるが、なぜ何も知らないスズネも俺の心配をするんだ?


「【おいおい。こんなの唯の食事だぜ? 大丈夫って聞くのはおかしいんじゃないのか?】」


はっきり言ってもう泣き崩れたいが、そうしてしまうと『魔物の食事が食べられない』とばれてしまい結果ここにいる奴らに人間ということがばれてしまう・・・


「御馳走様。・・・・・さすがお前のおすすめだ。死ぬほど【うまかったよ】」


ここは生き残るために演技(えんぎ)だ!! なぁに。ただ信じられないくらい不味いだけだ


「ほ、本当!?」


俺が平気な顔で(平気な顔出来てるよな?)うまかったと言うとアミュルが花が咲いたような笑顔で俺に近付く


「えっ? なにどうしたん?」


なんでこいついきなりとびっきりの笑顔なの? 一緒に食事したらもう友達なの?


「・・・・すごい」


「・・・・ありえない」


サチュとスズネも唖然(あぜん)としながら俺を見る


「『うまかったよ』なんていってくれた人は初めてよ!! みんなは『言葉では言い表せないまずさだ』『これが、地獄か』『これはを作った奴は逆に天才だろ。今すぐ兵器を作るべきだ』って言って吐き出すかどこかに走り去るんだから!!」


「そ、そうか?」


・・・・・・・・・・・ん?


「えぇそうよ!! スズネでさえ『これはない!!』って叫ぶほどなんだから」


「あのことは・・・思いだし・・・たく・・・・・なぃ・・・・」


「え? お前叫べるの?」


いやそんなことより・・・・え?


「なのにあなたは『うまい』っていいながら全部残さずに食べてくれた! 例え嘘でもあたしはとても嬉しいわ!! 『私以外このガボドクのマダラムシの液漬を食べれた奴なんて1人もいなかった』のに!!」


・・・・はぁぁぁぁぁっぁぁあああ!?


え!? これ魔物の基本的な、日本人で言うならお米みたいな食べ物じゃないの!?


俺はサチュを見る


『こんなゲテモノを食えるなんてこいつは一体なんなんだ?』といったような表情をしていた


てめぇふざけんなよ!? 


魔物でも食えないものなんだったら先言えやぁ!!!


クソがぁ・・・・。俺のさっきまでの考え全部無駄かよぉ・・・


得たものなんて目の前にいるアミュルの笑顔だけじゃねぇか・・・


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「【おいおい嘘な訳ないだろ】? 俺はここぞと言う時にしか嘘をつかない」


「本当に!? やった!! 初めてあたしと食の合う奴に出会えた!!」


・・・・一度ついた嘘はつき通すのが嘘ついた奴の礼儀ってもんだ


決してアミュルの笑顔が崩れるのを見たくなかったってわけじゃないからな?


「・・・・嘘をつかないなんてよく言うわねぇ」








サチュは俺の発言に静かに呆れていたが、若干笑っているのを俺は見逃さなかった






『ガボドク』

黄色い野菜。栄養価が高く健康食品・美容食品としてこの世界では中々有名だが、アボガドの4倍苦い。

効果

シミやそばかす・肌荒れとニキビ等を防ぎます。


『マダラムシの液漬』

真っ黄色の液体。蜂蜜のような作り方をされている食材。美容食品としてこちらも有名だが蜂蜜の11倍甘い。

効果。

女性ホルモンを整える

肥満にきく

髪の毛の艶と潤いを与える

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